「情報理論 - ガロア体」の版間の差分
(→既約多項式) |
(→多項式) |
||
91行目: | 91行目: | ||
例.3<br> | 例.3<br> | ||
5次多項式<math>1 + x + x^2 + x^5</math> は、<math>(1 + x^2)(1 + x + x^3)</math>と因数分解できるため、既約多項式ではない。<br> | 5次多項式<math>1 + x + x^2 + x^5</math> は、<math>(1 + x^2)(1 + x + x^3)</math>と因数分解できるため、既約多項式ではない。<br> | ||
<br> | |||
==== GF(2)の既約多項式の求め方 ==== | |||
m次の既約多項式を求めるには、まず、m次の次数が存在する必要がある。(例. 3次既約多項式ではx<sup>3</sup>、5次既約多項式ではx<sup>5</sup>等)<br> | |||
<br> | |||
<u><math>GF(2) = \{0, 1\}</math> のため、係数は0、 1のいずれかである。</u><br> | |||
もし、係数が2以上の値の時は、係数に<math>\bmod 2</math>を用いて計算する。<br> | |||
<br> | |||
* 1次既約多項式 | |||
GF(2)上の1次既約多項式を求めるには、<math>f(x) = ax + b</math>において、因数分解できないため、1次既約多項式は、<math>x, \quad x + 1</math>の2つである。<br> | |||
<br> | |||
<u>2次以降の既約多項式では、必ず定数項を含むことに注意する。</u><br> | |||
<u>なぜなら、定数項が存在しない場合、<math>f(0) = 0</math>となり、また、f(x)は1次既約多項式xで可約(因数分解)できるからである。</u><br> | |||
<br> | |||
* 2次既約多項式 | |||
2次既約多項式を求めるには、<math>f(x) = x^2 + ax + 1</math>とする時、<math>[\frac{m}{2}] = 1</math> ([]はガウスの記号)だから、<br> | |||
f(x)が1次既約多項式で因数分解できなければよく、かつ、剰余定理から<math>f(0) \ne 0, \quad f(1) \ne 0</math>ならばよい。<br> | |||
<math>f(0) = 1 \ne 0</math><br> | |||
<math>f(1) = 1 + a + 1 = a \ne 0 \quad \mbox{す な わ ち} \quad a = 1</math><br> | |||
したがって、2次既約多項式は、<math>f(x) = x^2 + x + 1</math>となる。<br> | |||
<br> | |||
* 3次既約多項式 | |||
3次既約多項式を求めるには、<math>f(x) = x^3 + ax^2 + bx + 1</math>とする時、<math>[\frac{m}{2}] = 1</math>だから、<br> | |||
f(x)が1次既約多項式で因数分解できなければよく、かつ、剰余定理から<math>f(0) \ne 0, \quad f(1) \ne 0</math>ならばよい。<br> | |||
<math>f(0) = 1 \ne 0</math><br> | |||
<math>f(1) = 1 + a + b + 1 = a + b \ne 0 \quad \mbox{す な わ ち} \quad (a, b) = (1, 0) \quad \mbox{ま た は} \quad (0, 1)</math><br> | |||
したがって、3次既約多項式は、<math>f(x) = x^3 + x^2 + 1, \quad f(x) = x^3 + x + 1</math> の2つとなる。<br> | |||
<br><br> | <br><br> | ||
__FORCETOC__ | __FORCETOC__ | ||
[[カテゴリ:情報理論]] | [[カテゴリ:情報理論]] |
2021年12月6日 (月) 07:37時点における版
概要
誤り検出能力や誤り訂正能力を高めるための基礎的な理論には、体と拡大体の考え方が用いられる。
ここでは、体と拡大体の基本的な考え方を記載する。
体
有理数の全体をとする時、は四則で閉じている。
すなわち、 とすると、以下が成り立つ。
同様に、実数の全体をとする時、も四則で閉じている。
集合に限らず、四則で閉じている集合を体という。
特に、集合を有理数体、集合を実数体という。
下図に、群環体の定義を示す。
ガロア体
体には、要素数が有限のものもあり、これをガロア体(有限体)といい、要素数がq個であるガロア体をGF(q)で表す。
特に、GF(2)は0と1の要素から成り、加法と乗法の演算は下表のようになる。
GF(2)の加法演算では、1 + 1 = 0となることに注意すること。
また、加法についての単位元は0、乗法についての単位元は1である。
+ | 0 | 1 |
---|---|---|
0 | 0 | 1 |
1 | 1 | 0 |
× | 0 | 1 |
---|---|---|
0 | 0 | 0 |
1 | 0 | 1 |
多項式
体F上の多項式
体Fの要素を係数とする多項式を、体F上の多項式と呼ぶ。
そして、体F上の多項式間の演算は、実数体上の多項式と同様に行う。
既約多項式
体F上の多項式で、それよりも次数の低い体F上多項式に因数分解できない多項式を既約多項式という。
特に、次数がmである時、m次既約多項式という。
例.1
多項式は、全ての係数がGF(2)の要素0、1であるから、GF(2)上の多項式である。
例.2
多項式 と は、GF(2)上の3次の既約多項式である。
例.3
5次多項式 は、と因数分解できるため、既約多項式ではない。
GF(2)の既約多項式の求め方
m次の既約多項式を求めるには、まず、m次の次数が存在する必要がある。(例. 3次既約多項式ではx3、5次既約多項式ではx5等)
のため、係数は0、 1のいずれかである。
もし、係数が2以上の値の時は、係数にを用いて計算する。
- 1次既約多項式
GF(2)上の1次既約多項式を求めるには、において、因数分解できないため、1次既約多項式は、の2つである。
2次以降の既約多項式では、必ず定数項を含むことに注意する。
なぜなら、定数項が存在しない場合、となり、また、f(x)は1次既約多項式xで可約(因数分解)できるからである。
- 2次既約多項式
2次既約多項式を求めるには、とする時、 ([]はガウスの記号)だから、
f(x)が1次既約多項式で因数分解できなければよく、かつ、剰余定理からならばよい。
したがって、2次既約多項式は、となる。
- 3次既約多項式
3次既約多項式を求めるには、とする時、だから、
f(x)が1次既約多項式で因数分解できなければよく、かつ、剰余定理からならばよい。
したがって、3次既約多項式は、 の2つとなる。