概要
回路の受動素子(抵抗R、コイルL、コンデンサC)が直列接続または並列接続されている場合の合成インピーダンスの計算手順を記載する。
RL直列回路の合成インピーダンス
RL直列回路は、抵抗RとコイルLが直列に接続された回路で、下図のような回路になる。
図.1 抵抗RとコイルLが直列接続の回路
直列回路の合成インピーダンスを求める場合、それぞれのインピーダンスを加算することにより求められる。
RL直列回路の合成インピーダンスは、次式で与えられる。
なお、角周波数である。
であるため、となり、
RL直列回路の合成インピーダンスのベクトルの向きは、必ず右上向き(複素数平面の第1象限)になる。
RC直列回路の合成インピーダンス
RC直列回路は、抵抗RとコンデンサCが直列に接続された回路で、下図のような回路になる。
図.2 抵抗RとコンデンサCが直列接続の回路
直列回路の合成インピーダンスを求める場合、それぞれのインピーダンスを加算することにより求められる。
RC直列回路の合成インピーダンスは、次式で与えられる。
なお、角周波数である。
であるため、
となり、
RC直列回路の合成インピーダンスのベクトルの向きは、必ず右下向き(複素数平面の第4象限)になる。
LC直列回路の合成インピーダンス
LC直列回路は、抵抗RとコンデンサCが直列に接続された回路で、下図のような回路になる。
図.3 コイルLとコンデンサCが直列接続の回路
直列回路の合成インピーダンスを求める場合、それぞれのインピーダンスを加算することにより求められる。
LC直列回路の合成インピーダンスは、次式で与えられる。
なお、角周波数である。
であるため、
となり、
LC直列回路の合成インピーダンスのベクトルの向きは、必ず、虚数軸上となる。
LC直列回路の合成インピーダンスは、上式の分母が正・負・ゼロの時、それぞれのベクトルの向きが変わる。
したがって、の時で、場合分けして考える必要がある。
- の場合
- 上式のリアクタンスが正になるため、合成インピーダンスのベクトルは、虚数軸上の正の向きになる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが負になるため、合成インピーダンスのベクトルは、虚数軸上の負の向きになる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが0になるため、合成インピーダンスのベクトルは、複素数平面の原点Oとなる。
- インピーダンスが0ということは、その回路は短絡状態と同じになる。
- また、 すなわち、 は、回路の共振条件である。
RLC直列回路の合成インピーダンス
RLC並列回路は、抵抗R、コイルL、コンデンサCが並列に接続された回路で、下図のような回路になる。
図.4 抵抗R、コイルL、コンデンサCが直列接続の回路
直列回路の合成インピーダンスを求める場合、それぞれのインピーダンスを加算することにより求められる。
RLC直列回路の合成インピーダンスは、次式で与えられる。
なお、角周波数である。
であるため、
となり、
RLC直列回路の合成インピーダンスのベクトルの向きは、複素数平面の右上(第1象限)または右下(第4象限)または実数軸上となる。
RLC直列回路の合成インピーダンスは、上式の虚部()が正・負・ゼロの時、それぞれのベクトルの向きが変わる。
したがって、の時で、場合分けして考える必要がある。
- の場合
- 上式のリアクタンスが正になるため、合成インピーダンスのベクトルは、右上の向き(第1象限)になる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが負になるため、合成インピーダンスのベクトルは、右下の向き(第4象限)になる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが0になるため、合成インピーダンスのベクトルは、実数軸上の正の向きになる。()
- この条件を満たす周波数は共振周波数であるため、コイルLとコンデンサCの直列回路部分は短絡状態と同じになる。
- また、 すなわち、 は、回路の共振条件である。
RL並列回路の合成インピーダンス
RL並列回路は、抵抗RとコイルLが並列に接続された回路で、下図のような回路になる。
図.5 抵抗RとコイルLが並列接続の回路
並列回路の合成インピーダンスを求める場合、
それぞれのインピーダンスの逆数(アドミタンス)を加算して、その逆数をとることにより求められる。
RL並列回路の合成インピーダンスは、次式で与えられる。
なお、角周波数である。
であるため、
