電子部品 - MOSFETの耐圧とオン抵抗の関係

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概要

ここでは、MOSFETの耐圧とオン抵抗の関係について記載する。


MOSFETの耐圧とオン抵抗の関係

下図は、パワーデバイスに用いられる代表的な半導体における耐圧とオン抵抗の関係である。

下図に示すように、MOSFETは耐圧が高くなるほど、オン抵抗が高くなる性質がある。
すなわち、耐圧とオン抵抗がトレードオフの関係にある。

ErectricParts MOSFET Withstand Voltage 1.jpg



耐圧が高くなるとオン抵抗が高くなる理由

下図に、MOSFETの構造を示す。(縦型プレーナ構造)
一般的に、高耐圧のMOSFETは縦型プレーナ構造となっている。

ErectricParts MOSFET Withstand Voltage 2.jpg


MOSFETは、ドリフト層を低濃度なN層(N-ドリフト層)で形成している。
ゲート-ソース間電圧VGSを印加していない状態において、MOSFETにドレイン-ソース間電圧VDSを印加すると、N-ドリフト層にドレイン-ソース間電圧VDSに応じた空乏層が生じる。
このN-ドリフト層の空乏層を伸ばすことにより、MOSFETは耐圧を確保している。

高耐圧のMOSFETでは、この空乏層が広がりやすくなっており、N-ドリフト層が厚く、N-ドリフト層の不純物濃度が低くなっている。
しかし、N-ドリフト層が厚く、N-ドリフト層の不純物濃度が低い場合、ドリフト抵抗が増加するという問題がある。

また、縦型プレーナ構造のMOSFETでは、ゲート-ソース間電圧VGSを印加することでチャネルを形成して、
ドレイン-ソース間電圧VDSを印加することで、電子がソースからN+層、P層、N-ドリフト層、N+層を通り、ドレインに流れ込む。(ドレイン電流IDは逆の経路となる)
これが、MOSFETのオン状態における電流経路となる。

ErectricParts MOSFET Withstand Voltage 3.jpg


ここで、MOSFETのオン抵抗RONとは、この電流経路において発生する各部の抵抗の和であり、下式で表される。
RSUBは基板の抵抗、RCHはチャネル部の抵抗、RN+はN+層の抵抗である。


まとめると、耐圧を高くするためにN-ドリフト層を厚くしたり、N-ドリフト層の不純物濃度を低くすると、ドリフト抵抗RDRIFTが増加する。
したがって、上式より、MOSFETのオン抵抗RONが高くなる。

※補足
縦型プレーナ構造のMOSFETでは、JFET抵抗RJFETとドリフト抵抗RDRIFTがオン抵抗RONの80[%]以上を占めている。