概要
回路の受動素子(抵抗R、コイルL、コンデンサC)が直列接続または並列接続されている場合の合成インピーダンスの計算手順を記載する。
RL直列回路の合成インピーダンスRC直列回路の合成インピーダンスLC直列回路の合成インピーダンス
LC直列回路は、抵抗RとコンデンサCが直列に接続された回路で、下図のような回路になる。
図.3 コイルLとコンデンサCが直列接続の回路
直列回路の合成インピーダンス を求める場合、それぞれのインピーダンスを加算することにより求められる。
LC直列回路の合成インピーダンス は、次式で与えられる。
なお、角周波数 である。
であるため、
となり、
LC直列回路の合成インピーダンス のベクトルの向きは、必ず、虚数軸上となる。
LC直列回路の合成インピーダンス は、上式の分母が正・負・ゼロの時、それぞれ のベクトルの向きが変わる。
したがって、 の時で、場合分けして考える必要がある。
- の場合
- 上式のリアクタンスが正になるため、合成インピーダンスのベクトルは、虚数軸上の正の向きになる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが負になるため、合成インピーダンスのベクトルは、虚数軸上の負の向きになる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが0になるため、合成インピーダンスのベクトルは、複素数平面の原点Oとなる。
- インピーダンスが0ということは、その回路は短絡状態と同じになる。
- また、 すなわち、 は、回路の共振条件である。
RLC直列回路の合成インピーダンス
RLC並列回路は、抵抗R、コイルL、コンデンサCが並列に接続された回路で、下図のような回路になる。
図.4 抵抗R、コイルL、コンデンサCが直列接続の回路
直列回路の合成インピーダンス を求める場合、それぞれのインピーダンスを加算することにより求められる。
RLC直列回路の合成インピーダンス は、次式で与えられる。
なお、角周波数 である。
であるため、
となり、
RLC直列回路の合成インピーダンス のベクトルの向きは、複素数平面の右上(第1象限)または右下(第4象限)または実数軸上となる。
RLC直列回路の合成インピーダンス は、上式の虚部( )が正・負・ゼロの時、それぞれ のベクトルの向きが変わる。
したがって、 の時で、場合分けして考える必要がある。
- の場合
- 上式のリアクタンスが正になるため、合成インピーダンスのベクトルは、右上の向き(第1象限)になる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが負になるため、合成インピーダンスのベクトルは、右下の向き(第4象限)になる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが0になるため、合成インピーダンスのベクトルは、実数軸上の正の向きになる。( )
- この条件を満たす周波数は共振周波数であるため、コイルLとコンデンサCの直列回路部分は短絡状態と同じになる。
- また、 すなわち、 は、回路の共振条件である。
RL並列回路の合成インピーダンスRC並列回路の合成インピーダンスLC並列回路の合成インピーダンス
LC並列回路は、抵抗RとコンデンサCが並列に接続された回路で、下図のような回路になる。
図.7 コイルLとコンデンサCが並列接続の回路
並列回路の合成インピーダンス を求める場合、
それぞれのインピーダンスの逆数(アドミタンス)を加算して、その逆数をとることにより求められる。
LC並列回路の合成インピーダンス は、次式で与えられる。
なお、角周波数 である。
であるため、
となり、
LC並列回路の合成インピーダンス のベクトルの向きは、必ず、虚数軸上となる。
LC並列回路の合成インピーダンス は、上式の分母が正・負・ゼロの時、それぞれ のベクトルの向きが変わる。
したがって、 の時で、場合分けして考える必要がある。
- の場合
- 上式のリアクタンスが正になるため、合成インピーダンスのベクトルは、虚数軸上の正の向きになる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが負になるため、合成インピーダンスのベクトルは、虚数軸上の負の向きになる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが無限大になるため、合成インピーダンスのベクトルは、虚数軸上の正の向きに無限大となる。
- インピーダンスが無限大ということは、その回路は開放状態と同じになる。
- また、 すなわち、 は、回路の共振条件である。
RLC並列回路の合成インピーダンス
RLC並列回路は、抵抗R、コイルL、コンデンサCが並列に接続された回路で、下図のような回路になる。
図.8 抵抗R、コイルL、コンデンサCが並列接続の回路
並列回路の合成インピーダンス を求める場合、
それぞれのインピーダンスの逆数(アドミタンス)を加算して、その逆数をとることにより求められる。
RLC並列回路の合成インピーダンス は、次式で与えられる。
なお、角周波数 である。
であるため、
となり、
RLC並列回路の合成インピーダンス のベクトルの向きは、複素数平面の右上(第1象限)または右下(第4象限)または実数軸上となる。
RLC並列回路の合成インピーダンス は、上式の分子(特に、 )が正・負・ゼロの時、それぞれ のベクトルの向きが変わる。
したがって、 の時で、場合分けして考える必要がある。
- の場合
- 上式のリアクタンスが正になるため、合成インピーダンスのベクトルは、右上の向き(第1象限)になる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが負になるため、合成インピーダンスのベクトルは、右下の向き(第4象限)になる。
- の場合
- 上式のリアクタンスが0になるため、合成インピーダンスのベクトルは、実数軸上の正の向きになる。( )
- この条件を満たす周波数は反共振周波数であるため、コイルLとコンデンサCの並列回路部分は開放状態と同じになる。
- また、 すなわち、 は、回路の共振条件である。
例題
例題 1
下図のようなRL回路がある時、抵抗に掛かる電圧を求める。
回路のインピーダンス とインピーダンスの大きさ は、次式となる。
全体に流れる電流Iの大きさ は、次式となる。
したがって、抵抗に掛かる電圧 は、次のようになる。
となる。
インダクタに掛かる電圧 は、次のようになる。
となる。
電圧 および電圧の大きさ を求める場合は、次式のように計算する。
より、
となる。
例題 2
下図のような回路がある時、各抵抗、インダクタ、コンデンサに掛かる電圧を求める。
電流I1より、
電流I2は、電源電圧100[V]と抵抗R2およびコンデンサCのインピーダンスZ2より、10[A]となる。
回路に流れる全電流Iは、電源電圧Eから回路全体のインピーダンスZを除算することにより、求めることができる。
となる。
または、次式のように求めることもできる。