インストール - GCC

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概要

RHELおよびSUSEのパッケージ管理システムで提供されているGCCのバージョンは古い可能性がある。
最新のGCCでは、C++11からC++17を完全にサポートしており、また、C++20をサポートしている。

また、最新のGCCでは、C11およびC++14のサポートがデフォルトで有効になっている。(-std=c11または-std=c++14を追加する必要はない)


GCCのインストール (ソースコードからインストール)

依存関係のライブラリのインストール

まず、システムが最新であることを確認する。

# RHEL
sudo dnf update

# SUSE
sudo zypper update


依存関係のライブラリを、以下に示す2種類のいずれかの方法でインストールする。

パッケージ管理システムの使用
# RHEL
sudo dnf install gmp-devel mpfr-devel libmpc-devel isl-devel 

# SUSE
sudo zypper install patterns-base-basesystem patterns-devel-base-devel_basis patterns-devel-C-C++-devel_C_C++ \
                    gcc gcc-c++ gawk ncurses-devel make tar pkg-config m4 gperf bison flex expect expect-devel \
                    gmp-devel mpfr-devel mpc-devel isl-devel


スクリプトの使用

GCCの公式Webサイトにアクセスして、GCCのソースコードをダウンロードする。
ダウンロードしたファイルを解凍する。

tar xf gcc-<バージョン>.tar.gz
cd gcc-<バージョン>


ビルドに必要なライブラリをソースコードからビルドする場合、解凍したGCCのディレクトリに移動して、ライブラリをダウンロードする。

./contrib/download_prerequisites


ダウンロードされた依存関係のライブラリを解凍する。

tar xf gmp-<バージョン>.tar.bz2
tar xf mpfr-<バージョン>.tar.bz2 
tar xf mpc-<バージョン>.tar.gz 
tar xf isl-<バージョン>.tar.bz2 


ビルドに必要なライブラリを、ビルドしてインストールする。

  • GMPのインストール
./gmp-<バージョン>/configure --prefix=<GCCのインストールディレクトリ> --enable-cxx
make -j $(nproc)
make check
make install


  • MPFRのインストール
./mpfr-<バージョン>/configure --prefix=<GCCのインストールディレクトリ> --with-gmp=<GCCのインストールディレクトリ>
make -s -j $(nproc)
make -s check -j $(nproc)
make install


  • MPCのインストール
./mpc-<バージョン>/configure --prefix=<GCCのインストールディレクトリ> --with-gmp=<GCCのインストールディレクトリ> --with-mpfr=<GCCのインストールディレクトリ>
make -s -j $(nproc)
make check -s -j $(nproc)
make install


  • ISLのインストール
./isl-<バージョン>/configure --prefix=<GCCのインストールディレクトリ> --with-gmp-prefix=<GCCのインストールディレクトリ>
make -j $(nproc)
make check
make install


ビルドおよびインストール

GCCの公式Webサイトにアクセスして、GCCのソースコードをダウンロードする。
ダウンロードしたファイルを解凍する。

tar xf gcc-<バージョン>.tar.xz
cd gcc-<バージョン>


sha512.sumファイルを使用して、ダウンロードしたファイルのチェックを行う。
sha512sum: gcc-<バージョン>.tar.gz: No such file or directoryというメッセージが表示されるが、
gcc-<バージョン>.tar.gzファイルをダウンロードしていないため表示されているだけなので、特に問題ない。

sha512sum --check sha512.sum


GCC 7.1をインストールする場合、/<GCC 7.1のソースディレクトリ>/libgcc/config/i386/linux-unwind.hファイルを、以下に示すように修正する必要がある。

 // /<GCC 7.1のソースディレクトリ>/libgcc/config/i386/linux-unwind.hファイルの61行目
 
 // 修正前
 struct ucontext *uc_ = context->cfa;
 
 // 修正後
 struct ucontext_t *uc_ = context->cfa;


GCCをビルドおよびインストールする。
オプションの説明を記載する。

  • enable-languages=c,c++,fortran
    C、C++、FORTRANのコンパイラをビルド対象とする。
  • disable-bootstrap
    ただし、クロスコンパイラ向けでは使用できないことに注意すること。
    3-stage bootstrap buildの無効化。
  • disable-multilib
    64bit専用コンパイラとする。(ただし、-m32オプションが使用できなくなる)
cd gcc-<バージョン>
mkdir build && cd build


