回路計算 - 内部抵抗
概要
内部抵抗は、実際の電源が理想的な電源から逸脱する要因として重要な概念である。
電源は内部抵抗R0と理想的な電圧源V0の直列接続としてモデル化することができる。
この内部抵抗の存在により、外部に負荷をかけると端子電圧が低下するという現象が発生する。
負荷に供給される電力と内部抵抗の関係において、負荷抵抗Rに供給される電力Pは、内部抵抗R0と負荷抵抗Rの両方に依存する。
この関係は、 という式で表される。
この電力には最大値が存在する。
負荷抵抗Rを変化させていく時、ある点で電力が最大となる。
数学的な解析によって、この最大電力は負荷抵抗Rが内部抵抗R0と等しくなった時に得られることが証明されている。
これは電力伝達の整合条件として知られる原理である。
このような内部抵抗の影響は、バッテリーの性能を理解する上で重要な概念であり、
例えば、バッテリーが大きな電流を供給しようとすると内部抵抗による電圧降下が大きくなり、結果として端子電圧が低下する。
これは特に高出力が要求される用途、電気自動車のバッテリー等では重要な事柄となる。
実用的なものでは、内部抵抗を小さく保つことが望ましいとされている。
これにより、電源から負荷への電力伝達効率を高く保つことができ、また発熱による損失も抑えることができる。
内部抵抗と負荷抵抗の最大消費電力
内部抵抗のある直流電源と負荷抵抗における最大消費電力を考える。
まず、負荷抵抗Rに掛かる電圧Vおよび電流Iについて求める。
負荷抵抗Rにおける最大消費電力Pは、より、次式となる。
縦軸を消費電力P、横軸を負荷抵抗Rとする時、下図のようなグラフになる。
上図のグラフから、最大消費電力Pを求める。
これは、消費電力Pの極値 におけるRの条件を求めればよい。
(1)式 において、負荷抵抗Rが内部抵抗Roと等しい時(分子が0の時)、0となる。
したがって、負荷抵抗Rにおける最大消費電力Pは、となる。
その他の内部抵抗
電源以外でも内部抵抗を考慮する必要がある機器や部品は多く存在する。
これらの内部抵抗は、機器の性能や効率に直接的な影響を与える。
また、温度依存性を持つことも多く、動作環境による特性の変化も考慮する必要がある。
特に、高周波動作や高出力動作では、内部抵抗による損失が著しく増大する可能性がある。
電流計・電圧計
計測器では、内部抵抗を考慮する必要がある。
電流計の場合、理想的には抵抗がゼロであることが望ましいが、実際には小さな内部抵抗が存在する。
この内部抵抗による電圧降下は測定精度に影響を与えるため、高精度な測定には内部抵抗の補正が必要となる。
電流計の内部抵抗による電圧降下は以下の式で表される。
(Riは電流計の内部抵抗)
電圧計においては逆に、理想的には無限大の内部抵抗が望ましいものの、実際には有限の内部抵抗値となる。
この内部抵抗により、測定対象に並列な電流経路が形成され、次式に従って測定値に誤差が生じる。
(Imは内部抵抗による漏れ電流、Riは電圧計の内部抵抗)
トランスフォーマー
1次巻線と2次巻線それぞれに巻線抵抗が存在しており、これらは負荷に対する電圧降下や変換効率に影響を与える。
トランスの等価回路では、これらの抵抗を含めて以下の関係式が成り立つ。
(N1およびN2は巻数比、R2は2次側内部抵抗、RLは負荷抵抗)
スピーカー
スピーカーのインピーダンスには抵抗成分が含まれ、これはアンプとの整合や音質に影響を与える。
スピーカーの消費電力は次式で計算される。
(Zはスピーカーのインピーダンス)
半導体
半導体デバイスでは、PN接合やチャネル領域に内部抵抗が存在する。
例えば、トランジスタのエミッタ抵抗やドレイン抵抗は、増幅特性や動作点の設定に影響を与える。
MOSFETのオン抵抗RDS (on) は、次式で表される。
(Pは導通損失)