インストール - Xdebug
概要
Xdebugは、PHPの拡張機能の1つであり、PHPの開発環境を向上させる様々な機能を提供する。
- ステップデバッグ
- スクリプトの実行中に、IDEやエディタでコードをステップ実行する方法である。
- PHPのエラー報告の改善
- 改良された
var_dump
関数、Notice、Warnings、Errors、Exceptionのスタックトレースにより、エラーが発生するまでのコードパスを強調して表示する。
- 改良された
- トレース
- 全ての関数の呼び出しを、引数や呼び出し位置とともにディスクに書き込む。
- オプションで、各関数のすべての変数割り当てと戻り値も含まれる。
- プロファイリング
- 視覚化ツールを使用して、PHPソフトウェアのパフォーマンスを分析して、ボトルネックを見つけることができる。
- コードカバレッジ分析
- PHP Unitでユニットテストを実行した際に、コードベースのどの部分が実行されたかを示す。
Xdebugのインストール
パッケージ管理システムからインストール
以下のコマンドを実行する。
# RHEL sudo dnf install php84-php-pecl-xdebug3.x86_64 # PHP 8.4の場合 php83-php-pecl-xdebug3.x86_64 # PHP 8.3の場合 php82-php-pecl-xdebug3.x86_64 # PHP 8.2の場合 php81-php-pecl-xdebug3.x86_64 # PHP 8.1の場合 php81-php-pecl-xdebug3.x86_64 # PHP 8.0の場合 php74-pecl-xdebug3.x86_64 # PHP 7.4の場合 # SUSE sudo zypper install php8-xdebug # PHP 8の場合 php7-xdebug # PHP 7の場合
ソースコードからインストール
Xdebugのダウンロード
まず、ApacheまたはNgineXを起動する。
ApacheまたはNgineXのルートディレクトリに、以下の内容のindex.phpファイルを作成する。
sudo vi /var/www/html/index.php または sudo vi /srv/www/htdoc/index.php
<?php
phpinfo();
?>
Webブラウザを起動して、http://localhost/ にアクセスする。
その時、インストール済みのPHPの環境が表示されるので、[Ctrl] + [A]キーを同時押下して、全てコピーする。
次に、必要なXdebugのバージョンを調べるため、以下のWebサイトにアクセスする。
https://xdebug.org/wizard.php
Webサイトのテキストボックスに、上記でコピーした情報を貼り付けて、[Analyse my phpinfo() output]ボタンを押下する。
Xdebugのダウンロードページが表示されるので、[Instruction]項目からXdebugをダウンロードする。
Xdebugのインストール
まず、Xdebugの公式Webサイトにアクセスして、Xdebugのソースコードをダウンロードする。
ダウンロードしたファイルを解凍する。
tar xf xdebug-<バージョン名>.tgz cd xdebug-<バージョン名>
phpize
コマンドを実行する。
phpize
Xdebugをビルドおよびインストールする。
もし、configure
スクリプトの実行に失敗する場合、Xdebugのビルドに必要なライブラリ等が不足している。
mkdir xdebug-build && cd xdebug-build ../configure \ --enable-xdebug \ --enable-xdebug-dev \ # 任意 --prefix=<PHPのインストールディレクトリ> # PHPを任意のディレクトリにインストールしている場合等に指定する make -j $(nproc) make install または sudo make install
インストールしたxdebug.soファイルの場所は、各LinuxディストリビューションやPHPの環境により異なる。
RHELおよびSUSEにおいて、パッケージ管理システムからPHPをインストールした場合は、/usr/lib64/php<PHPのバージョン>/extensionsディレクトリに配置される。
ソースコードからPHPをインストールした場合は、/<PHPのインストールディレクトリ>/lib64/extensions/xxxディレクトリ等に配置される。
Xdebugの設定
Xdebugの設定ファイルを作成または開いて、以下の内容を追記する。
もし、OPCacheを使用する場合は、OPCacheの設定行の後にzend_extensionを入力すること。
Xdebugのバージョンにより、[xdebug]セクションの設定が異なることに注意すること。
