PCB - ベタ

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概要

PCB設計において、ベタとは基板上に広い面積で形成される銅箔のパターンを指す。

一般的な配線パターンが線状であるのに対して、ベタは面状の導体パターンとなる。
この形状により、電気的な特性やPCBの物理的な性質に大きな影響を与える。

ベタの一般的な用途はグランド (GND) 向けのベタパターンである。
PCBの片面または両面に広いグランド面を形成することにより、回路全体の安定性が向上する。
グランドのインピーダンスを下げる効果があり、特にデジタル回路やノイズの影響を受けやすいアナログ回路で重要となる。

電源供給用のベタパターンにおいて、電源ラインをベタパターンとして設計することにより、電源インピーダンスを低減して安定した電力供給が可能になる。
大電流を必要とする回路や電源の安定性が回路で効果を発揮する。

シールディング効果において、PCB上の特定のエリアをベタパターンで囲むことにより、電磁シールドとして機能して外部からのノイズ侵入や内部からのノイズ放射を抑制できる。
高周波回路や精密なアナログ回路の設計では、シールディング効果が重要となる。

また、ベタパターンには放熱効果もあり、発熱する部品の周辺にベタパターンを配置することにより、熱を効率的に逃がすことができる。
特に、電力デバイスや高発熱部品を使用する回路では、この放熱効果を考慮したベタパターンの設計が必要である。

※注意
熱によるPCBの反りを防ぐため、大きなベタパターンにはスリットを入れることがある。
また、部品の半田付け時の熱ストレスを緩和するため、パッド周辺にはサーマルリリーフと呼ばれる構造を設ける必要がある。

さらに、不要な共振を避けるため、ベタパターンを分割することも重要となる。


ベタ / ベタパターン

ベタ (ベタパターン) とは、プリント基板上に比較的広い面積で形成される導体パターンのことを指す。

※注意
熱による反りを防ぐため、必要に応じてスリットを入れる。
サーマルリリーフ (熱緩和パターン) の設計を行う。
不要な共振を避けるためのパターンを分割する。

シールド効果

電磁ノイズの放射を抑制、および、外部からのノイズを遮断したりする効果がある。
特に、アナログ回路部分を保護できる。

放熱効果

熱を発生する部品の下や周囲にベタパターンを配置することにより、放熱効果を得られる。


電源 (VCC / VDD) 面の形成

電源ベタの目的は、安定した電源供給を実現することである。
電源インピーダンスを低減することにより、電圧降下を抑制して、回路全体の動作安定性を向上させることができる。

特に、大電流を必要とする回路や電源の安定性が重要なデジタル回路において、その効果は顕著となる。

電気的特性、熱的特性、製造性等、多面的な検討が必要となる。

デカップリング効果

電源層とグランド層を近接して配置することにより、分布定数的な特性により面間容量が形成される。
この面間容量は高周波ノイズの抑制に効果的であり、バイパスコンデンサと組み合わせることにより、より広い周波数帯域でのデカップリング効果が得られる。

電源分配の設計

電流密度の考慮が必要となる。
特に、大電流が流れる箇所では、電源ベタの幅や厚みを適切に設計する必要がある。

電流密度が過度に高くなると発熱の原因となり、最悪の場合、配線の断線や劣化を引き起こす可能性がある。

サーマルマネジメント

電源ベタには放熱効果もあり、高発熱部品の周辺では、この効果を積極的に活用することにより、部品の動作温度を適切な範囲に保つことができる。
ただし、過度な放熱効果は基板の反りの原因となるため、適切なバランスが必要となる。

電源分離の設計

アナログ回路とデジタル回路が混在する場合、各電源を適切に分離することにより、ノイズの影響を低減できる。
この時、デカップリングコンデンサの配置やフェライトビーズ等のフィルタ素子の使用を推奨する。

インピーダンス制御

電源ベタと信号線との間隔を適切に設計することにより、信号線の特性インピーダンスを制御できる。
特に高速信号では、この制御が信号品質に大きく影響する。

PDN (Power Distribution Network)

電源ベタの配置において、電源とグランドのインピーダンスを目標値以下に抑えることにより、電源ノイズを抑制して回路の安定動作を実現する。
この時、使用周波数帯域での共振を避けるため、デカップリングコンデンサの選定と配置が必要となる。

電源プレーンの分割設計

異なる電圧を必要とする回路が存在する場合、電源プレーンを適切に分割して、それぞれに必要な電圧を供給する。
この時、プレーン間のクリアランスや相互の干渉についても注意が必要となる。

PCB製造

PCBの製造を考慮した事柄として、電源ベタへのビア、スルーホールの接続設計がある。
サーマルリリーフを適切に設計することにより、半田付け時の熱ストレスを緩和して、製造品質を向上させることができる。


グランド (GND) 面の形成

PCB上の大きな面積をGNDとして使用することにより、低インピーダンスの安定したグランドを確保できる。
ノイズの低減に効果的である。

電気的な特性

電気的な特性において、グランドベタは低インピーダンスの基準電位面を提供する。
これにより高周波特性が改善されて、回路の動作が安定する。

通常、4層基板では内層にグランド層を設けることが多く、この構造により信号層間の相互干渉を抑制できる。
また、電源層と組み合わせることにより、分布定数線路としての特性も得られて、デカップリング効果も期待できる。

EMC (電磁環境両立性)

EMC (電磁環境両立性) の点では、グランドベタはシールド効果により外部からのノイズ侵入を防ぎ、同時に内部からのノイズ放射も抑制する。
特に、高速デジタル回路では、戻り電流パスの確保が重要なため、信号配線の直下にグランドベタを配置することにより、ループ面積を最小化でき放射ノイズを低減できる。

サーマルリリーフ (製造)

製造面で考慮する事柄として、サーマルリリーフの設計が挙げられる。
これは、スルーホールやビアのパッド部分とグランドベタとの接続方法を工夫するものであり、半田付け時の熱ストレスを緩和する。

一般的に、十字形状や車輪形状の接続パターンを用いる。

PCBの反りへの対策

PCB反りへの対策として、グランドベタにスリットを入れることがある。
これは、熱による応力を分散させる効果がある。

ただし、スリットの配置は高周波特性に影響を与える可能性があるため、慎重に設計する必要がある。

ビアスティッチング

ビアスティッチングは複数の層間をビアで接続することにより、グランドのインピーダンスを更に低減して高周波特性を改善することができる。
ビアの配置間隔は使用する周波数に応じて決定する。

混載回路

アナログ回路とデジタル回路が混在する場合、グランドの分離も必要となる。
完全に分離する場合と1点で接続する場合があり、回路の要求に応じて適切な方法を選択する。

ただし、過度な分離はむしろノイズ問題を引き起こす可能性がある。

信号品質

信号品質においては、グランドバウンスの抑制が重要となる。
同時スイッチングノイズによるグランド電位の変動において、グランドベタの設計により軽減することが可能である。

特に、高速デジタル回路では、電源とグランドのインピーダンスを低く保つ必要がある。

インピーダンス制御

グランドベタは特性インピーダンスの制御において重要な役割があり、
マイクロストリップラインやストリップラインの設計では、配線幅とグランドベタまでの距離を設計することにより、望む特性インピーダンスを実現できる。

PCBの機械的強度

PCB全体にベタパターンを施すことにより、基板の剛性が向上して振動や衝撃に対する耐性が向上する。
ただし、これは同時に熱による反りの原因にもなるため、適切なバランスを取る必要がある。