「トランジスタ - トランジスタの特性」の版間の差分
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== | == 出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性) == | ||
==== 出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)とは ==== | |||
トランジスタの出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)とは、エミッタ接地トランジスタの静特性において、<br> | トランジスタの出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)とは、エミッタ接地トランジスタの静特性において、<br> | ||
あるベース電流I<sub>B</sub>を流している状態で、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>とコレクタ電流I<sub>C</sub>の関係を表した特性のことである。<br> | あるベース電流I<sub>B</sub>を流している状態で、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>とコレクタ電流I<sub>C</sub>の関係を表した特性のことである。<br> | ||
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コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>がある一定値を超えると、コレクタ電流I<sub>C</sub>はコレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>によらず、ベース電流I<sub>B</sub>に依存する値となる。<br> | コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>がある一定値を超えると、コレクタ電流I<sub>C</sub>はコレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>によらず、ベース電流I<sub>B</sub>に依存する値となる。<br> | ||
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==== トランジスタの飽和領域、活性領域、遮断領域について ==== | |||
== トランジスタの飽和領域、活性領域、遮断領域について == | |||
トランジスタの出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)には、3つの領域(飽和領域、活性領域、遮断領域)がある。<br> | トランジスタの出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)には、3つの領域(飽和領域、活性領域、遮断領域)がある。<br> | ||
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次に、3つの領域(飽和領域、活性領域、遮断領域)について順番に記載する。<br> | 次に、3つの領域(飽和領域、活性領域、遮断領域)について順番に記載する。<br> | ||
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==== 飽和領域 ==== | ===== 飽和領域 ===== | ||
飽和領域とは、ベース電流I<sub>B</sub>を大きくしてもコレクタ電流I<sub>C</sub>が増加しない領域であり、出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)の青色の箇所となる。<br> | 飽和領域とは、ベース電流I<sub>B</sub>を大きくしてもコレクタ電流I<sub>C</sub>が増加しない領域であり、出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)の青色の箇所となる。<br> | ||
出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)の見方によって様々な説明方法があるため、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>が小さくてもコレクタ電流I<sub>C</sub>が流れる領域と説明している専門書も存在する。<br> | 出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)の見方によって様々な説明方法があるため、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>が小さくてもコレクタ電流I<sub>C</sub>が流れる領域と説明している専門書も存在する。<br> | ||
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これは、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>を小さくすることで、オン状態における損失(<math>P_{LOSS} = V_{CE} \times I_C</math>)が小さくなるからである。<br> | これは、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>を小さくすることで、オン状態における損失(<math>P_{LOSS} = V_{CE} \times I_C</math>)が小さくなるからである。<br> | ||
