Qtのコントロール - プッシュボタン
概要
QPushButtonは、Qtにおけるプッシュボタンのコントロールである。
QPushButtonは機能が多岐にわたり、カスタマイズ性が高いため、ユーザインターフェイスを設計する上で非常に重要なコントロールである。
- 外観のカスタマイズ
- QPushButtonのスタイルシートを使用して、ボタンの色、フォント、枠線、背景画像等を自由に設定することができる。
setStyleSheet
メソッドを使用して、CSSスタイルシートを適用できる。- アイコンの設定は、
setIcon
メソッドで行う。 - また、アイコンとテキストを併せて表示することも可能である。
- ショートカットキー (アクセラレータ) の設定
setShortcut
メソッドでショートカットキーを設定することができる。- 例:
btn->setShortcut(Qt::CTRL + Qt::Key_P);
- テキストにアンダーラインを付けてショートカットキーを示すことができる。
- 例:
btn->setText("&Print");
- その他の機能
isCheckable
プロパティを有効にする場合、チェックボックス付きのプッシュボタンとなる。isFlat
プロパティを有効にする場合、フラットなプッシュボタンとなる。
setMenu
メソッドを使用して、プッシュボタンにメニューを設定することができる。setDefault
メソッドおよびsetAutoDefault
メソッドを使用して、デフォルトのプッシュボタンを設定することができる。setDown
メソッドを使用して、ボタンを押下された状態に設定することができる。
- シグナルとスロット
clicked
シグナルは、ボタンがクリックされた時に発生する。pressed
シグナルは、ボタンが押下された瞬間に発生する。released
シグナルは、ボタンが離された瞬間に発生する。
- レイアウト
- QPushButtonはQWidgetクラスを継承しているため、レイアウトに簡単に配置することができる。
- 水平・垂直方向の伸縮モードを
setSizePolicy
メソッドで設定することができる。
プッシュボタンの角を丸くする
Qt Designer画面にて、プッシュボタンを配置する。
次に、Qt Designer画面にて、プッシュボタンのスタイルシートを設定する。
プッシュボタンの角を丸くするには、border-radius
プロパティにて、丸みの半径をpxで指定する。
(丸みの半径の値が大きいほど丸く、小さいほど角になる)
/* プッシュボタンの前景色と背景色を指定する */
QPushButton
{
color: rgb(255, 255, 255);
background-color: rgb(0, 0, 0);
}
/* 前景色、背景色、border-rariusを指定する */
QPushButton
{
color: rgb(255, 255, 255);
background-color: rgb(0, 0, 0);
border-radius: 10px;
}
プッシュボタンの背景色をグラデーションにする
QLinearGradient
クラスを使用して、プッシュボタンの左上を(0, 0)
、右下を(1, 1)
として、
始点(x1, y1)
および終点(x2, y2)
を指定すると、始点から終点に向かってグラデーションとなる。
stop
には、0~1の位置(実数)と、その位置における色を指定する。
以下の例では、8個のプッシュボタンをグラデーションにしている。
MainWindow::MainWindow(QWidget *parent) : QMainWindow(parent), ui(new Ui::MainWindow)
{
ui->setupUi(this);
// 左上から右下(白->黒)
ui->pushButton_1->setStyleSheet(QStringLiteral(
"background-color: qlineargradient(x1:0, y1:0, x2:1, y2:1,"
"stop:0 rgb(255, 255, 255), stop:1 rgb(0, 0, 0));"));
// 上から下(白->黒)
ui->pushButton_2->setStyleSheet(QStringLiteral(
"background-color: qlineargradient(x1:0, y1:0, x2:0, y2:1,"
"stop:0 rgb(255, 255, 255), stop:1 rgb(0, 0, 0));"));
// 右上から左下(白->黒)
ui->pushButton_3->setStyleSheet(QStringLiteral(
"background-color: qlineargradient(x1:1, y1:0, x2:0, y2:1,"
"stop:0 rgb(255, 255, 255), stop:1 rgb(0, 0, 0));"));
// 右から左(白->黒)
ui->pushButton_4->setStyleSheet(QStringLiteral(
"background-color: qlineargradient(x1:1, y1:0, x2:0, y2:0,"
"stop:0 rgb(255, 255, 255), stop:1 rgb(0, 0, 0));"));
// 右下から左上(白->黒->白)
ui->pushButton_5->setStyleSheet(QStringLiteral(
"background-color: qlineargradient(x1:1, y1:1, x2:0, y2:0,"
"stop:0 rgb(255, 255, 255), stop:0.5 rgb(0, 0, 0), stop:1 rgb(255, 255, 255));"));
// 下から上(白->黒->白)
ui->pushButton_6->setStyleSheet(QStringLiteral(
"background-color: qlineargradient(x1:0, y1:1, x2:0, y2:0,"
"stop:0 rgb(255, 255, 255), stop:0.5 rgb(0, 0, 0), stop:1 rgb(255, 255, 255));"));
// 左下から右上(白->黒->白)
ui->pushButton_7->setStyleSheet(QStringLiteral(
"background-color: qlineargradient(x1:0, y1:1, x2:1, y2:0,"
