電子部品 - 抵抗器(ゼロオーム抵抗)
概要
基板では、抵抗値が0[Ω]のゼロオーム抵抗が実装されていることがある。
ここでは、ゼロオーム抵抗の定格電力と定格電流、ゼロオーム抵抗とジャンパー線の違い、ゼロオーム抵抗の用途を記載する。
ゼロオーム抵抗とは
ゼロオーム抵抗とは、その名の通り抵抗値がゼロオームの抵抗である。
ゼロオーム抵抗は、配線間を接続するジャンパー線のように使用されるため、ジャンパー抵抗とも呼ばれている。
リード抵抗の場合は抵抗に黒色の帯が1つ印刷されており、チップ抵抗の場合はゼロオーム抵抗であることを示す"0"または"000"が表示されている。
ゼロオーム抵抗の定格電力と定格電流
ゼロオーム抵抗器は、定格電力が、1/10[W]品、1/8[W]品、1/4[W]品、0.75[W]品、2[W]品などがある。
また、ゼロオーム抵抗は、実際には完全に0[Ω]ではなく、厳密には0.001[Ω]や0.003[Ω]など、微小の抵抗値を持っている。
このゼロオーム抵抗の定格電力と抵抗値の大きさは、各メーカーのWebサイトに記載されている。
定格電力と抵抗値があるということは、流せる電流量(定格電流)に制限があるということである。
例えば、0805サイズのチップ抵抗が以下のパラメータの場合を考える。
- 定格電力PRATED
- 1/2[W]
- 抵抗値R
- 0.002[Ω]
定格電力PRATEDと抵抗値Rが分かれば、定格電流IRATEDを導出することができる。
電流と電力の式()を用いると、定格電流IRATEDは下式のようになる。
したがって、このチップ抵抗は、最大15.81[A]の電流を流すことができる。
このように、ゼロオーム抵抗でも微小な抵抗値Rと定格電力PRATEDを持つため、流せる電流には制限がある。
そのため、ゼロオーム抵抗はヒューズの代わりとしても使われることがある。
一般的に、定格電流以上の電流を流したい場合は、以下の2つのどちらかを選択する。
- より低抵抗の製品を使用する。
- パッケージサイズは変わらないが、高価となる。
- パッケージサイズを大きくして定格電力が増加させる。
- パッケージサイズが大きくなるため、多くの基板スペースを占有するが、安価となる。
ここで、パッケージサイズを大きくして、1206サイズのチップ抵抗(定格電力PRATEDが0.75[W]、抵抗値Rが0.002[Ω])にすると、
定格電流IRATEDは下式のようになり、15.81[A]以上の電流が流せるようになる。
※補足
パッケージサイズを大きくすると(抵抗値は小さくなる)、抵抗値も微妙に変化する。
ゼロオーム抵抗とジャンパー線の違い
電気的には、ゼロオーム抵抗とジャンパー線は同じだが、ゼロオーム抵抗が使用される理由は大きく2つある。
- 実装が容易である。
- 人による手差し実装の場合は、ゼロオーム抵抗ではなくジャンパー線を使用することが多い。
- これは、コスト的には、ゼロオーム抵抗よりジャンパー線の方が安いからであるが、自動挿入機で取り付ける場合は話が変わる。
- 多くの場合、人による手差し実装ではなく、自動挿入機を使用して実装される。
- ゼロオーム抵抗の場合、他の抵抗器と形を同じにできるため、同じように自動挿入機を使用して実装することができる。
- しかし、ジャンパー線の場合、形が抵抗器と異なるため、機械がつかみにくく、ジャンパー線を取り付けるための別の機械が必要となる。
- その結果、作業効率が悪くなり、単価がゼロオーム抵抗より上がってしまう。
- 回路変更が簡単である。
- ゼロオーム抵抗は、他の抵抗器と形が同じであり、ジャンパー線よりも簡単に取り外しすることができる。
- そのため、後から設計変更で通常の抵抗に変更することや、その逆の変更が簡単にできる。
- 通常の抵抗に変更することを考えて、ゼロオーム抵抗の部品番号にもRxx等と記載して、通常の抵抗と同じように番号を振っている場合がある。
ゼロオーム抵抗の用途
- ジャンパー用
- 基板上で配線が交差させる時、片方の配線にゼロオーム抵抗を使って、交差する配線はその下をプリントパターンで通す。
- アナログGNDとデジタルGNDの接続用
- アナログGNDとデジタルGNDは、1箇所で接続するのが一般的であるが、CADを使用するとその指定ができないことがある。
- そのため、アナログGNDとデジタルGNDの接続にゼロオーム抵抗を使用することもある。
- 回路検討用・回路の切り替え用
- 回路基板を作る時、使い方によって配線を接続または外す場合がある。
- このような場合、この接続箇所にゼロオーム抵抗を入れておけば、抵抗を実装するか否かの選択を変えるだけで回路の動作を変える事ができる。
- 例えば、MOSFETにおいて、ICから駆動または外部の電源から駆動のどちらがよいかを検討する際に、ゼロオーム抵抗を接続して回路を実装する。
- 仕様が異なる製品を設計する時
- 製品の機能の違いや輸出先の国が異なる場合、製品の仕様が異なる場合がある。
- 例えば、以下の製品Aと製品Bを考える。
- 製品A : 端子Xを端子Yに接続する場合
- 製品B : 端子Xを端子Yに接続しない場合
- この場合、両製品でこれ以外に差異が無ければ、基板を共通化し、端子Xと端子Yの間にゼロオーム抵抗を接続する箇所を設けて、
- ゼロオーム抵抗の接続有無を変えることで、製品Aと製品Bの両方を設計することができる。
- ゼロオーム抵抗を接続することによる部品のコストアップは微妙にあるが、基板を共通化することで設計費・基板製作費・管理費を削減することができる。
- また、基板の管理も簡単になる。
- スイッチの代替
- 基板上にDIPスイッチを実装することで回路の切り替えを行う場合があるが、
- DIPスイッチは外形が大きいため、配置できる場所に制約があり、配線経路を変えなければならない場合がある。
- このような場合、DIPスイッチの代わりにゼロオーム抵抗を接続して、ゼロオーム抵抗の接続有無を変える。