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==== 活性領域 ==== | ===== 活性領域 ===== | ||
活性領域とは、ベース電流I<sub>B</sub>が一定ならコレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>によらずコレクタ電流I<sub>C</sub>が一定となる領域であり、出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)の赤色の箇所となる。<br> | 活性領域とは、ベース電流I<sub>B</sub>が一定ならコレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>によらずコレクタ電流I<sub>C</sub>が一定となる領域であり、出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)の赤色の箇所となる。<br> | ||
つまり、活性領域では、コレクタ電流I<sub>C</sub>はコレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>ではなく、ベース電流I<sub>B</sub>で決まる。<br> | つまり、活性領域では、コレクタ電流I<sub>C</sub>はコレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>ではなく、ベース電流I<sub>B</sub>で決まる。<br> | ||
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コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>を大きくしてもコレクタ電流I<sub>C</sub>は大きく変化しないことから、活性領域ではコレクタ抵抗R<sub>C</sub>は非常に大きな値ということになる。<br> | コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>を大きくしてもコレクタ電流I<sub>C</sub>は大きく変化しないことから、活性領域ではコレクタ抵抗R<sub>C</sub>は非常に大きな値ということになる。<br> | ||
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==== 遮断領域 ==== | ===== 遮断領域 ===== | ||
遮断領域とは、ベース電流I<sub>B</sub>が0[A]でもコレクタ電流I<sub>C</sub>が0[A]とならず漏れ電流がわずかに流れる領域であり、出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)の緑色の箇所となる。<br> | 遮断領域とは、ベース電流I<sub>B</sub>が0[A]でもコレクタ電流I<sub>C</sub>が0[A]とならず漏れ電流がわずかに流れる領域であり、出力特性(I<sub>C</sub>-V<sub>CE</sub>特性)の緑色の箇所となる。<br> | ||
この漏れ電流のことを、コレクタ遮断電流I<sub>CEO</sub>と言う。(また、コレクタ遮断電流I<sub>CEO</sub>は、コレクターエミッタ間遮断電流とも呼ばれる)<br> | この漏れ電流のことを、コレクタ遮断電流I<sub>CEO</sub>と言う。(また、コレクタ遮断電流I<sub>CEO</sub>は、コレクターエミッタ間遮断電流とも呼ばれる)<br> | ||
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<u>遮断領域は、コレクタ遮断領域とも呼ばれる。</u><br> | <u>遮断領域は、コレクタ遮断領域とも呼ばれる。</u><br> | ||
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==== その他 : トランジスタの出力アドミタンス ==== | ===== その他 : トランジスタの出力アドミタンス ===== | ||
トランジスタを使用する時、h定数と呼ばれるものを用いることがある。 | トランジスタを使用する時、h定数と呼ばれるものを用いることがある。 | ||
h定数には、出力アドミタンスh<sub>OE</sub>、電流増幅率h<sub>FE</sub>、入力インピーダンスh<sub>IE</sub>、電圧帰還率h<sub>RE</sub>がある。<br> | h定数には、出力アドミタンスh<sub>OE</sub>、電流増幅率h<sub>FE</sub>、入力インピーダンスh<sub>IE</sub>、電圧帰還率h<sub>RE</sub>がある。<br> | ||
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ゲルマニウムを素材としたゲルマニウムトランジスタの場合、ベース-エミッタ間電圧V<sub>BE</sub>が0.2~0.3[V]以上になると、ベース電流I<sub>B</sub>が大きく変化する。<br> | ゲルマニウムを素材としたゲルマニウムトランジスタの場合、ベース-エミッタ間電圧V<sub>BE</sub>が0.2~0.3[V]以上になると、ベース電流I<sub>B</sub>が大きく変化する。<br> | ||
