電子回路 - 電子核
概要
電子殻は、原子核の周りを電子が運動している領域を表す概念である。
これは量子力学的な考えに基づいており、電子が特定のエネルギー準位に存在する確率の高い空間である。
電子殻の概念は、原子の構造理解から化学結合の形成まで、化学の基礎となっている。
主殻 (主量子数で表される) は、原子核からの距離に応じて K殻、L殻、M殻、...というように名付けられており、外側に向かって主量子数が増加する。
- K殻
- 最も内側で主量子数は1
- L殻
- 主量子数は2
- M殻
- 主量子数は3
各主殻には副殻 (副量子数で表される) が存在しており、これらはs、p、d、f軌道として知られている。
- s軌道
- 球対称な形状を持つ。
- p軌道
- 互いに垂直な3つの軌道からなり、ダンベル型の形状である。
- d軌道
- さらに複雑な5つの軌道、f軌道は7つの軌道を持つ。
電子配置において重要なものが、パウリの排他原理である。
これにより、1つの軌道に存在できる電子は最大2個までと制限されている。
また、フントの規則により、同じエネルギー準位の軌道には、最初に電子が1つずつ入る。
元素の周期表の構造は、この電子殻の構造と密接に関連している。
例えば、アルカリ金属は最外殻に電子が1個だけ存在して、希ガスは最外殻が完全に満たされた状態になっている。
これにより、元素の化学的性質が決定される。
さらに、電子殻の構造は、化学結合の形成にも重要な役割がある。
原子が最外殻 (価電子殻) の電子を共有、あるいは、授受することにより、様々な化学結合が形成される。
例えば、イオン結合は電子の完全な移動によって、共有結合は電子の共有により形成されている。
電子殻に収納可能な電子数
重要な点は、以下に示す3つある。
主量子数と電子収容数の関係
まず、主量子数 (n) と電子収容数の関係である。
各殻の収容可能な総電子数は、 で表すことができる。
例えば、K殻 ( ) では2個、L殻 ( ) では8個、というように外側の殻になるにつれて収容できる電子数が増加する。
この構造は、元素の電子配置を理解する上で重要となる。
例えば、周期表の周期の長さが異なる理由もこの電子殻の構造から説明することができる。
小軌道 (副電子殻) の構造
外側の核になるにつれて、新しい軌道が順次追加される。
小軌道に収納可能な電子数を以下に示す。
- s軌道 (sharp)
- 2個
- p軌道 (principal)
- 6個
- d軌道 (diffuse)
- 10個
- f軌道 (fundamental)
- 14個
- g軌道
- 18個
- h軌道
- 22個
- i軌道
- 26個
殻ごとの特徴
外側の殻ほど複雑な構造になる。
- K殻
- 1s軌道のみ
- L殻
- 2s軌道と2p軌道
- M殻
- 3s軌道、3p軌道、3d軌道
- N殻
- 4s軌道、4p軌道、4d軌道、4f軌道
- O殻
- 5s軌道、5p軌道、5d軌道、5f軌道、5g軌道
- ※ただし、5s軌道、5p軌道、5d軌道、5f軌道までしか確認されていない。
- P殻
- 6s軌道、6p軌道、6d軌道、6f軌道、6g軌道、6h軌道
- ただし、6p軌道、6d軌道までしか確認されていない。
- Q殻
- 7s軌道、7p軌道、7d軌道、7f軌道、7g軌道、7h軌道、7i軌道
- ただし、7s軌道、7p軌道までしか確認されていない。
5g軌道、6f軌道、6g軌道が確認されていない理由として、原子番号が大きくなるにつれて原子核の不安定性が増すからである。
そのため、現在知られている元素では、理論上可能な電子配置の全てを観測することができない。
特に、外側の殻における高次の軌道 (g軌道以降) は、実在する元素では見られない配置である。
電子の収容順
高位の電子殻の低位の小軌道のエネルギー準位は、低位の電子殻の高位の小軌道よりも低くなる。
電子は、必ず低いエネルギー準位から順に収容される。
具体的な収容順序を以下に示す。
- 1s -> 2s -> 2p -> 3s -> 3pから始まる。
特徴的なのは、3p軌道の後の順序である。 - 3p -> 4s -> 3dという順序になる。
これは、4s軌道のエネルギー準位が3d軌道より低いためである。
- 実際の収容例 (M殻の場合)
- M殻のp軌道 (3p) に電子が入る。
- N殻のs軌道 (4s) に電子が入る。
- その後、M殻のd軌道 (3d) に戻る。
- 以降の順序は、3d -> 4p -> 5s -> 4d -> 5p -> 6sと続く。
第4周期以降では例外も存在する。
2012年時点での発見されている元素 (未公認含む) では、6d軌道および7s軌道まで満たされている。
また、7p軌道に電子を収容している元素が確認されている。