# RHEL sudo vi /etc/php.d/15-xdebug.ini # PHPをパッケージ管理システムからインストールしている場合 sudo vi /<PHPのインストールディレクトリ>/etc/conf.d/xdebug.ini # PHPをソースコードからインストールしている場合 # SUSE sudo vi /etc/phpX/conf.d/xdebug.ini # PHPをパッケージ管理システムからインストールしている場合 XはPHPのバージョン sudo vi /<PHPのインストールディレクトリ>/etc/conf.d/xdebug.ini # PHPをソースコードからインストールしている場合
- Xdebug 3.xの設定
- Xdebug 3.xの標準ポート番号は、9003番に変更されたことに注意すること。
xdebug.remote_host
は、xdebug.client_host
に置き換えられた。xdebug.remote_port
は、xdebug.client_port
に置き換えられた。xdebug.remote_log
は、xdebug.log
に置き換えられた。- これは Step Debugging以外のログメッセージも含まれる。
xdebug.remote_mode
は、以下に示す設定に置き換えられた。xdebug.remote_mode=req
(デフォルト値)の場合は、xdebug.mode=debug
とxdebug.start_with_request=trigger
を使用する。xdebug.remote_autostart
の動作が必要な場合は、xdebug.start_with_request=trigger
の代わりにxdebug.start_with_request=yes
を使用する。xdebug.start_with_request=jit
の場合は、xdebug.mode=debug
およびxdebug.start_upon_error=yes
を使用する。
# 1行目を編集 zend_extension = <配置したxdebug.soファイルのフルパス> # ファイルの最後尾に以下の設定を記述 [xdebug] xdebug.mode=debug xdebug.start_with_request=yes xdebug.dump_undefined=1 xdebug.log="<出力したいログファイルのフルパス 例. /home/user/xdebug.log>" xdebug.remote_handler=dbgp xdebug.client_port=9003 ; 標準は9003番ポート xdebug.client_host=127.0.0.1 xdebug.idekey=VSCODE
- Xdebug 2.xの設定
- Xdebug 2.xの標準ポート番号は、9000番であることに注意すること。
# 1行目を編集 zend_extension = <配置したxdebug.soファイルのフルパス> # ファイルの最後尾に以下の設定を記述 [xdebug] xdebug.dump_undefined=1 xdebug.remote_enable=1 xdebug.remote_autostart=1 xdebug.remote_log="/tmp/xdebug.log" xdebug.remote_host=localhost xdebug.remote_handler=dbgp xdebug.remote_mode=req xdebug.remote_port=9000 xdebug.idekey=VSCODE
xdebug.iniファイルの設定を反映させるため、Apache2またはNginXを再起動する。
sudo systemctl restart apache2 または sudo systemctl restart nginx
VSCodeの設定
VSCodeにてXdebugを使用する場合において、VSCodeの設定を記載する。
なお、VSCodiumにはバグが存在するため、Xdebugが使用できないので注意すること。
まず、以下に示すVSCodeの拡張をインストールする。
- PHP Extension Pack
- PHP IntelliSense
- PHP Debug
PHPプロジェクトのワークスペースにlaunch.jsonを追加して、以下のように設定を記述する。
VSCodeのメイン画面左にある[デバッガ]アイコンから歯車アイコンを押下してPHPを選択すると、launch.jsonファイルが自動作成される。
"Launch currently open script"では、Webブラウザと連携したデバッグができないため、注意すること。
- Listen for XDebug
- この設定は、XDebugの指定されたポート(初期は9000番)でリッスンを開始する。
- XDebugを構成する場合、Webブラウザを使用してWebサーバに要求を行う、または、CLIスクリプトを起動するたびにXDebugが接続して、