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==== 入力特性(I<sub>B</sub>-V<sub>BE</sub>特性)における温度特性 ==== | ==== 入力特性(I<sub>B</sub>-V<sub>BE</sub>特性)における温度特性 ==== | ||
<u>トランジスタの入力特性(I<sub>B</sub>-V<sub>BE</sub>特性)は、温度によって変化する。</u><br> | <u>トランジスタの入力特性(I<sub>B</sub>-V<sub>BE</sub>特性)は、温度によって変化する。</u><br> | ||
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ベース-エミッタ間電圧V<sub>BE</sub>は約0.6[V]なので、温度が30[℃]変化すると、ベース-エミッタ間電圧VBEが約10[%]も変化する。<br> | ベース-エミッタ間電圧V<sub>BE</sub>は約0.6[V]なので、温度が30[℃]変化すると、ベース-エミッタ間電圧VBEが約10[%]も変化する。<br> | ||
これは、精度を求められる回路では全く無視できない数字となる。<br> | これは、精度を求められる回路では全く無視できない数字となる。<br> | ||
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== 電流伝達特性(I<sub>C</sub>-I<sub>B</sub>特性) == | |||
==== 電流伝達特性(I<sub>C</sub>-I<sub>B</sub>特性)とは ==== | |||
トランジスタの電流伝達特性(I<sub>C</sub>-I<sub>B</sub>特性)とは、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>を一定とした時、コレクタ電流I<sub>C</sub>とベース電流I<sub>B</sub>の関係を表した特性のことである。<br> | |||
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下図のように、コレクタ電流I<sub>C</sub>がある一定値(IC1)を超えるまでベース電流I<sub>B</sub>が増えると、コレクタ電流I<sub>C</sub>は比例して増加するため、特性の形は「線形」になる。<br> | |||
また、その比例定数は 直流電流増幅率h<sub>FE</sub>となるため、式で表すと<br> | |||
<math>I_{C} = h_{FE} \times I_{B}</math><br> | |||
となる。<br> | |||
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直流電流増幅率h<sub>FE</sub>は、一般的に、数十~数百の値なので、ベース電流が10[μA]オーダーで変化すると、コレクタ電流I<sub>C</sub>はmAオーダーで変化する。<br> | |||
一方、コレクタ電流I<sub>C</sub>がある一定値を超えた時、ベース電流I<sub>B</sub>を増やしても、コレクタ電流I<sub>C</sub>が増加しなくなる。<br> | |||
これが、トランジスタの飽和である。<br> | |||
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また、トランジスタのデータシートを見ると、直流電流増幅率h<sub>FE</sub>とコレクタ電流I<sub>C</sub>の関係を表したh<sub>FE</sub>-I<sub>C</sub>特性がある。<br> | |||
下図に、2SC1815の<u>h<sub>FE</sub>-I<sub>C</sub></u>特性を示す。<br> | |||
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この特性より、コレクタ電流I<sub>C</sub>はある一定値までは、直流電流増幅率h<sub>FE</sub>がほぼ一定なので、<math>I_{C} = h_{FE} \times I_{B}</math>より、<br> | |||
ベース電流I<sub>B</sub>とコレクタ電流I<sub>C</sub>は比例関係にある。<br> | |||
しかし、コレクタ電流I<sub>C</sub>がある一定値を超えると、直流電流増幅率h<sub>FE</sub>が減少するため、ベース電流I<sub>B</sub>が増加しても、<math>I_{C} = h_{FE} \times I_{B}</math>より、<br> | |||
コレクタ電流I<sub>C</sub>が増加しなくなる。<br> | |||
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<u>※補足</u><br> | |||
* <u>トランジスタをスイッチとして使用する場合</u> | |||
*: <u>ベース電流I<sub>B</sub>を増やしても、コレクタ電流I<sub>C</sub>が増加しなくなる領域(飽和領域という)を用いる。</u> | |||
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* <u>トランジスタをアンプとして使用する場合</u> | |||
*: <u>ベース電流I<sub>B</sub>とコレクタ電流I<sub>C</sub>は比例関係となる領域(活性領域という)を用いる。</u> | |||
