概要

1階常微分方程式としては、以下のようなものがある。
これらは方程式の形により分類される。

  • 変数分離形微分方程式
  • 同次形微分方程式
  • 1階線形微分方程式
  • ベルヌーイ形微分方程式
  • 完全微分方程式



の扱い

以下の命題は、  は、形式的に分数のように扱うことができることを示している。

命題1.
 

証明.
  とおいて、両辺をxで微分すると、 
置換積分の公式より、 
  より、
 


命題2.
 

証明.
  の両辺をdxで除算して、本来の記号   に戻すと次式となる。
 

両辺をxで積分すると次式となる。
 

左辺に対して命題1を適用すると次式となる。
 


命題3.
 

証明.
  の両辺をdxで除算して、本来の記号  に戻すと次式となる。
 

この両辺をxで積分すると次式となる。
 

左辺第2項に命題1を適用して整理する。
 



変数分離形微分方程式

f(x)をxのみの関数、g(y)をyのみの関数とする時、以下に示す形になる微分方程式を変数分離形という。
 

変数分離系の方程式は、以下のように記述することもある。

  •  
  •  
  •  


  • 変数分離形の例
     
     

  • 変数分離形ではない例
     
     


例題1. 
微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
 


例題2.
微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
 


例題3.
微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
 


例題4.
微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
  とおく。
 



同次形微分方程式

同次形微分方程式とは

   のみの関数になっている微分方程式を、同次形微分方程式という。
 

同次形微分方程式は、変数変換することにより、変数分離形として記述できる。

変数分離形として記述できることの説明

  とおけば、  より、積の微分公式を使用して、  となる。
これを、  に代入すると、  となる。
したがって、 

これは未知関数uの変数分離形である。


同次形微分方程式の例

  •  
  •  
  •   分母分子をxで除算すると、  と記述できるため、同次形微分方程式である。


同次形微分方程式の例題

例題1.
微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
  とおくと、 
積の微分公式より、 

これを微分方程式に代入すると、  となり、各項を計算すると、  となる。
したがって、  であるため、変数分離形となる。

この両辺をxで積分すると、
 

  であるので、これを上式に代入すると、次式となる。
 

したがって、一般解は、
 


例題2.
次の微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
  は、次のように記述できるため、同次形微分方程式である。
 

ここで、  すなわち   とおくと、
 

上式(2)(3)を上式(1)へ代入すると、
 

したがって、 
これは変数分離形である。

上式84)を変数分離して積分すると、次式となる。
 
 
したがって、 

ここで、  を代入してx, yの式に戻す。
 

ここで、  は、対数の法則により、
 
 
 
 
 

ゆえに、一般解は次式となる。
 



1階線形微分方程式

1階線形微分方程式とは

  をxのみの関数とする時、以下の形の微分方程式を、1階線形微分方程式(first-order linear differential equation)という。

 


上式(1)の中で、  の以下の方程式を同次方程式(homogeneous equation)という。

 


上式(1)の中で、  の場合の方程式を非同次方程式(inhomogeneous equation)という。

同次方程式は、変数分離形の方程式となる。

理由.
  を記述し直すと、
  となり、左辺はyのみの関数、右辺はxのみの関数となる。


• まとめ:

  • 同次方程式(変数分離形)
     
  • 非同次方程式
     


1階線形微分方程式の例

  •  
  •  
  •  


1階線形微分方程式ではない例

  •   の項があるものは、非線形である。
例.   (ベルヌーイ形の微分方程式)


1階線形微分方程式の一般解

定理
1階線形微分方程式   の一般解は、以下の公式で表される。
 

ここで、 
   の原始関数の1つ

上式にある   を積分因子(integrating factor)という。


1階線形微分方程式の一般解の証明

1階線形微分方程式   の両辺に  を乗算すると、次式が得られる。
 

ここで、  である。
なぜなら、上式(2)において、  とおくと、  であるので、合成関数の微分公式より、次式が得られるからである。
 

したがって、  を考慮して、上式(3)の左辺を記述し直すと、 
さらに、積の微分公式より、  となる。

上式(4)の両辺をxで積分すると、次式が得られる。
 

したがって、一般解は次式で表される。
 
QED.