となり、
RL並列回路の合成インピーダンスのベクトルの向きは、必ず右上向き(複素数平面の第1象限)になる。
RC並列回路の合成インピーダンス
RC並列回路は、抵抗RとコンデンサCが並列に接続された回路で、下図のような回路になる。
図.6 抵抗RとコンデンサCが並列接続の回路
並列回路の合成インピーダンスを求める場合、
それぞれのインピーダンスの逆数(アドミタンス)を加算して、その逆数をとることにより求められる。
RC並列回路の合成インピーダンスは、次式で与えられる。
なお、角周波数である。
であるため、
となり、
RC並列回路の合成インピーダンスのベクトルの向きは、必ず右下向き(複素数平面の第4象限)になる。
LC並列回路の合成インピーダンス
LC並列回路は、抵抗RとコンデンサCが並列に接続された回路で、下図のような回路になる。
図.7 コイルLとコンデンサCが並列接続の回路
並列回路の合成インピーダンスを求める場合、
それぞれのインピーダンスの逆数(アドミタンス)を加算して、その逆数をとることにより求められる。
LC並列回路の合成インピーダンスは、次式で与えられる。
なお、角周波数である。
であるため、
となり、
LC並列回路の合成インピーダンスのベクトルの向きは、必ず、虚数軸上となる。
LC並列回路の合成インピーダンスは、上式の分母が正・負・ゼロの時、それぞれのベクトルの向きが変わる。
したがって、の時で、場合分けして考える必要がある。
- の場合
- 上式のリアクタンスが正になるため、合成インピーダンスのベクトルは、虚数軸上の正の向きになる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが負になるため、合成インピーダンスのベクトルは、虚数軸上の負の向きになる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが無限大になるため、合成インピーダンスのベクトルは、虚数軸上の正の向きに無限大となる。
- インピーダンスが無限大ということは、その回路は開放状態と同じになる。
- また、 すなわち、 は、回路の共振条件である。
RLC並列回路の合成インピーダンス
RLC並列回路は、抵抗R、コイルL、コンデンサCが並列に接続された回路で、下図のような回路になる。
図.8 抵抗R、コイルL、コンデンサCが並列接続の回路
並列回路の合成インピーダンスを求める場合、
それぞれのインピーダンスの逆数(アドミタンス)を加算して、その逆数をとることにより求められる。
RLC並列回路の合成インピーダンスは、次式で与えられる。
なお、角周波数である。
であるため、
となり、
RLC並列回路の合成インピーダンスのベクトルの向きは、複素数平面の右上(第1象限)または右下(第4象限)または実数軸上となる。
RLC並列回路の合成インピーダンスは、上式の分子(特に、)が正・負・ゼロの時、それぞれのベクトルの向きが変わる。
したがって、の時で、場合分けして考える必要がある。
- の場合
- 上式のリアクタンスが正になるため、合成インピーダンスのベクトルは、右上の向き(第1象限)になる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが負になるため、合成インピーダンスのベクトルは、右下の向き(第4象限)になる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが0になるため、合成インピーダンスのベクトルは、実数軸上の正の向きになる。()
- この条件を満たす周波数は反共振周波数であるため、コイルLとコンデンサCの並列回路部分は開放状態と同じになる。
- また、 すなわち、 は、回路の共振条件である。
例題
例題 1
下図のようなRL回路がある時、抵抗に掛かる電圧を求める。
回路のインピーダンスとインピーダンスの大きさは、次式となる。
全体に流れる電流Iの大きさは、次式となる。
したがって、抵抗に掛かる電圧は、次のようになる。
となる。
インダクタに掛かる電圧は、次のようになる。
となる。
電圧および電圧の大きさを求める場合は、次式のように計算する。
より、
となる。
例題 2
下図のような回路がある時、各抵抗、インダクタ、コンデンサに掛かる電圧を求める。
電流I1より、
電流I2は、電源電圧100[V]と抵抗R2およびコンデンサCのインピーダンスZ2より、10[A]となる。
回路に流れる全電流Iは、電源電圧Eから回路全体のインピーダンスZを除算することにより、求めることができる。
となる。
または、次式のように求めることもできる。