<br> | |||
* <u>その他</u> | |||
*: <u>直流電流増幅率はh<sub>FE</sub>ではなくβ(ベータ)で表すこともある。</u> | |||
*: <u>一方、交流電流増幅率は、小信号電流増幅率h<sub>fe</sub>(<math>= \frac{\Delta I_{c}}{\Delta I_{b}}</math>)で表す。</u> | |||
*: <u>直流電流増幅率h<sub>FE</sub>は同一型番のトランジスタでもバラツキが大きいため、設計の際には注意が必要となる。</u> | |||
*: <br> | |||
*: <u>直流電流増幅率のh<sub>FE</sub>は、Hybrid Forward Emitterの略である。</u> | |||
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== hFE-IC特性 == | |||
==== hFE-IC特性とは ==== | |||
トランジスタのh<sub>FE</sub>-I<sub>C</sub>特性とは、直流電流増幅率h<sub>FE</sub>とコレクタ電流I<sub>C</sub>の関係を表した特性のことである。<br> | |||
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直流電流増幅率h<sub>FE</sub>は、トランジスタのベース電流I<sub>B</sub>とコレクタ電流I<sub>C</sub>の比率であり、以下の式で表される。<br> | |||
<math>h_{FE} = \frac{I_{C}}{I_{B}}</math><br> | |||
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直流電流増幅率h<sub>FE</sub>の値は様々であり、一般的な値は100~500程度で、小さいものだと10程度、大きいものでは1000程度のものもある。<br> | |||
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例えば、直流電流増幅率h<sub>FE</sub>が100のトランジスタの場合、100[mA]のコレクタ電流I<sub>C</sub>を流すには1[mA]のベース電流I<sub>B</sub>が必要ということになる。<br> | |||
言い換えると、わずか1[mA]のベース電流IBの変化で100[mA]もコレクタ電流I<sub>C</sub>を制御できるのがトランジスタの特徴である。<br> | |||
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また、トランジスタのh<sub>FE</sub>-I<sub>C</sub>特性は、温度とコレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>によって変化する。<br> | |||
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次のセクションに、この温度特性について記載する。<br> | |||
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==== h<sub>FE</sub>-I<sub>C</sub>特性の温度特性 ==== | |||
h<sub>FE</sub>-I<sub>C</sub>特性は、トランジスタのデータシートに記載されている。<br> | |||
下図は、2SC1815のh<sub>FE</sub>-I<sub>C</sub>特性である。<br> | |||
温度やコレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>を振った時の特性が記載されている。<br> | |||
(温度を100[℃]、25[℃]、-25[℃]と振った時と、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>を1[V]、5[V]と振った時のh<sub>FE</sub>-I<sub>C</sub>特性となっている)<br> | |||
[[ファイル:ErectricParts Transistor Characteristic 9.jpg|フレームなし|中央]] | |||
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直流電流増幅率h<sub>FE</sub>は、温度によって大きく変化し、温度が高いほど直流電流増幅率h<sub>FE</sub>は大きくなる。<br> | |||
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例として、コレクタ電流I<sub>C</sub>が10[mA]の箇所を見ると、<br> | |||
温度が25[℃]の時の直流電流増幅率h<sub>FE</sub>は150であるが、温度が-25[℃]の時の直流電流増幅率h<sub>FE</sub>は100となっている。<br> | |||
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そのため、トランジスタが動作するギリギリの設計をした場合、高温の時は動作して、低温の時は動作しないことが起きるので注意すること。<br> | |||
低温の環境で動作させる場合は、直流電流増幅率h<sub>FE</sub>が低下しても問題が生じないような工夫が必要となる。<br> | |||