- ブレークポイントや例外等で停止することができる。
- Launch currently open script
- この設定は、CLIデバッグの例である。
- 現在開いているスクリプトをCLIとして起動した後、デバッグコンソールに全てのstdout / stderr出力を表示して、
- スクリプトが終了するとデバッグセッションを終了する。
"version": "0.2.0", "configurations": [ { "name": "Listen for XDebug", "type": "php", "request": "launch", "port": 9000, //"pathMappings": {"": "${workspaceRoot}" } }, { "name": "Launch currently open script", "type": "php", "request": "launch", "program": "${file}", "cwd": "${fileDirname}", "port": 9000, //"pathMappings": {"": "${workspaceRoot}"}, "runtimeExecutable": "/usr/bin/php" } ]
以下に、プロジェクト構成ファイルであるlaunch.jsonファイルの設定項目の意味を示す。
- request
- launchに設定する。
- hostname
- XDebugをリッスンする時にバインドするアドレス(標準 : 使用可能な場合は全てのIPv6接続、それ以外は全てのIPv4接続)
- port
- XDebugをリッスンするポート(標準 : 9000番)
- stopOnEntry
- スクリプトの開始時に中断するかどうか(標準 : false)
- pathMappings
- PCのローカルソースパスにマッピングされているサーバパスのリスト
- 詳細は、リモートホストのデバッグを参照すること。
- log
- VSCodeとアダプタ間の全ての通信をデバッグコンソールに記録するかどうか。
- さらに下のトラブルシューティングを参照してください。
- ignore
- エラーを無視する必要があるglobパターンのオプションの配列
- 例 : **/vendor/**/*.php
- xdebugSettings
- XDebugのリモートデバッグの設定をオーバーライドして、XDebugをニーズに合わせて微調整できる。
- 例えば、max_childrenとmax_depthを操作して、取得する配列、オブジェクトの子の最大数、配列やオブジェクト等の構造体の最大深度を変更できる。
- これにより、デバッガを高速化できる。
- 設定できる機能名の完全なリストについては、XDebugのドキュメントを参照すること。
- max_children
- 最初に取得する配列またはオブジェクトの子の最大数。
- max_data
- 最初に取得する変数データの最大量。
- max_depth
- 配列、ハッシュ、オブジェクト構造をIDEに送信する時、デバッガエンジンが返す可能性のある最大の深さ。
- show_hidden
- この機能は、プロパティ(クラスのプライベートメンバ等)に関する詳細な内部情報が必要な場合に、IDEによって設定できる。
- 例えば、この値を
0
にすると、非表示のメンバがIDEに表示されないことを意味する。
CLIデバッグの固有のオプション
- prgram
- 起動する必要のあるスクリプトへのパス。
- args
- スクリプトに渡される引数。
- cwd
- スクリプトの起動時に使用する現在の作業ディレクトリ。
- runtimeExecutable
- スクリプトの起動に使用されるPHPバイナリ(Windowsの場合、php.exe)へのパス。
- runtimeArgs
- PHPバイナリ(Windowsの場合、php.exe)に渡す追加の引数。
- externalConsole
- デバッグコンソールではなく、外部コンソールウィンドウでスクリプトを起動する。(標準 : false)
- env
- スクリプトに渡す環境変数。
Codiumの設定
CodiumにPHP Debug extensionがインストールされていないことを確認する。
もし、PHP Debug extensionがインストールされている場合は、アンインストールする。
以下に示すURLにアクセスして、ページ右にある[Resources] - [Download Extension]を選択して、vsixファイルをダウンロードする。
https://marketplace.visualstudio.com/items?itemName=felixfbecker.php-debug
Codiumのメイン画面左にある[拡張機能]サイドバーから、[拡張機能]画面左上にある[...]ボタンを押下する。
[VSIXからのインストール...]を選択して、ダウンロードした拡張ファイルを選択する。