# GCC 7.5以降かつパッケージ管理システムで依存関係のライブラリをインストールしている場合
../configure -v --build=x86_64-linux-gnu --host=x86_64-linux-gnu --target=x86_64-linux-gnu \
                --prefix=<GCCのインストールディレクトリ> --program-suffix="_X_X" \
                --enable-languages=c,c++,fortran --disable-bootstrap

make -j $(nproc)

make install-strip

# GCC 7.5以降かつ手動で依存関係のライブラリをインストールしている場合
../configure -v --build=x86_64-linux-gnu --host=x86_64-linux-gnu --target=x86_64-linux-gnu \
                --prefix=<GCCのインストールディレクトリ> --program-suffix="_X_X" \
                --enable-checking=release --enable-languages=c,c++,fortran --disable-bootstrap \
                --with-gmp=<GMP, MPC MPFR, ISLのインストールディレクトリ> --with-mpc=<GMP, MPC MPFR, ISLのインストールディレクトリ> \
                --with-mpfr=<GMP, MPC MPFR, ISLのインストールディレクトリ> --with-isl=<GMP, MPC MPFR, ISLのインストールディレクトリ>

unset LIBRARY_PATH CPATH C_INCLUDE_PATH PKG_CONFIG_PATH CPLUS_INCLUDE_PATH INCLUDE

LD_LIBRARY_PATH=/<GMP, MPC MPFR, ISLのインストールディレクトリ>/lib64 make -j $(nproc)

make install

# GCC 6.5以前かつパッケージ管理システムで依存関係のライブラリをインストールしている場合
../configure -v --build=x86_64-linux-gnu --host=x86_64-linux-gnu --target=x86_64-linux-gnu \
                --prefix=<GCCのインストールディレクトリ> --program-suffix="_X_X" \
                --enable-checking=release --enable-languages=c,c++,fortran --disable-bootstrap \
                --disable-libsanitizer --disable-libcilkrts

make -j $(nproc)
make install-strip


インストールしたGCCへ環境変数のパスを通す。

vi ~/.profile

# .profileファイル
export export PATH="/<GCCのインストールディレクトリ>/bin:$PATH"
export LD_LIBRARY_PATH="/<GCCのインストールディレクトリ>/lib64:$LD_LIBRARY_PATH"


最後に、PCを再起動する。

GCCのライブラリの設定

GCCをソースコードからインストールした場合、共有ライブラリが/<GCCのインストールディレクトリ>/lib64に作成されるが、環境変数のパスが設定されていない。
そのため、以下に示すいずれかの方法で環境変数のパスを通す必要がある。

  • /etc/ld.so.confファイル (システム全体)
  • ~/.profileファイル、または、~/.bashrcファイル等 (ユーザごとの設定)
    環境変数LD_LIBRARY_PATHを設定する。


ld.so.confファイルに設定する場合

/etc/ld.so.confファイルに/<GCCのインストールディレクトリ/lib64を追記することで、Linuxがライブラリを認識する。

sudo vi /etc/ld.so.conf


# /etc/ld.so.confファイル

/<GCCのインストールディレクトリ/lib64


設定を反映させるため、ldconfigコマンドを実行する。

ldconfig -v


ldconfigコマンドを実行した時に表示される情報から、
以下に示すように、/<GCCのインストールディレクトリ/lib64ディレクトリが読み込まれていることを確認する。

/<GCCのインストールディレクトリ>/lib64:
ldconfig: /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.25-gdb.py is not an ELF file - it has the wrong magic bytes at the start.

       libatomic.so.1 -> libatomic.so.1.2.0
       libitm.so.1 -> libitm.so.1.0.0
       libgomp.so.1 -> libgomp.so.1.0.0
       libquadmath.so.0 -> libquadmath.so.0.0.0
       libssp.so.0 -> libssp.so.0.0.0
       libmpxwrappers.so.2 -> libmpxwrappers.so.2.0.1


ldconfigコマンドを実行した結果、もし、以下に示すようなメッセージが表示される場合がある。

ldconfig: /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.25-gdb.py is not an ELF file - it has the wrong magic bytes at the start.