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==== h<sub>FE</sub>-I<sub>C</sub>特性のコレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>特性 ==== | |||
直流電流増幅率h<sub>FE</sub>は、コレクタ電流I<sub>C</sub>とコレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>の値によって変化する。<br> | |||
<br> | |||
下図は、2SC1815のh<sub>FE</sub>-I<sub>C</sub>特性である。<br> | |||
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温度が25[℃]の時の特性を見ると、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>が5[V]の時(実線の時)は、<br> | |||
コレクタ電流I<sub>C</sub>が100[mA]になるまで直流電流増幅率h<sub>FE</sub>は低下していない。<br> | |||
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一方、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>が1[V]の時(点線の時)は、<br> | |||
コレクタ電流I<sub>C</sub>が30[mA]以上になると直流電流増幅率h<sub>FE</sub>が低下していることがわかる。<br> | |||
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すなわち、コレクタ-エミッタ間電圧V<sub>CE</sub>に余裕が無いと、直流電流増幅率h<sub>FE</sub>を一定に維持できなくなるのである。<br> | |||
[[ファイル:ErectricParts Transistor Characteristic 10.jpg|フレームなし|中央]] | |||
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==== その他 : 直流電流増幅率h<sub>FE</sub>のばらつき ==== | |||
トランジスタを製造すると、様々な値の直流電流増幅率hFEのものができてしまう。<br> | |||
そのため、メーカーでは、直流電流増幅率hFEを測定・分類して、分類コードを印字して出荷している。<br> | |||
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下図は、2SC1815の電気的特性である。<br> | |||
直流電流増幅率hFEが、O:70~140、Y:120~240、GR:200~400、BL:350~700と分類されていることが分かる。<br> | |||
[[ファイル:ErectricParts Transistor Characteristic 11.jpg|フレームなし|中央]] | |||
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ちなみに、OはOrange、YはYellow、GRはGreen、BLはBlueの頭文字を示している。<br> | |||
抵抗器のカラーコードにおいて、3=Orange、4=Yellow、5=Green、6=Blueであり、その順番と同じ順序となっている。<br> | |||
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2020年9月26日 (土) 01:37時点における最新版
概要
ここでは、以下に示すトランジスタの特性について記載する。
- 出力特性(IC-VCE特性)と飽和領域、活性領域、遮断領域
- 入力特性(IB-VBE特性)
- IC-VBE特性
- 電流伝達特性(IC-IB特性)
- hFE-IC特性
出力特性(IC-VCE特性)
出力特性(IC-VCE特性)とは
トランジスタの出力特性(IC-VCE特性)とは、エミッタ接地トランジスタの静特性において、
あるベース電流IBを流している状態で、コレクタ-エミッタ間電圧VCEとコレクタ電流ICの関係を表した特性のことである。
コレクタ-エミッタ間電圧VCEがある一定値を超えるまでは、コレクタ-エミッタ間電圧VCEが増加するとコレクタ電流ICが増加するが、
コレクタ-エミッタ間電圧VCEがある一定値を超えると、コレクタ電流ICはコレクタ-エミッタ間電圧VCEによらず、ベース電流IBに依存する値となる。
トランジスタの飽和領域、活性領域、遮断領域について
トランジスタの出力特性(IC-VCE特性)には、3つの領域(飽和領域、活性領域、遮断領域)がある。
トランジスタをスイッチとして使用する場合は、飽和領域(スイッチがオンの状態)と遮断領域(スイッチがオフの状態)を利用する。
トランジスタをアンプとして使用する場合は、活性領域を利用する。
次に、3つの領域(飽和領域、活性領域、遮断領域)について順番に記載する。
飽和領域
飽和領域とは、ベース電流IBを大きくしてもコレクタ電流ICが増加しない領域であり、出力特性(IC-VCE特性)の青色の箇所となる。
出力特性(IC-VCE特性)の見方によって様々な説明方法があるため、コレクタ-エミッタ間電圧VCEが小さくてもコレクタ電流ICが流れる領域と説明している専門書も存在する。
トランジスタをスイッチとして使用する場合、スイッチをオン状態にするためには、ベース電流を多く流してコレクタ-エミッタ間電圧VCEが最小電圧となる箇所を使用する。
