NginX- serverコンテキスト
概要
serverコンテキストは、仮想サーバを定義するための基本的な構成要素である。
このコンテキストは、常にhttpコンテキスト内に配置され、1つのNginXサーバーで複数の仮想ホストを運用することを可能にする。
主要な機能として、特定のIPアドレスやポートでのリクエスト待ち受け、ドメイン名の設定、SSLの設定、静的ファイルの配信設定、プロキシ設定等がある。
serverディレクティブの用途を以下に示す。
- ポート番号の指定 (listen)
- サーバ名の設定 (server_name)
- ドキュメントルートの指定 (root)
- SSL / TLS設定
- ロケーション設定
- リダイレクト設定
また、バーチャルホスティングにおいても、同一サーバ上で異なるドメインのWebサイトを運用することができる。
設定の継承関係について、serverコンテキスト内の設定は、より上位のhttpコンテキストからデフォルト値を継承する。
さらに、serverコンテキスト内のlocationコンテキストは、serverコンテキストの設定を継承する。
これにより、効率的で柔軟な設定管理が可能になる。
セキュリティにおいては、SSL / TLS証明書の設定、アクセス制限、リダイレクトルールの設定等が可能であり、安全なWebサービスの提供に貢献する。
また、エラーページのカスタマイズやログの設定も行うことができる。
パフォーマンスの最適化では、キャッシュ設定、バッファサイズの調整、接続数の制限等を設定することができるため、リソース管理が可能である。
listenディレクティブ
IPアドレスとポート番号を指定する。
複数指定することもできる。
IPv4 / IPv6、ポート、UNIXドメインソケットをサポートしている。
server {
listen 80;
listen 443 ssl;
listen [::]:80;
# ...略
}
server_nameディレクティブ
サーバ名 (バーチャルホストの識別も可) を指定する。
完全修飾ドメイン名、ワイルドカード、正規表現をサポートしている。
server {
# ...略
server_name example.com;
# 正規表現で記述する場合
# 例: server_name *.example.com ~^www\d+\.example\.com$;
}
rootディレクティブ
ドキュメントルートを指定する。
これは、全てのリクエストに対する相対パスの基準点となる。
server {
# ...略
root /var/www/html;
}
indexディレクティブ
デフォルトページを指定する。
指定順に検索され、最初に見つかったファイルが使用される。
これは、locationコンテキストでも設定することができる。
server {
# ...略
index index.php index.html;
}
アクセス制御
許可
特定のIPアドレス / 範囲からのアクセスを許可する。
allow 10.0.0.0/8;
拒否
特定のIPアドレス / 範囲からのアクセスを禁止する。
deny 192.168.1.0/24;
ファイルアップロード等の制限
クライアントリクエストボディの最大サイズを指定する。
client_max_body_size 10M; # 最大10[MB]に制限する場合
ログ設定
サーバ固有のログフォーマットを指定する。
serverコンテキストで設定することにより、特定の仮想ホストにのみ異なるログフォーマットを使用することができる。
# 以下の例では、custom_formatという名前のフォーマットを定義している
# 一般的なアクセスログの形式を定義しており、IPアドレス、時刻、リクエスト内容、ステータスコード、ユーザエージェント等の情報を記録している
server {
log_format custom_format '$remote_addr - [$time_local] '
'"$request" $status $body_bytes_sent '
'"$http_referer" "$http_user_agent"';
access_log /var/log/nginx/custom_access.log custom_format;
}
これは、httpコンテキストでも定義することが可能である。
その場合は、NginX全体の設定となる。(serverコンテキストで上書き可能)
http {
log_format main '$remote_addr - $remote_user [$time_local] "$request" '
'$status $body_bytes_sent "$http_referer" '
'"$http_user_agent"';
access_log /var/log/nginx/access.log main;
}
アクセスログの保存先とフォーマットの指定
access_log /var/log/nginx/access.log main;
エラーログの保存先とログレベルの指定
error_log /var/log/nginx/error.log warn;
タイムアウト関連
client_body_timeoutディレクティブ
リクエストボディ受信のタイムアウトを指定する。
これは、クライアントからのデータ受信間隔を制限する。
client_body_timeout 60s;
client_header_timeoutディレクティブ
リクエストヘッダ受信のタイムアウトを指定する。
これは、ヘッダ受信の制限時間のことである。
client_header_timeout 60s;
keepalive_timeoutディレクティブ
Keep-Alive接続のタイムアウトを指定する。
これは、持続的接続の維持時間のことである。
keepalive_timeout 75s;
send_timeoutディレクティブ
レスポンス送信のタイムアウトを指定する。
これは、クライアントへの送信処理のタイムアウトのことである。
send_timeout 60s;
バッファ設定
client_body_buffer_sizeディレクティブ
リクエストボディのバッファサイズを指定する。
client_body_buffer_size 128k;
client_header_buffer_sizeディレクティブ
リクエストヘッダのバッファサイズを指定する。
client_header_buffer_size 1k;
large_client_header_buffersディレクティブ
大きなヘッダ用のバッファを指定する。
large_client_header_buffers 4 8k;
SSL / TLS設定ディレクティブ
ssl_certificateディレクティブ
SSL証明書ファイルのパスを指定する。
ssl_certificate /path/cert.pem;
ssl_certificate_keyディレクティブ
秘密鍵ファイルのパスを指定する。
ssl_certificate_key /path/key.pem;
ssl_protocolsディレクティブ
使用するSSL / TLSプロトコルを指定する。
ssl_protocols TLSv1.2 TLSv1.3;
ssl_ciphersディレクティブ
暗号化スイートを指定する。
ssl_ciphers HIGH:!aNULL:!MD5;
ssl_session_timeoutディレクティブ
SSLセッションのタイムアウトを指定する。
ssl_session_timeout 1d;
ssl_session_cacheディレクティブ
SSLセッションキャッシュを設定する。
ssl_session_cache shared:SSL:50m;