概要
誤り検出能力や誤り訂正能力を高めるための基礎的な理論には、体と拡大体の考え方が用いられる。
ここでは、体と拡大体の基本的な考え方を記載する。
体
有理数の全体を
とする時、
は四則で閉じている。
すなわち、
とすると、以下が成り立つ。
![{\displaystyle a+b,\quad a-b,\quad ab,\quad b\neq 0{\mbox{ の と き }}{\frac {a}{b}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/8d6f375963358457a411fdaf13fb20097e7127be)
同様に、実数の全体を
とする時、
も四則で閉じている。
集合
に限らず、四則で閉じている集合を体という。
特に、集合
を有理数体、集合
を実数体という。
下図に、群環体の定義を示す。
ガロア体
体には、要素数が有限のものもあり、これをガロア体(有限体)といい、要素数がq個であるガロア体をGF(q)で表す。
特に、GF(2)は0と1の要素から成り、加法と乗法の演算は下表のようになる。
GF(2)の加法演算では、1 + 1 = 0となることに注意すること。
また、加法についての単位元は0、乗法についての単位元は1である。
GF(2)の加法演算
+
|
0
|
1
|
0
|
0 |
1
|
1
|
1 |
0
|
GF(2)の乗法演算
×
|
0
|
1
|
0
|
0 |
0
|
1
|
0 |
1
|
多項式
体F上の多項式
体Fの要素を係数とする多項式を、体F上の多項式と呼ぶ。
そして、体F上の多項式間の演算は、実数体上の多項式と同様に行う。
既約多項式
体F上の多項式で、それよりも次数の低い体F上多項式に因数分解できない多項式を既約多項式という。
特に、次数がmである時、m次既約多項式という。
例.1
多項式
は、全ての係数がGF(2)の要素0、1であるから、GF(2)上の多項式である。
![{\displaystyle {\begin{aligned}(1+x+x^{2})+(1+x+x^{3})&=(1+1)+(x+x)+x^{2}+x^{3}\\&=(1+1)+x(1+1)+x^{2}+x^{3}\\&=0+x\times 0+x^{2}+x^{3}\\&=x^{2}+x^{3}\end{aligned}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/728bdb95452053418482134414eb5e26e2e5572a)
![{\displaystyle {\begin{aligned}(1+x^{2})(1+x+x^{3})&=1+x+x^{3}+x^{2}+x^{3}+x^{5}\\&=1+x+x^{2}+(x^{3}+x^{3})+x^{5}\\&=1+x+x^{2}+x^{5}\end{aligned}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/df35becd4d52cf9a1c0824c68d4e82514856c733)
例.2
多項式
と
は、GF(2)上の3次の既約多項式である。
例.3
5次多項式
は、
と因数分解できるため、既約多項式ではない。