"stop:0 rgb(255, 255, 255), stop:0.5 rgb(0, 0, 0), stop:1 rgb(255, 255, 255));"));
// 左から右(白->黒->白)
ui->pushButton_8->setStyleSheet(QStringLiteral(
"background-color: qlineargradient(x1:0, y1:0, x2:1, y2:0,"
"stop:0 rgb(255, 255, 255), stop:0.5 rgb(0, 0, 0), stop:1 rgb(255, 255, 255));"));
}
トグルボタンの作成
まず、Qt Designer画面にて、プッシュボタンを配置して、QPushButton
クラスのcheckable
プロパティにチェックを入力する。
次に、配置したプッシュボタンを右クリックして[スロットへ移動]を選択する。
プッシュボタンのシグナルにおいて、clicked(bool)
またはtoggled(bool)
を選択する選択して、スロット関数を作成する。
プッシュボタンの押下において、clicked(bool)
シグナルもtoggled(bool)
シグナルも同じように呼び出されるが、
ただし、以下のように、ソースコードから操作する場合は、差異がある。
- ui->pushButton->setChecked(true);
toggled(bool)
は呼び出されるが、clicked(bool)
は呼び出されない。- 例えば、親ボタン1と子ボタン1-1、1-2、1-3がある時、
- "親ボタンを押下すると、子ボタンを全て押下状態にする"
- "親ボタンが押下されていない状態で、子ボタンが全て押下されると、親ボタンも押下状態にする"
- ような場合の2で、親ボタンの押下状態だけを変える場合等。
- ui->pushButton->click();
toggled(bool)
もclicked(bool)
も呼び出される。(UI操作でボタンを押下したのと同様)
画像の表示
プッシュボタンの画像
プッシュボタンは、画像とテキストが表示できる。
画像の位置は固定、画像のサイズは指定可能であり、テキストの左側に表示される。
プッシュボタンコントロールのサイズを変更しても、画像のサイズは自動的に変化しない。
画像のサイズを指定しない場合は、原画像のサイズで表示される。
std::unique_ptr<QPushButton> pBtn = std::make_unique<QPushButton>();
pBtn->setIcon(style()->standardIcon(QStyle::SP_ArrowDown));
pBtn->setText(tr("Test"));
pBtn->setIconSize(QSize(32, 32));
pBtn->setFont(QFont("Meiryo", 18));
フレーム画像
背景画像ではなく境界画像を指定する場合、サイズ変更に対応した枠を表示できる。
std::unique_ptr<QPushButton> pBtn = std::make_unique<QPushButton>();
pBtn->setText(tr("Test"));
pBtn->setStyleSheet(
"border-width:27px; padding:10px; color:red;"
"background-image:url(:/images/close-hover.gif); background-color:skyblue;"
"border-image:url(:/images/border.png) 27 repeat;");
下図左は、border.pngファイルである。
黒い箇所が透過の場合、背景色と背景画像が見える。
repeatを指定しない場合は、引き伸ばした画像に変換される。
原画像を9分割して組み合わせることにより、境界線の長さの変化に対応することができる。
下図中央の緑の部分が、border-widthで指定した27pxの境界である。
②④⑥⑧の画像は、タイプにしたがって引き伸ばしたり、タイル状に敷き詰めたりする。
例えば、border-imageの幅を54に変更する時、左上・右上・左下・右下の四隅は、以下のようになる。
上下左右の境界画像は、②④⑥⑧に対応する部分が足りなくなるため、表示されない。
- 左上
- ① + ② + ④ + ⑤
- 右上
- ② + ③ + ⑤ + ⑥
- 左下
- ④ + ⑤ + ⑦ + ⑧
- 右下
- ⑤ + ⑥ + ⑧ + ⑨
border-imageは、最初に画像データを指定する必要がある。その他の項目はどちらを先に記述しても構わない。
下表に、境界画像(border-image)の設定例を示す。
image-widthの指定方法は、CSSのmarginプロパティと同様である。
項目 | 初期値 | 設定例 | 説明 |
---|---|---|---|
画像データ (image-source) |
none | url(:/images/border.png) url(C:/temp/frame.gif) |
リソース画像 画像ファイル |
幅と高さ (image-width) |
1 | 20 2em 5% 3 |
上下左右20px 上2em、左右5%、下3px |
タイプ (image-repeat) |
stretch | round repeat stretch |
縦横ともに均等タイル 横方向はタイル、縦方向は伸縮 |
タイプの種類は、タイル(repeat)、均等タイル(round)、伸縮(stretch)の3種類がある。
例えば、上図②の場合、タイル(repeat)は単純に②を並べるため、途中で画像が切れることがある。
均等タイル(round)は、②を何個表示できるかを計算して、均等になるように②の幅を伸縮する。(端数は四捨五入)
プッシュボタンのフレーム
背景としてフレーム画像を指定する場合、プッシュボタンのサイズ変更に対応できない。
button->setStyleSheet(
"background:skyblue url(:/images/frame.png) no-repeat;");
境界としてフレーム画像を指定することにより、プッシュボタンのサイズ変更に対応することができる。
button->setStyleSheet(
"border-width:4px; background-color:skyblue;"
"border-image:url(:/images/frame.png) 4;");