「トランジスタ - トランジスタの種類と特徴」の版間の差分
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2020年8月30日 (日) 04:31時点における版
概要
トランジスタは、バイポーラトランジスタ(BJT)、電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)の3つの種類がある。
バイポーラトランジスタ(BJT)は、NPN型とPNP型に分類される。
電界効果トランジスタ(FET)は、接合型FET(JFET)と金属酸化膜半導体FET(MOSFET)に分類される。
接合型FET(JFET)は、Nチャネル型とPチャネル型に分類される。
金属酸化膜半導体FET(MOSFET)は、エンハンスメント形とデプレッション形があり、それぞれ、Nチャネル型とPチャネル型に分類される。
絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)は、Nチャネル型とPチャネル型に分類される。
トランジスタの種類を下図に示す。
※補足
バイポーラトランジスタには、派生型として抵抗を内臓した抵抗内蔵型トランジスタ(デジタルトランジスタ)というものが存在する。
バイポーラトランジスタ(BJT)、MOSFET、IGBTの特徴
バイポーラトランジスタ(BJT)、金属酸化膜半導体FET(MOSFET)、絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)の特徴を下図に示す。
バイポーラトランジスタ(BJT)は、電流駆動であるが、金属酸化膜半導体FET(MOSFET)、絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)は電圧駆動である。
また、スイッチング速度は、バイポーラトランジスタ(BJT)が低速、金属酸化膜半導体FET(MOSFET)は高速である。
絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)は比較的に高速であるが、MOSFETよりも劣っており、これがIGBTの欠点となっている。
バイポーラトランジスタ(BJT)
バイポーラトランジスタ(BJT)とは
バイポーラトランジスタ(BJT)はNPN型とPNP型の2種類ある。
N形半導体とP形半導体をNPNの順番に接合したものがNPN型、PNPの順番に接合したものがPNP型となる。
バイポーラトランジスタは電流制御素子である。
ベース端子に流れるベース電流IBによって、コレクタ-エミッタ間に流れるコレクタ電流ICを制御する。
※補足
電子の移動度は正孔の移動度よりも大きいため、一般的に、NPNトランジスタの方が多く使用されている。
NPNトランジスタ
NPNトランジスタは2つのN型半導体で構成され、P型半導体の薄層によって分離されているバイポーラトランジスタである。
ベース端子にベース電流IBが流れると、コレクタからエミッタに大きなコレクタ電流ICが流れる。
また、NPNトランジスタの多数キャリアは電子であり、少数キャリアは正孔となる。
NPNトランジスタの動作原理
- エミッタに対してベースに正電圧を印加すると、ベースとエミッタのPN接合に順電圧が加わり、ベースからエミッタに向かってベース電流IBが流れる。
(ベースに電流が流れるということは、電子がエミッタからベースに向かって移動する) - しかし、P型半導体の部分は構造的に薄く作られているので、P型半導体に流入してきた電子の多くがコレクタに抜け出す。
- その後、コレクタ-エミッタ間電圧VCEによって電子が誘導されてコレクタ方向に移動する。
(電子がコレクタ方向に移動するということは、コレクタからエミッタに向かってコレクタ電流ICが流れる)
PNPトランジスタ
PNPトランジスタは2つのP型半導体で構成され、N型半導体の薄層によって分離されているバイポーラトランジスタである。
ベース端子にベース電流IBが流れると、エミッタからコレクタに大きなコレクタ電流ICが流れる。
また、PNPトランジスタの多数キャリアは正孔であり、少数キャリアは電子となる。
PNPトランジスタの動作原理については、NPNトランジスタの動作原理と同様に考えればよいため省略する。
抵抗内蔵型トランジスタ
バイポーラトランジスタの派生として、抵抗を内臓した抵抗内蔵型トランジスタ(Bias Resistor Built-in Transistor:BRT)がある。
抵抗内蔵型トランジスタは、デジタルトランジスタ(デジトラ)と呼ばれることもある。
デジタルトランジスタではベース抵抗RBのことを入力抵抗R1、ベース-エミッタ間の抵抗RBEのことを入力抵抗R2と表す。
バイポーラトランジスタをスイッチ用途として使用する場合、ベース抵抗RBとベース-エミッタ間の抵抗RBEを接続して、
入力電圧VINをHighまたはLowと切り替えることで、バイポーラトランジスタをON/OFF制御する。
デジタルトランジスタには、このベース抵抗RBとベースエミッタ間の抵抗RBEが内蔵されているので、入力電圧VINを印可するだけで、ON/OFF制御することができる。
入力抵抗R1とR2の抵抗比率(R2/R1)により、トランジスタが動作する電圧(入力オン電圧)とトランジスタがオフする電圧(入力オフ電圧)を変えることができる。
バイポーラトランジスタに抵抗を内蔵しているため、主に以下の5つのメリットがある。
- 実装面積の削減
- 実装時間の削減
- 実装費の削減
- 部品点数の削減
- トランジスタ単体コストの削減
デジタルトランジスタは、大きく分けて4種類ある。
また、入力抵抗(ベース-エミッタ間の抵抗)R2が接続されているものと接続されていないものが存在する。
絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)
絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)とは
絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)は、Nチャネル型とPチャネル型の2種類ある。
絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)には、ゲート、コレクタ、エミッタの3つの端子がある。
ゲートは金属酸化膜半導体FET(MOSFET)と同じで、コレクタとエミッタはバイポーラトランジスタ(BJT)と同じになっている。
また、絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)は、電圧制御素子である。ゲート端子の印加電圧によって、コレクタ-エミッタ間に流れるコレクタ電流ICを制御する。
※補足
絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)は、Insulated Gate Bipolar Transistorの略である。
IGBTは、MOSFETとバイポーラトランジスタを複合化することで、MOSFETとバイポーラトランジスタの良い面を利用するために開発されたトランジスタである。
MOSFETと同様にゲートが絶縁されており、電圧制御形のデバイスである。
MOSFETの高速動作が可能という点と、バイポーラデバイスの高耐圧でも低オン抵抗という特徴を持っている。
Nチャネル型IGBT
Nチャネル型IGBTは、エミッタがN型半導体、コレクタがP型半導体の絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)である。
エミッタに対して、ゲート端子に正電圧を印加すると、コレクタからエミッタにコレクタ電流ICが流れる。
Nチャネル型IGBTの動作原理
- ゲート-エミッタ間に正電圧が印加されていない状態
- コレクタ-エミッタ間電圧VCEを印加しても、NPN構造があるため、コレクタからエミッタにコレクタ電流ICが流れない。
- エミッタに対して、ゲート端子に正電圧を印加している状態
- ゲートの絶縁膜直下にP型半導体内の電子が引き寄せられ、電子よるNチャネル領域が形成される。
- その結果、コレクタ-エミッタ間はPN接続となるため、コレクタからエミッタにコレクタ電流ICが流れる。
NチャネルMOSFET(エンハンスメント形)では、N型半導体のソースとN型半導体のドレインの間で電流が流れるのに対して、
Nチャネル型IGBTでは、P形半導体のコレクタからN形半導体のエミッタに電流が流れる構造となっている。
Pチャネル型IGBT
Pチャネル型IGBTは、エミッタがP型半導体、コレクタがN型半導体の絶縁ゲートトランジスタ(IGBT)である。
エミッタに対して、ゲート端子に負電圧を印加すると、エミッタからコレクタにコレクタ電流ICが流れる。
Pチャネル型IGBTの動作原理については、Nチャネル型IGBTの動作原理と同様に考えればよいため、省略する。