電子部品 - 抵抗器
概要
ここでは、抵抗の種類と特徴について記載する。
抵抗には多くの種類があり、性質や素材によって下図のように分類することができる。
例えば、最も多く使用されている抵抗は炭素皮膜抵抗(カーボン抵抗)である。
また、電流検出用には低抵抗かつ大電力(数[W])でインダクタンスが小さい金属板抵抗を使用する。
ソリッド抵抗
炭素の粉末と樹脂を混合し、固形化した抵抗器である。
ソリッド抵抗は、炭素体抵抗、固定体抵抗、カーボンコンポジット抵抗、カーボンコンポジション抵抗とも呼ばれる。
高耐圧・高抵抗のものを作ることができるため、主に電源回路等の大きなストレスが掛かる回路に使用される。
しかし、精度が悪いため、精密な用途には適さない。
また、ソリッド抵抗はコストや精度面で難点があり、徐々に炭素皮膜抵抗に置き換わっている。
- メリット
- 高耐圧高抵抗のものを作ることができる。
- 寄生インダクタンス成分が小さい。
- 断線が起こりにくい。
- 過渡な条件下での使用に強く丈夫である。
- 1/16[W]型のような超小型の抵抗の製造が可能である。
- 幅広い抵抗値範囲をカバーできます。
- デメリット
- 精度が悪いので精密な用途には適さない。
- 経年変化によって抵抗値がかなり変化(増加)する。
- 温度係数が非常に大きく、著しい高温にさらされると一挙に抵抗値が高くなってしまうことがある。
- 抵抗値の経年劣化や生産性が悪い等の理由で、製造を打ち切る国内メーカーが多く、入手性が悪い。
海外メーカー製しか入手できないのが現状である。
炭素皮膜抵抗(カーボン抵抗)
安定した磁性体(セラミック)の表面に、抵抗体として炭素皮膜を装着した抵抗器である。
炭素皮膜抵抗は、英語でCarbon Film Resistorと書く。
小電力用の抵抗では最も多く使用されており、一般的に、小型の抵抗器と言うと炭素皮膜抵抗のことを指す。
抵抗値の精度は、一般的に、±5%(J)、±10%(K)が多く使用される。
温度係数は、負特性(温度の上昇で抵抗値が下がる)となっている。
- メリット
- 非常に低価格な抵抗である。そのため、抵抗の中で最も多く使用されている。
- 幅広い抵抗値範囲をカバーできる。
- デメリット
- 温度係数があまりよくないため、精密な用途には適さない。
- 電流雑音や周波数の特性が良くない。
※補足
炭素皮膜抵抗の塗装をはがすと、内側に溝が入っています。この溝を調整することで抵抗値を調整している。
金属皮膜抵抗(キンピ)
安定した磁性体(セラミック)の表面に、抵抗体としてNi-Cr(ニッケルクロム)等の金属材料を使用した抵抗器である。
金属皮膜抵抗は、英語でMetal Film Resistorと書く。
外観は炭素皮膜抵抗と似ている。
精度が良いため、主に通信・計測機器、コンピュータ等に使用されている。
- メリット
- 炭素皮膜抵抗に比べて、温度係数が小さく、電流雑音が少なく、精度が良い。
- 抵抗値の精度の選択肢が広く、±5%(J)、±2%(G)、±1%(F)、±0.5%(D)、±0.25%(C)、±0.1%(B)、±0.05%(A)等がある。
- デメリット
- 抵抗体に金属を使用しているため、炭素皮膜抵抗より高価(約2~3倍)となる。
※補足
金属皮膜抵抗には、"厚膜型金属皮膜抵抗(金属系のペーストを加熱焼成したもの)"と"薄膜型金属皮膜抵抗(金属を蒸着させてコーティングしたもの)"がある。
厚膜型は、「キンピ」と呼ばれているものである。
薄膜型は、厚膜型をさらに高精度(±0.05%程度のものもある)であり、低温度係数となっているが、厚膜型より高価である。
一般の金属の温度特性は正特性であるので、金属皮膜抵抗は合金の比率を変えることで、温度係数を小さくしている。
また、この比率によって、正特性と負特性のどちらかになる。
酸化金属皮膜抵抗(サンキン)
安定した磁性体(セラミック)の表面に、抵抗体として酸化スズなどの金属酸化物を使用した抵抗器である。
酸化金属皮膜抵抗は、英語でMetal Oxide Resistorと書く。
酸化金属の皮膜が熱によって燃焼することがないため、1[W]~5[W]程度の中電力用として多く用いられている。
- メリット
- 電力のわりにコストが安い。
- デメリット
- 精度・温度特性ともに金属皮膜抵抗より劣る。
※補足
