概論
クーロンの法則とは、荷電粒子の間に働く力のことで、その力が電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例する法則である。
正と負の電荷があり、同じ種類の電荷であればお互いに引き離そうとし、異なる種類の電荷の場合は引き付け合う力が働く。
この法則をクーロンの法則と呼び、2つの帯電体に働く力のことをクーロン力と呼ぶ。
図. それぞれの影響を及ぼし合う電荷((a)、(b)は十分離れており、影響を及ぼし合わないとする)
クーロンの法則
クーロンの法則において、上図を用いて説明する。
上図のように、帯電体Q1、Q2が置かれている場合を考える。
- Q1とQ2が異なる符号の電荷の場合、互いの物体は引かれあう。(吸引力)
- Q1とQ2が同じ符号の場合、互いの物体は離れる向きにクーロン力が掛かる。(斥力)
この時、注意することは、2つの帯電体に掛かるクーロン力は等しい。
つまり、帯電体はもう1つの帯電体から力を受けるだけでなく、力を与えているという作用・反作用の法則がクーロンの法則の中でも成り立つ。
この力は2つの帯電体の距離rが小さければより強く、距離rが大きくなると弱くなる。
例えば、遠く引き離された帯電体は、お互いにほとんどクーロン力を受けない。
次式は、クーロン力の式である。
ここでは、クーロン力をF、帯電体のそれぞれの電荷をQ1、Q2、2つの帯電体の距離をrとしている。
この時、は比例係数、は真空の誘電率である。
クーロン力と似た力として万有引力が有名であるが、万有引力は引き合う力だけで、クーロン力のように引き離す力(斥力)は存在しない。
このように、クーロン力の場合は、電荷の正負に注意しながら力が加わる方向を考えなければいけない。
クーロンの法則のベクトル表記
クーロン力は向きと大きさを持つので、ベクトル表記をすることができる。
クーロンの法則で示されたものは、次式(1)で表される。rは、2つの電荷間の距離である。
式(1)で示されるクーロン力は大きさだけを示しているので、向きを与えればよい。
下図に、クーロン力はどの方向に掛かるかを示す。
2つの帯電体がある場合、2つの帯電体を結んだ直線上にクーロン力が掛かる。
2つの帯電体の電荷の符号が同じ場合は引き離す向きに、符号が異なる場合は引き合う向きにクーロン力が掛かる。
つまり、電荷Q1とQ2に帯電した電荷を置き、そこに掛かる力を示すと下図のようになる。
図. 帯電した物体の位置ベクトルとクーロン力のベクトル
上図において、黒い矢印のクーロン力をベクトルで表記する。
まず、上図のように、電荷Q1とQ2の位置ベクトルr1、r2から、2つの電荷を結んだ直線と同じ向きの(Q2からQ1へ向かう)ベクトルr12を求める。
このr12を電荷Q1に掛かるクーロン力F1に乗算すれば、F1に向きを与えることができる。
しかし、r12は大きさを持っているため、そのまま乗算するとクーロン力の大きさが変わってしまう。
そこで、r12と同じ向きかつ大きさ1の単位ベクトルを乗算することで、電荷Q1の大きさを変えることなく、向きだけを与えることができる。
ベクトルを単位ベクトルにするには、そのベクトルのノルムでベクトルを除算する。
つまり、r12の単位ベクトルは次式(3)となる。
上式(3)を式(1)に乗算することで、クーロン力をベクトル表記できる。
また、電荷Q2に掛かるクーロン力は、単位ベクトルr12の向きを反対にすればよい。
式(2)のベクトルr1とr2の減算を入れ替えればよい。
したがって、電荷Q2に掛かるクーロン力F2は、次式でと表される。
最後に、電荷Q1の座標を(x1, y1, z1)、電荷Q2の座標を(x2, y2, z2)とする時、クーロン力のx方向、y方向、z方向の成分は以下のようになる。
まず、式(4)を変形して、次式(6)とする。
この時、各方向成分は次式(7)〜(9)となる。
したがって、2つの電荷の座標と電荷量がわかれば、その電荷に掛かるクーロン力の各方向成分は分かる。
3つ以上の電荷がある場合のクーロン力
下図のように、3つの帯電体が置かれている場合を考える。
Q1は、他の2つのQ2、Q3からクーロン力を受ける。
Q1が、Q2から受ける力をF12、Q3から受ける力をF13とする。(Q1、Q2、Q3の電荷は全て同符号であるとする)
図. 3つの帯電体
この時、Q1が受けるクーロン力F1は、次式のようなベクトルの加算で表す。
このように個々の帯電体から受ける力を足し合わせることで、Q1に帯電した物体にかかるクーロン力を表すことができる。
これを、重ね合わせの法則と呼ぶ。
帯電体が増えたとしてもこの重ね合わせの法則は有効である。