概要
ガウス積分は、確率密度関数が正規分布(ガウス分布)に従う場合の積分を指す。
積分範囲が
に及ぶ広義積分である。
一般的には、次の形式で表される。
これは、極座標変換や留数定理を使用して解くことができる。

ガウス積分は、その広範な応用と解析的な特性から、物理学、統計学、工学、数学等の様々な分野で基本的な概念として利用されている。
- 確率論と統計学
- ガウス積分は、確率密度関数が正規分布に従う確率変数の期待値や分散などの計算に使用される。
- 多くの自然現象や社会現象は、中心極限定理により正規分布に従うことが知られており、そのためガウス積分は統計モデリングやデータ解析において広く使用される。
- 物理学
- 量子力学や統計力学等の物理学の分野でも、ガウス積分は重要な役割を果たす。
- 例えば、量子力学における波動関数の規格化や、統計力学における粒子の分布関数などの計算に使用される。
- 電磁気学
- 電場や磁場のポテンシャルの計算等にガウス積分が適用される。
- ガウスの法則やアンペールの法則等、電磁気学の基本的な法則の導出にも使用される。
- 数学
- 特に、留数定理や複素解析の中で使用され、複素関数の特性を理解する上で重要である。
極座標の広義積分

直交直線座標から円座標への変換
直交直線座標
から円座標
への変換は次式で与えられる。

ヤコビアン
2重積分に応用するには、変数変換を行うことにより、ヤコビアンを計算して
と
の関係式を求める必要がある。

したがって、
となる。
求め方
円が含まれる場合は、極座標変換
とおく。
変換後の積分範囲D'は、
の形に変形でき、2重積分を計算することができる。

ここで、
として変数変換を行う。
より、
となる。
また、
の時、積分範囲は次式となる。

上記の変数変換により、上式(1)は次のように計算することができる。
![{\displaystyle {\begin{aligned}&\pi \int _{0}^{\infty }{e^{-t}}\ dt\\=&-\pi {\big [}e^{-t}{\Big ]}_{0}^{\infty }\\=&-\pi (0-1)\\=&\pi \end{aligned}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/b6d6178c601b8fd3387426434a88cfaebc4b13b7)
ガウス積分 1

極座標における広義積分
より、次式のように分けることができる。
この時、積分変数の文字は何でもよい。

上式(1)より、次式のように考えることができる。

上式(2)より、次式が求められる。

この関数は、
を原点とした偶関数であるため、
となる。
ガウス積分 2

まず、次式を考える。

円が含まれる場合は、極座標変換
とおく。
変換後の積分範囲D'は、
の形に変形でき、2重積分を計算することができる。

ここで、
として変数変換を行う。
より、
となる。
また、
の時、積分範囲は次式となる。

上記の変数変換により、上式(1)は次のように計算することができる。
![{\displaystyle {\begin{aligned}&\pi \int _{0}^{\infty }{e^{-at}}\ dt\\=&-{\frac {\pi }{a}}{\big [}e^{-at}{\Big ]}_{0}^{\infty }\\=&-{\frac {\pi }{a}}(0-1)\\=&{\frac {\pi }{a}}\qquad \cdots (2)\end{aligned}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/7827e042a259a31b98cb95fd4c841f7b1a9d55c9)
次に、上式(2)の極座標における広義積分
より、次式のように分けることができる。
この時、積分変数の文字は何でもよい。

上式(3)より、次式のように考えることができる。

上式(4)より、次式が求められる。

この関数は、
を原点とした偶関数であるため、
となる。