抵抗体の材料である金属酸化物は無機材料のため、燃焼せずに発熱するという特徴があるため、実装には注意が必要である。
抵抗周囲の部品(コンデンサ等)や配線やプリント基板の温度管理をする必要がある。
温度特性は、約±350[ppm]/[℃]である。
メタルグレーズ抵抗
金属や酸化ルテニウム等の金属酸化物とガラスを混合して、アルミナやセラミック等に高温で焼結させたものを抵抗体とした抵抗器である。
メタルグレーズ抵抗は、英語でCermet Film Resistorと書く。
- メリット
- 厚膜が得られるため、サージやパルスに強い。
- 耐腐食性に優れる。
- 高抵抗領域においても抵抗値の経時変化が小さく信頼性が高い。
- 安全性、耐環境性に優れている。
- デメリット
- 絶縁粒子を使用しているため、過電圧が印加されると一部絶縁粒子への負荷集中で局所的な絶縁破壊を起こし、抵抗値が中途半端に変化する場合がある。
金属板抵抗
金属の抵抗体をジャバラ状に打ち抜き、リードを付け、セラミックケースにセメント樹脂で封止した抵抗器である。
金属板抵抗は、英語でMetal Plate (Cement) Resistorと書く。
低抵抗・大電力(数[W])・低ESLが特徴である。
- メリット
- 低抵抗(10[mΩ]から製造が可能)でかつ大電力(数[W])でインダクタンスが小さいため、電流検出回路に用いられている。
なお、低抵抗なので、プリント基板の配線抵抗を考慮する必要がある。 - 無機材料なので燃損しない。
- 低抵抗(10[mΩ]から製造が可能)でかつ大電力(数[W])でインダクタンスが小さいため、電流検出回路に用いられている。
巻線抵抗
抵抗線(金属の細い線で、材質はマンガンやニクロム線等)をセラミックのボビンなどに巻き付けた抵抗器である。
巻線抵抗は、英語でWire-Wound Resistorと書く。
低い抵抗値で大電力(数[W]から数百[W])を得ることができるのが特徴である。
- メリット
- 温度係数が小さい。
- 電流雑音が比較的に小さい。
- 耐熱性が良い。
- デメリット
- 高周波特性が悪いため(抵抗線をボビンに巻き付けるという構造がコイル(インダクタ)と同じであり、インダクタンス成分を持つ)、高周波回路には注意が必要である。
- 抵抗値の高いものは、大型・高価である。
※補足
抵抗値は、線種や巻き数で調整する。
巻線抵抗には、電力用と精密用がある。一般的に、市販されている巻線抵抗のほとんどが電力用である。
耐熱構造なので、定格電力で使うと抵抗が非常に高温になるため、実装には注意が必要である。
抵抗周囲の部品(コンデンサ等)や配線やプリント基板の温度管理をする必要がある。
構造上、高周波数特性が悪いという性質があるが、巻き方を無誘導巻とすることで対策された製品も存在するが、無誘導巻のものでも高周波での使用は避けた方が無難である。
温度係数は品種ごとに異なる。
巻線抵抗は、大電力用で用いられることが多いため、耐熱性(発煙や発火が起こらない)であることが求められる。
そのため、巻線抵抗のケースには、絶縁の不燃性塗料を用いるものが多い。
巻線抵抗のケースに角型のセメント材を用いたものをセメント抵抗、金属ケースを用いたものはメタルグラッド抵抗と呼ばれている。
セメント抵抗
巻線抵抗または金属皮膜抵抗等をセラミックケースに入れて、セメントで封止することで、耐熱性、耐圧性を向上させた抵抗器である。
セメント抵抗は、英語でCeramic Cement Resistorと書く。
大電力用であり、電力の大きな抵抗が必要な時に使用する。
- メリット
- 絶縁性に優れている。
- セメントは放熱性が良いため、耐熱性が向上する。
- デメリット
- 巻線抵抗のなので、インダクタンス成分を持ちます。そのため、高周波回路には注意が必要となります。
※補足
不燃性のケースで覆われているため、発火せず、定格電力で使うと抵抗が非常に高温になるため、実装には注意が必要である。
抵抗周囲の部品(コンデンサ等)や配線やプリント基板の温度管理をする必要がある。
メタルクラッド抵抗
巻線抵抗に金属製の外装を取り付けた抵抗器。巻線抵抗の一種である。
メタルクラッドは、Metal(金属)とClad(被膜した)を組み合わせたものである。
メタルクラッド抵抗は、英語でMetal Clad Resistorと書く。