1階線形微分方程式の例題

例題1. 1階線形微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
両辺をxで割ると、  より、
  となる。

積分因子   を求める。
 

上記の式を   に代入すると、
 

ここで、  より、
 

ゆえに、一般解は次式となる。
 


例題2.
次の微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
  として、1階線形微分方程式の一般解の公式に代入する。

この時、  と変数変換する。
 

  をxで微分すると、合成関数の微分公式より、
 

(1)式の両辺を積分すると、  となる。

よって、   が成立する。
したがって、 

一般解は次式となる。
 


例題3.
次の微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
  は、1階線形微分方程式である。

1階線形微分方程式の一般解の公式を適用する。
 

合成関数の微分公式より、以下の式が成立する。
 

したがって、一般解は以下となる。
 



ベルヌーイ形微分方程式

ベルヌーイ形微分方程式とは

  をxのみの関数とする時、以下の形の微分方程式を、ベルヌーイ(Bernoulli)形微分方程式という。

 


ベルヌーイ形方程式は、  とおくことにより、1階線形微分方程式に記述することができる。
上式(1)において、 の場合は、それぞれ、変数分離形微分方程式、1階線形微分方程式になる。(そのため、kの条件   で排除している)

ベルヌーイ形微分方程式の例.
ある値域(人口N人)のファッションの伝搬速度は、ファッションに参加している人数yと未参加者N - yの両方に比例すると考えられる。
  (ロジスティック方程式)

この方程式を書き直すと以下のベルヌーイ形になる。
  (ベルヌーイ形)


ベルヌーイ形微分方程式の1階線形微分方程式への変換

  において、 の場合を考える。(   は、式(1)の解の1つである)

右辺からyを消すため、両辺を   で除算すると、
 

ここで、  という事実に着目して、上式(2)の両辺に   を乗算すると、
 

ここで、  とおき、未知関数をyからuへ変換する。
この時、未知関数uの1階線形微分方程式となる。
 

ベルヌーイ形微分方程式の例題

例題1.
次の微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
  の両辺を   で除算して、  を乗算する。
 

ここで、  とおくと、  となるため、
  となり、未知関数uに関する1階線形微分方程式である。

1階線形微分方程式の公式を使用する。
積分因子 :  
 

ゆえに、 
  となる解は、  の場合に対応する。


例題2.
次の微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
これはベルヌーイ形微分方程式である。

与式の両辺に、  を乗算すると、
 

この時、  とおくと、  である。
上式(2)を上式(1)へ代入する。
 

これは、1階線形微分方程式となるので、1階線形微分方程式の一般解の公式を適用する。
 

  であるため、一般解は以下となる。
 


例題3.
次下の微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
与式は、ベルヌーイ形微分方程式である。
両辺に、  を乗算すると、
 

  とおく時、 
これは1階線形微分方程式であるため、1階線形微分方程式の一般解の公式を適用すると、
 

したがって、一般解は以下となる。
 



完全微分方程式

完全微分方程式とは

x, yを変数とする以下の微分方程式を考える。

 


この時、上式(1)の左辺が、ある関数   の微分   になる時、
上式(1)を完全微分方程式という。

完全微分方程式は、  と記述できるため、完全微分方程式の一般解は、次式のようになる。
 

完全微分方程式の定理と判定

  が完全微分方程式である。

 


完全微分方程式の一般解の公式(定理)

完全微分方程式   の一般解は、次式で表される。
 


完全微分方程式の例

  •  


理由
  の時、  である。
さらに、以下の判定条件により、  が成立するため、完全微分方程式である。

  • 判定条件
     
     


完全微分方程式の例題

例題1.
次の微分方程式が完全微分方程式であることを確かめよ。
また、この微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
  とおく時、  であり、
  が成立する。
判定条件が成立したので、完全微分方程式である。

完全微分方程式の一般解の公式より、以下が成立する。
 
 
 
 

ゆえに、一般解は次式となる。
 


例題2.
次の微分方程式の一般解を求めよ。
 

解答.
まず、  が完全微分方程式であることを確認する。
 
となるため、与式は完全微分方程式である。

完全微分方程式の一般解の公式を適用する。
 
 
 
 
 

したがって、一般解は以下となる。