「電子部品 - コンデンサ」の版間の差分
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アルミ電解コンデンサと同じ有極性で、故障した場合は導通(ショート)モードになる恐れがあるので、回路設計には注意が必要である。<br> | アルミ電解コンデンサと同じ有極性で、故障した場合は導通(ショート)モードになる恐れがあるので、回路設計には注意が必要である。<br> |
2020年8月19日 (水) 21:27時点における版
概要
コンデンサには、電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサなど様々な種類がある。
さらに細かく分類すると、電解コンデンサでは、アルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサ等、
フィルムコンデンサではPETフィルムコンデンサやPPフィルムコンデンサ等が存在する。
コンデンサは、電源の安定やノイズ(瞬間的な大電圧)の吸収等の用途がある。
コンデンサは用途によって、様々な種類を使い分ける必要があり、その特性は誘電体によって決まる。
つまり、コンデンサの種類の違いは誘電体の違いでもある。
次に、コンデンサの種類を記載する。
コンデンサの種類
以下に、コンデンサの有名な種類について記載する。
コンデンサにおいて有名なものは、電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ、スーパーキャパシタとなる。
この4種類のコンデンサの特徴と長所と短所をまとめた図を以下に示す。
以下にコンデンサの分類図を示す。
以下のセクションでは、各種類について詳しく説明する。
固定コンデンサと可変コンデンサ
コンデンサは容量が固定の固定コンデンサと容量が可変の可変コンデンサに分類される。
後ほど詳しく記載するが、電解コンデンサやフィルムコンデンサ等は固定コンデンサとなる。
一方、可変コンデンサには、印可電圧によって静電容量を変えるもの(電圧調整コンデンサ)やドライバ等を用いて機械的に静電容量を変えるもの(トリマーコンデンサ等)がある。
可変コンデンサの種類をまとめると下図のようになる。
有極性コンデンサ
固定コンデンサは大きく、有極性コンデンサと無極性コンデンサに分類される。
有極性コンデンサは2つの端子のうち正極側が決まっているコンデンサである。
電解コンデンサ、スーパーキャパシタ等が有極性コンデンサとなる。
電解コンデンサ
電解コンデンサは、電解質に誘電体として酸化アルミニウムを用いている。
電解質には、液体である液体電解質と固体である固体電解質がある。(液体電解質の電解コンデンサで最も有名なのが湿式アルミ電解コンデンサである)
他のコンデンサに比べて大容量という特徴があり、電源部に多く使用される。
有極性で使い方を間違えるとあっという間に故障してしまう可能性があり、周波数特性や温度特性が悪いという欠点もある。
回路設計では、アルミ電界コンデンサの電流、電圧、温度、実装などの検証が重要である。
- 電解コンデンサの主な特徴
- 耐圧と容量の品種が豊富
- 安価
- 寿命がある
- サイズが大きい
- 極性がある
- 電解コンデンサの主な用途
- 平滑用
- デカップリング用
タンタル電界コンデンサ
タンタルコンデンサは、誘電体として五酸化タンタルを用いている。周波数特性と温度特性が良く、比較的大きい容量を持っている。
アルミ電解コンデンサと同じ有極性で、故障した場合は導通(ショート)モードになる恐れがあるので、回路設計には注意が必要である。
電解コンデンサの故障モードと原因
スーパーキャパシタ
スーパーキャパシタとは
スーパーキャパシタは、数10[mF]以上の非常に大きな静電容量があるため、メモリ等のバックアップなどに使用されるコンデンサである。(ウルトラキャパシタとも呼ばれる)
このスーパーキャパシタは大きく電気二重層キャパシタ(EDLC)、擬似キャパシタ(シュードキャパシタ、レドックスキャパシタ)、ハイブリッドキャパシタに分類される。
この中で最も有名なのが、電気二重層キャパシタ(EDLC)である。
電気二重層キャパシタ
電気二重層キャパシタ(EDLC:Electrical Double Layer Capacitor)は、誘電体を持っていないコンデンサである。外観は電解コンデンサと似ている。
(電解コンデンサは電解液、セラミックコンデンサはセラミックが誘電体である)
固体(活性炭電極)と液体(電解液)の界面に形成される電気二重層(Electrical Double Layer)を誘電体の代わりとして使用している。
この電気二重層キャパシタは、アルミ電解コンデンサと二次電池(バッテリ)の中間的な特徴を持つコンデンサである。