メタルクラッド抵抗は、大きな電流を流すことを想定しているため、放熱板や放熱フィンなど熱対策がなされているものもある。
ホーロー抵抗(ホウロウ抵抗)
セラミックの芯に抵抗線を巻き、その上に琺瑯(ほうろう)を焼き付けて耐熱性を高めた抵抗器である。(巻線抵抗の一種)
ホーロー抵抗は、英語でEnamel Resistorと書く。
表面の皮膜を削り抵抗線をむき出しにして、スライド金具を付けて抵抗値を調整できるようにしたものもある。
- メリット
- 耐熱性が非常に高いため、大電力を扱う場合に適しています。
- デメリット
- 巻線抵抗のなので、インダクタンス成分を持ちます。そのため、高周波回路には注意が必要となります。
ヒューズ抵抗
通常時は普通の抵抗として機能して、異常時の過負荷では抵抗体が完全に溶断して回路電流を遮断する機能を持った抵抗器である。
ヒューズ抵抗は、英語でFusible Resistorと書く。
これは、高温時に抵抗体がヒューズのように溶断するという現象を利用している。
構造的には酸化金属皮膜抵抗と同じ構造をしているが、抵抗体が燃損するため、外装塗装は難燃性となっている。
なお、ヒューズ抵抗はヒューズやヒューズ付き抵抗と比較すると、応答電流値や応答時間のバラツキが大きくなる。
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ヒューズ付き抵抗(温度ヒューズ内臓抵抗)
主に、電源投入時に流れる突入電流を抑制するために使われる抵抗器である。
ヒューズ付き抵抗(温度ヒューズ内臓抵抗)は、突入電流防止回路の抵抗に用いられているため、突入電流防止抵抗や突防抵抗と呼ばれることがある。
ヒューズ抵抗(温度ヒューズ内臓抵抗)は、英語でThermal-Fuse Resistorと書く。
電源投入時、電源ライン間に突入電流防止回路(抵抗とスイッチング素子(サイリスタやトライアックやリレー)で構成された回路)を接続することで、
電源ラインに流れる突入電流を抑制する手法がある。
この抵抗には、電源投入時に流れる突入電流に耐えることができるサージ耐量の大きな巻線抵抗器を用いることができる。
通常時は、スイッチング素子をオンすることで、スイッチング素子に電流を流す。
しかし、このスイッチング素子が故障した場合、抵抗に電流が流れ続けることになり、抵抗がかなり発熱するという問題がある。
そこで、安全対策として、温度ヒューズを抵抗の近くに組み込んで一体化した部品がある。
この部品が、ヒューズ付き抵抗(温度ヒューズ内臓抵抗)である。
温度ヒューズ抵抗の構造やヒューズの溶断原理
温度ヒューズ抵抗の構造
温度ヒューズとは、抵抗と温度ヒューズを直列に接続して、セラミックケースに入れ、封止材(シリコーンセメント)で封止した素子である。
抵抗と温度ヒューズは溶接されている。
温度ヒューズ抵抗の溶断原理
- 過電流による抵抗の自己発熱による溶断
- 温度ヒューズ抵抗に過電流が流れると、内部の抵抗が自己発熱し、その熱が温度ヒューズに伝わります。その結果、温度ヒューズが溶断し、電流が遮断されます。
- 外部の異常発熱による溶断
- 外部の異常発熱は温度ヒューズ抵抗内部の温度ヒューズに伝わる。
- その結果、温度ヒューズが溶断して、電流が遮断される。
※補足
温度ヒューズ抵抗は、熱の異常な上昇により回路を遮断する目的で作られているので、過電流によって切れる電流ヒューズの用途として使用してはならない。
温度ヒューズ抵抗には、耐量UP品がある。
耐量UP品とは、誘導負荷(モータ・コイル・トランス等)や容量負荷(コンデンサ等)において、"通電直後"または"急激な電圧や電流の変化時"に生じるインラッシュ電流や
落雷時に発生するサージ電流を考慮したものである。
突入電流防止回路の設計方法と抵抗の選定方法
突入電流防止回路の設計方法については、こちらのページを参照すること。
ネットワーク抵抗
複数の抵抗を1つの絶縁基板上にまとめた抵抗器である。
ネットワーク抵抗は、複合抵抗や抵抗アレイとも呼ばれている。
ネットワーク抵抗は、英語でNetwork Resistorと書く。
部品点数の削減、省力化、高密度化等のメリットがあり多く使用されている。
抵抗の特性は一般の厚膜抵抗と同じである。
複数の抵抗の接続方法には、並列、直列、分圧、独立など様々なものが存在する。
※補足
ネットワーク抵抗は、アナログ回路等で相対的な抵抗値のばらつきを低減する場合に使用する。