Xdebug 3.0以降を使用する場合は、php.iniファイルのxdebugセクションを、以下のように変更する必要がある。
ただし、CodiumのPHPプロジェクトにあるlaunch.jsonファイルにおいて、ポートを9003
に変更することにより、xdebug.client_port=9000
の設定は記述しなくともよい。
xdebug.mode=debug xdebug.client_host=127.0.0.1 xdebug.client_port=9000
確認方法
以下のコマンドを入力して、xdebugと表示されているならば成功である。
php -m | grep xdebug
Webブラウザと連携
PHPのデバッグにおいて、Webブラウザと連携すると開発効率が上がる。(例 : Get & Postのデバッグ等)
Webブラウザと連携する方法は、Webブラウザの拡張機能であるxDebug Helperをインストールする。
- FireFox
- Firefoxを起動して、[ツール]メニューバー - [アドオン]を選択する。
- 表示される画面上部にある[アドオンを探す]検索欄から、"Xdebug Helper"と入力する。
- Xdebug Helper for Firefoxをインストールする。
- ChromeおよびVivaldi
- https://chrome.google.com/webstore/category/extensions にアクセスする。
- 検索項目に"xDebug Helper"と入力して、xDebug Helperをインストールする。
リモートデバッグ
リモートサーバ側の設定
Xdebugの設定ファイルに、以下の設定を追記する。
sudo vi /etc/php7/conf.d/xdebug.ini
# /etc/php7/conf.d/xdebug.iniファイル [xdebug] xdebug.mode=debug xdebug.start_with_request=yes xdebug.dump_undefined=1 xdebug.remote_enable=1 xdebug.remote_autostart=1 xdebug.remote_log=<デバッグ用ログファイルのフルパス> ; 例 : /tmp/xdebug.log xdebug.remote_host=<開発PCのIPアドレス> ; 例 : 192.168.1.0/24 xdebug.remote_port=<任意のポート番号> ; 例 : 9000 xdebug.remote_handler=dbgp xdebug.remote_mode=req xdebug.client_port=9000 ; xdebug.client_host=127.0.0.1 xdebug.idekey=VSCODE
次に、SSHの設定ファイルに、以下の設定を追記する。
SSHが未インストールまたは未設定の場合、設定 - SSHのページを参照すること。
sudo vi /etc/ssh/sshd_config
# /etc/ssh/sshd_configファイル GatewayPorts yes
設定後、SSHサービスを再起動する。
sudo systemctl restart sshd
開発用PCの設定
まず、リモートサーバにあるPHPプロジェクト(ドキュメントルートにあるファイル)を開発用PCにコピーする。
rsync -avz --rsync-path="sudo rsync" --delete --rsh="ssh" <リモートサーバのユーザ名>@<リモートサーバのIPアドレス>:<ドキュメントルートのフルパス> <開発用PCのPHPプロジェクトのフルパス>
次に、リモートサーバと開発環境の間にSSHトンネルを作成する。
ターミナルよりもVSCode等のIDE付属ターミナルで実行する方が便利である。
ssh -R <VSCode等のIDEで設定する任意のポート番号>:<開発用PCのIPアドレス>:<xdebug.remote_portで設定したポート番号> <リモートサーバのユーザ名>@<リモートサーバのIPアドレス> # 例 ssh -R 9000:192.168.1.10:9000 hoge@192.168.1.20
VSCodeで開発を行う場合、VSCodeからPHP Debug拡張機能をインストールする。
launch.jsonファイルに、以下の設定を追記する。
// ...略
{
"name": "Listen for XDebug",
"type": "php",
"request": "launch",
"port": <上記のsshコマンドで設定した任意のポート番号>,
"log": true,
"pathMappings": {
"<Webサーバのドキュメントルートのフルパス>": "${workspaceFolder}"
}
}
// ...略
最後に、PHPプロジェクトがデバッグできるかどうか確認する。