容量密度はアルミ電解コンデンサの1000~10000倍以上、二次電池の程度となっている。
また、二次電池(バッテリ)の欠点である充放電回数の制限が無いため、メンテナンスフリーというメリットがある。
二次電池(バッテリ)は化学反応によって電荷を蓄えている。
一方、電気二重層キャパシタは電解液に浸した活性炭電極の表面にイオンを吸着させて、電気二重層(Electric Double Layer)を形成することで電荷を蓄えている。
そのため、バッテリは充電に数時間を要するが、電気二重層キャパシタは数秒で充電が終わる。(急速充放電に優れている)
なお、電気二重層コンデンサの充放電は、正極と負極の活性炭の電極表面のイオンの吸着と脱着を利用している。
また、二次電池(バッテリ)は回収・廃棄・関税の規制があるが、電気二重層キャパシタにはそれが無い。
- スーパーキャパシタの主な特徴
- 容量が桁外れに大きい
- 充放電回数に制限がない
- サイズが大きい
- 極性がある
- スーパーキャパシタの主な用途
- ICメモリのデータ保護用
- バックアップ用電源
- モータ起動時の電力のアシスト
- 供給用電源
擬似キャパシタ(シュードキャパシタ、レドックスキャパシタ)
電気二重層キャパシタ(EDLC)に近い蓄電デバイスであり、ファラデー反応を利用したキャパシタである。
擬似コンデンサは、電極と電解質間の電子電荷移動により電気エネルギーをファラデー的に蓄積しており、
急速充放電可能大容量なエネルギー蓄積デバイスとして次世代のエネルギー源として期待されています。
ハイブリッドキャパシタ(Hybrid Capacitor)
2つの電極のうち、片方の電極が電気二重層を使用し、他方の電極がレドックス反応(酸化還元反応)を使用したキャパシタである。
ハイブリッドキャパシタの例に、Liイオンキャパシタ(リチウムイオンキャパシタ)がある。
リチウムイオンキャパシタは陽極が電気二重層、陰極がLiイオン二次電池の構造をしている。
無極性コンデンサ
セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサは、誘電体としてセラミック(チタン酸バリウム等)を用いたコンデンサである。
誘電率の大きさや高周波特性が良いという特徴がある。
セラミックコンデンサは、誘電体に使用するセラミックの種類によって、低誘電率系(種類1、Class I)、高誘電率系(種類2、Class II)、半導体系(種類3、Class III)に分類される。
回路上では、低誘電率系と高誘電率系を主に使用する。
主な用途として、平滑回路、バイパス回路、デガップリング回路等がある。
- セラミックコンデンサの主な特徴
- 極性がない。
- 高周波特性が良い。(ESRが低い)
- 高耐熱
- 長寿命
- 印可電圧によって容量が変化する特性(DCバイアス特性)を持っている。
DCバイアス特性は誘電率が大きいものほど顕著に現れる。 - 温度によって静電容量が大きく変化する。
- 高周波による振動で音鳴りが発生する。
- 温度/機械的衝撃によりクラック、割れ、欠けが発生しやすい。
- セラミックコンデンサの主な用途
- 平滑用
- カップリング用
- デカップリング用
- 高周波回路
フィルムコンデンサ
フィルムコンデンサは、誘電体としてプラスチックフィルムを用いている。
フィルムコンデンサは、周波数特性(低ESR)と温度特性が良い特徴がある。
誘電体の材料として、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等がある。
セラミックコンデンサと比較すると、耐電圧や容量の箇所、高性能/高精度用途でフィルムコンデンサを使用する。
フィルムコンデンサは、高性能だが高価な部品のため、回路設計の際には本当に必要かどうかを見極める必要がある。
※備考
ESR(Equivalent Series Resistance)とは、等価直列抵抗のことであり、コンデンサに使われる誘電体の損失による抵抗を指している。
- フィルムコンデンサの主な特徴
- 極性がない。
- 高周波特性が良い。(ESRが低い)
- 誘電損失が低い。
- 絶縁性能が良い。
- 温度特性が良い。(温度によって静電容量の変化が小さい)
- 静電容量の高精度対応が可能。
- 長寿命
- 形状が大きい。
- 高価
- フィルムコンデンサの主な用途
- 電源ノイズの吸収用(ノイズフィルタ)
- 放電回路用
- 共振用
その他のコンデンサ
マイカコンデンサ
マイカコンデンサは、天然絶縁体である雲母(うんも)を誘電体に使用しているコンデンサである。
天然材料を使用しているため、コストが高いのが欠点である。
ただし、精度が良く、高寿命、高安定なので、測定器など限られた分野で使用されている。
- マイカコンデンサの主な特徴