(この最小電圧のことをコレクタ飽和電圧VCE(sat)と呼び、コレクタ飽和電圧VCE(sat)はデータシートに記載されている)
これは、コレクタ-エミッタ間電圧VCEを小さくすることで、オン状態における損失()が小さくなるからである。
活性領域
活性領域とは、ベース電流IBが一定ならコレクタ-エミッタ間電圧VCEによらずコレクタ電流ICが一定となる領域であり、出力特性(IC-VCE特性)の赤色の箇所となる。
つまり、活性領域では、コレクタ電流ICはコレクタ-エミッタ間電圧VCEではなく、ベース電流IBで決まる。
トランジスタをアンプとして使用する場合、この活性領域を利用する。
また、活性領域では、コレクタ-エミッタ間電圧VCEによらずコレクタ電流ICが一定となるため、一定の電流を流す電流源としても利用される。
出力特性(IC-VCE特性)の傾きがコレクタ抵抗RCとなる。
コレクタ抵抗RCは、下式で表される。
コレクタ-エミッタ間電圧VCEを大きくしてもコレクタ電流ICは大きく変化しないことから、活性領域ではコレクタ抵抗RCは非常に大きな値ということになる。
遮断領域
遮断領域とは、ベース電流IBが0[A]でもコレクタ電流ICが0[A]とならず漏れ電流がわずかに流れる領域であり、出力特性(IC-VCE特性)の緑色の箇所となる。
この漏れ電流のことを、コレクタ遮断電流ICEOと言う。(また、コレクタ遮断電流ICEOは、コレクターエミッタ間遮断電流とも呼ばれる)
コレクタ遮断電流ICEOの値が小さければ小さいほど特性の良いトランジスタである。
なお、コレクタ遮断電流ICEOはデータシートには最大値のみが記載されている。
※補足
遮断領域では、トランジスタをスイッチとして使用する場合、トランジスタのスイッチがオフの状態である。
遮断領域は、コレクタ遮断領域とも呼ばれる。
その他 : トランジスタの出力アドミタンス
トランジスタを使用する時、h定数と呼ばれるものを用いることがある。
h定数には、出力アドミタンスhOE、電流増幅率hFE、入力インピーダンスhIE、電圧帰還率hREがある。
ここで、出力特性(IC-VCE特性)と関係があるのは、出力アドミタンスhOEである。
出力アドミタンスhOEとは、出力特性(IC-VCE特性)の曲線の傾きのことであり、コレクタ-エミッタ間電圧VCEの変化に対するコレクタ電流ICの変化の逆数で、下式となる。
なお、単位はS(ジーメンス)である。
入力特性(IB-VBE特性)
入力特性(IB-VBE特性)とは
トランジスタの入力特性(IB-VBE特性)とは、コレクタ-エミッタ間電圧VCEを一定とした時における、
ベース電流IBとベース-エミッタ間電圧VBEの特性のことである。
ベースとエミッタ間はPN接合となるため、ダイオードの順方向電圧特性(IF-VF特性)と同じになる。
シリコンを素材としたシリコントランジスタの場合、ベース-エミッタ間電圧VBEが0.6~0.8[V]以上になると、ベース電流IBが大きく変化する。
ゲルマニウムを素材としたゲルマニウムトランジスタの場合、ベース-エミッタ間電圧VBEが0.2~0.3[V]以上になると、ベース電流IBが大きく変化する。
入力特性(IB-VBE特性)における温度特性
トランジスタの入力特性(IB-VBE特性)は、温度によって変化する。
データシート上には、温度が-55[℃]、-40[℃]、-25[℃]、25[℃]、100[℃]など異なる温度の時のIB-VBE特性が記載されている。
入力特性(IB-VBE特性)において、温度が高くなると特性は左側にシフトする。
すなわち、温度が高くなると、同じベース電流IBを流すために必要なベース-エミッタ間電圧VBEが減少する。
下図は、東芝製2SC1815の入力特性(IB-VBE特性)である。
コレクタ-エミッタ間電圧VCEが6[V]、温度が-25[℃]、25[℃]、100[℃]の時の特性が記載されており、温度が高くなると特性は左側にシフトしていることが分かる。
IC-VBE特性
IC-VBE特性とは
IC-VBE特性とは、エミッタ接地トランジスタの静特性で、コレクタ電流ICとベース-エミッタ間電圧VBEの関係を表した特性である。
IC-VBE特性は、ベース電流IBとベース-エミッタ間電圧VBEの関係を表したVBE-IB特性と同じ形であり、
コレクタ電流ICは、ベース電流IBのhFE倍となる。
※補足
ベース-エミッタ間電圧VBEとは、トランジスタのベース-エミッタ間に生じる電圧のことである。
ベース-エミッタ間電圧VBEはベース電流依存性を持っており、ベース電流IBが多いほどベース-エミッタ間電圧VBEが高くなる。
ベース-エミッタ間電圧VBEがある電圧を超えると、コレクタ電流ICが流れ始める。
この時、コレクタ電流ICは、ベース-エミッタ間電圧VBEの増加に対して、指数eのべき乗の関数で増加する。
ここで、ISはトランジスタの品種によって決まる逆方向飽和電流[A]、qは電子の電荷[C]、kはボルツマン定数、Tは絶対温度[K]、
VBEはベース-エミッタ間電圧、VT(=q/kT)は半導体の物性で求まり27[℃](300[K])において約26[mV]となる。
IC-VBE特性の温度特性
IC-VBE特性は温度によって変化する。
データシート上には、温度が-55[℃]、-40[℃]、-25[℃]、25[℃]、100[℃]、125[℃]等の異なる温度の時のIC-VBE特性が記載されている。
IC-VBE特性は、温度が高くなると、特性は左側にシフトする。
すなわち、温度が高くなると、同じコレクタ電流ICを流すために必要なベース-エミッタ間電圧VBEが減少する。
また、ベース-エミッタ間電圧VBEが一定の時は、温度が高いほどコレクタ電流ICが流れる。
一般的に、ベース-エミッタ間電圧VBEは1[℃]が上がると、約2[mV]が下がると言われている。(-2[mV]/[℃])
例えば、温度が30[℃]変化すると、ベース-エミッタ間電圧VBEが60[mV]変化する。