- 容量温度係数が小さく一定で容量の精度も良い
- 静電正接・誘電体損失が非常に小さい
- 高周波特性が良い
- 鉱物を誘電体に使用しているため、高温でも使用可能
- 厚さを薄くできないため、大きい
- 高価
空気コンデンサ
空気コンデンサは、空気を誘電体に使用しているコンデンサである。(絶縁状態にある2つの導体が向き合えば、コンデンサが形成される)
エアギャップで分離された2つの導電性プレートで構成されている。
空気コンデンサには、容量が固定の固定空気コンデンサと容量が可変の可変空気コンデンサがある。
固定空気コンデンサはほとんど使用されていない。
可変空気コンデンサは、構造が単純なため、頻繁に使用される。また、可変空気コンデンサは、エアバリコン(Airvaricon)とも呼ばれている。
ガラスコンデンサ
ガラスコンデンサは、高周波回路において性能が必要な場合に使用される。
ガラスコンデンサの容量値は比較的低く、容量の範囲は、数[pF]~数千[pF]である。
ガラスコンデンサは、他の種類のコンデンサと比較するとコストが高い。
無極性電解コンデンサ(BPコンデンサ、NPコンデンサ)
陽極側、陰極側の双方に酸化皮膜を形成したコンデンサである。
両極性コンデンサには電解コンデンサの表面にB.P.またはN.P.の表示がある。
なお、B.P.は両極性を表すBi-Polarizedの頭文字で、N.P.は無極性を表すNon-Polarizedの頭文字である。
オイルコンデンサ
オイルコンデンサは、絶縁油を含浸した紙を誘電体に使用しているコンデンサである。
真空管を使用したオーディオアンプやギターアンプ等で使用されている。
コンデンサの容量の読み方と許容差(誤差)の記号
コンデンサの静電容量の読み方
コンデンサの静電容量は、一般的には数字3桁で表す。
また、後述するが、許容差はアルファベット1文字で表す。
静電容量の読み方は、以下の3つの場合で読み方が異なる。
- 静電容量が100pF以上の場合
- 最初の1桁目が第1数字、2桁目が第2数字、3桁目が乗数(10のN乗)を表す。
- 例えば、"473"の場合、となる。
- 静電容量が100pF未満の場合
- 数字1桁や2桁の場合は、そのまま読む。
- 例えば、"22"の場合、となる。
- 数字ではなくRを使用している場合
- Rは小数点を表しており、Rの箇所を小数点に置き換えて読む。
- 例えば、"1R5"の場合、となる。
※補足
一般的に販売されているコンデンサは、E6系列(10、15、22、33、47、68)が多い。
1[μF]を超える大容量のコンデンサは、そのまま容量値を表示してある場合がほとんどである。
また、電解コンデンサは、一般的にそのまま容量値が表示されている。
コンデンサの許容差(誤差)の記号
コンデンサは、静電容量を示す3桁の数字に続けて、アルファベット1文字で許容差を表す。
下表に、許容差(誤差)を示す。
静電容量が10[pF]以下の場合と静電容量が10[pF]以上の場合でアルファベットの意味が異なることに注意する。
例えば、コンデンサに"101K"と表示されている場合、となる。
したがって、100[pF]のコンデンサで許容差がK(±10%)の場合、90[pF]~110[pF]まで静電容量がばらつく。
アルファベット | 許容差(誤差) | |
---|---|---|
10[pF]以下 | 10[pF]以上 | |
B | ±0.1[pF] | ±0.1[%] |
C | ±0.25[pF] | ±0.25[%] |
D | ±0.5[pF] | ±0.5[%] |
E | ±2[pF] | - |
F | ±1[pF] | ±1[%] |
G | - | ±2[%] |
H | - | ±3[%] |
J | - | ±5[%] |
K | - | ±10[%] |
M | - | ±20[%] |
N | - | ±30[%] |
Q | - | -10[%]〜+30[%] |
T | - | -10[%]〜+50[%] |
S | - | -20[%]〜+50[%] |
Z | - | -20[%]〜+80[%] |
- 静電容量が10[pF]以下の場合
- B、C、D、F、Gで許容差を表す。
- 許容差の単位は、pFとなる。
- 静電容量が10[pF]以上の場合
- B~Zで許容差を表す。
- 許容差の単位は、%となる。
※補足
一般的に販売されているコンデンサは、J(±5%)、K(±10%)、M(±20%)である。
フィルムコンデンサ、マイカコンデンサ、温度補償用セラミックコンデンサ等では、F(1%)よりも高い精度のものも存在する。
アルミ電解コンデンサや電気二重層コンデンサは精度が悪く、K(±10%)以上のものが一般的である。
高精度の部品は値がバラつかないため、高い信頼性があるが、部品コストが高くなる。