ベース-エミッタ間電圧VBEは約0.6[V]なので、温度が30[℃]変化すると、ベース-エミッタ間電圧VBEが約10[%]も変化する。
これは、精度を求められる回路では全く無視できない数字となる。
電流伝達特性(IC-IB特性)
電流伝達特性(IC-IB特性)とは
トランジスタの電流伝達特性(IC-IB特性)とは、コレクタ-エミッタ間電圧VCEを一定とした時、コレクタ電流ICとベース電流IBの関係を表した特性のことである。
下図のように、コレクタ電流ICがある一定値(IC1)を超えるまでベース電流IBが増えると、コレクタ電流ICは比例して増加するため、特性の形は「線形」になる。
また、その比例定数は 直流電流増幅率hFEとなるため、式で表すと
となる。
直流電流増幅率hFEは、一般的に、数十~数百の値なので、ベース電流が10[μA]オーダーで変化すると、コレクタ電流ICはmAオーダーで変化する。
一方、コレクタ電流ICがある一定値を超えた時、ベース電流IBを増やしても、コレクタ電流ICが増加しなくなる。
これが、トランジスタの飽和である。
また、トランジスタのデータシートを見ると、直流電流増幅率hFEとコレクタ電流ICの関係を表したhFE-IC特性がある。
下図に、2SC1815のhFE-IC特性を示す。
この特性より、コレクタ電流ICはある一定値までは、直流電流増幅率hFEがほぼ一定なので、より、
ベース電流IBとコレクタ電流ICは比例関係にある。
しかし、コレクタ電流ICがある一定値を超えると、直流電流増幅率hFEが減少するため、ベース電流IBが増加しても、より、
コレクタ電流ICが増加しなくなる。
※補足
- トランジスタをスイッチとして使用する場合
- ベース電流IBを増やしても、コレクタ電流ICが増加しなくなる領域(飽和領域という)を用いる。
- トランジスタをアンプとして使用する場合
- ベース電流IBとコレクタ電流ICは比例関係となる領域(活性領域という)を用いる。
- その他
- 直流電流増幅率はhFEではなくβ(ベータ)で表すこともある。
- 一方、交流電流増幅率は、小信号電流増幅率hfe()で表す。
- 直流電流増幅率hFEは同一型番のトランジスタでもバラツキが大きいため、設計の際には注意が必要となる。
- 直流電流増幅率のhFEは、Hybrid Forward Emitterの略である。
hFE-IC特性
hFE-IC特性とは
トランジスタのhFE-IC特性とは、直流電流増幅率hFEとコレクタ電流ICの関係を表した特性のことである。
直流電流増幅率hFEは、トランジスタのベース電流IBとコレクタ電流ICの比率であり、以下の式で表される。
直流電流増幅率hFEの値は様々であり、一般的な値は100~500程度で、小さいものだと10程度、大きいものでは1000程度のものもある。
例えば、直流電流増幅率hFEが100のトランジスタの場合、100[mA]のコレクタ電流ICを流すには1[mA]のベース電流IBが必要ということになる。
言い換えると、わずか1[mA]のベース電流IBの変化で100[mA]もコレクタ電流ICを制御できるのがトランジスタの特徴である。
また、トランジスタのhFE-IC特性は、温度とコレクタ-エミッタ間電圧VCEによって変化する。
次のセクションに、この温度特性について記載する。
hFE-IC特性の温度特性
hFE-IC特性は、トランジスタのデータシートに記載されている。
下図は、2SC1815のhFE-IC特性である。
温度やコレクタ-エミッタ間電圧VCEを振った時の特性が記載されている。
(温度を100[℃]、25[℃]、-25[℃]と振った時と、コレクタ-エミッタ間電圧VCEを1[V]、5[V]と振った時のhFE-IC特性となっている)
直流電流増幅率hFEは、温度によって大きく変化し、温度が高いほど直流電流増幅率hFEは大きくなる。
例として、コレクタ電流ICが10[mA]の箇所を見ると、
温度が25[℃]の時の直流電流増幅率hFEは150であるが、温度が-25[℃]の時の直流電流増幅率hFEは100となっている。
そのため、トランジスタが動作するギリギリの設計をした場合、高温の時は動作して、低温の時は動作しないことが起きるので注意すること。
低温の環境で動作させる場合は、直流電流増幅率hFEが低下しても問題が生じないような工夫が必要となる。
hFE-IC特性のコレクタ-エミッタ間電圧VCE特性
直流電流増幅率hFEは、コレクタ電流ICとコレクタ-エミッタ間電圧VCEの値によって変化する。
下図は、2SC1815のhFE-IC特性である。
温度が25[℃]の時の特性を見ると、コレクタ-エミッタ間電圧VCEが5[V]の時(実線の時)は、
コレクタ電流ICが100[mA]になるまで直流電流増幅率hFEは低下していない。
一方、コレクタ-エミッタ間電圧VCEが1[V]の時(点線の時)は、
コレクタ電流ICが30[mA]以上になると直流電流増幅率hFEが低下していることがわかる。
すなわち、コレクタ-エミッタ間電圧VCEに余裕が無いと、直流電流増幅率hFEを一定に維持できなくなるのである。
その他 : 直流電流増幅率hFEのばらつき
トランジスタを製造すると、様々な値の直流電流増幅率hFEのものができてしまう。
そのため、メーカーでは、直流電流増幅率hFEを測定・分類して、分類コードを印字して出荷している。
下図は、2SC1815の電気的特性である。
直流電流増幅率hFEが、O:70~140、Y:120~240、GR:200~400、BL:350~700と分類されていることが分かる。
ちなみに、OはOrange、YはYellow、GRはGreen、BLはBlueの頭文字を示している。
抵抗器のカラーコードにおいて、3=Orange、4=Yellow、5=Green、6=Blueであり、その順番と同じ順序となっている。