これは、libstdc++.so.6.0.25-gdb.pyは、pythonのスクリプトであるが、これを共有ライブラリとして認識していることが原因である。

file /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.25-gdb.py

/<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.25-gdb.py: Python script, ASCII text executable


対処方法としては、該当ファイルの名前を変更して、共有ライブラリと認識されないようする。

mv /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.25-gdb.py  /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.25-gdb.py_org


再度、ldconfigコマンドを実行する。

ldconfig -v


また、RHELの場合、/etc/ld.so.confファイルにinclude ld.so.conf.d/*.confと設定されているが、
これは、ld.so.conf.dディレクトリ内のconf拡張子をもつファイルの内容を読み込むという設定である。

ld.so.conf.dディレクトリ内に/<GCCのインストールディレクトリ>/lib64と記述したconfファイルを作成することにより、
Linuxに共有ライブラリのパスを認識させることができる。

ここでは、/etc/ld.so.conf.d/UserAdd-lib64.confファイルを作成する。

sudo vi /etc/ld.so.conf.d/UserAdd-lib64.conf


# UserAdd-lib64.confファイル

/<GCCのインストールディレクトリ>/lib64


上記の設定を反映させるため、ldconfigコマンドを実行する。

ldconfig -v


~/.profileファイル、または、~/.bashrcファイル等に設定する場合

この方法は、ユーザごとに設定する必要がある。

~/.profileファイル、または、~/.bashrcファイル等に、環境変数LD_LIBRARY_PATHを設定することにより、ユーザがログインする際に設定が読み込まれる。

vi ~/.profile


 # ~/.profileファイル
 
 export LD_LIBRARY_PATH="/<GCCのインストールディレクトリ>/lib64:$LD_LIBRARY_PATH"


上記の設定を反映させるため、PCを再起動または再ログインする。

libstdc++の入れ替え

この操作を行うと、システムが不安定になる可能性があるため、必要な時にのみこれを行う。

現在のlibstdc++の対応関係を確認する。

strings /usr/lib64/libstdc++.so.6 | grep GLIBCXX


インストールしたGCCのlibstdc++.so.<バージョン名>をコピーする。

sudo cp /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.28 /usr/lib64


/usr/lib64ディレクトリにあるlibstdc++.so.6ファイルのバージョンを確認する。

ls -ahlF /usr/lib64/libstd*


libstdc++.so.6ファイルを入れ替える。

sudo mv /usr/lib64/libstdc++.so.6 /usr/lib64/libstdc++.so.6_org
sudo ln -s /usr/lib64/libstdc++.so.<バージョン名> /usr/lib64/libstdc++.so.6


正常にコピーできたか確認する。

ls -ahlF /usr/lib64/libstd*


入れ替えたlibstdc++の対応関係を確認する。

strings /usr/lib64/libstdc++.so.6 | grep GLIBCXX



クロスコンパイラ向けGCCツールチェーンのインストール

クロスコンパイラ向けGCCツールチェーンとは

クロスコンパイラ向けGCCツールチェインは、C/C++、アセンブリ言語のためのオープンソースのツール群である。
これは、各アーキテクチャのプロセッサを対象として実装している。

共通 (ホスト側)

GCCツールチェーンのビルドに必要なライブラリをインストールする。

sudo zypper install expect-devel gmp-devel mpc-devel mpfr-devel


AArch64 (システムルートあり)

まず、GNUの公式Webサイトから、Binutilsをダウンロードする。
ダウンロードしたファイルを解凍する。

tar xf binutils-<バージョン>.tar.xz
cd binutils-<バージョン>


ビルドディレクトリを作成する。

mkdir build && cd build


クロスコンパイラ向けBinutilsのビルドおよびインストールする。
インストールディレクトリは、クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリと同じディレクトリであることに注意する。

../configure CFLAGS="-g0 -O3 -fstack-protector-strong"                                         \
             CXXFLAGS="-g0 -O3 -fstack-protector-strong"                                       \
             --prefix=<クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリ>                                    \
             --build=x86_64-pc-linux-gnu --host=x86_64-pc-linux-gnu --target=aarch64-linux-gnu \
             --disable-gdb --disable-nls --disable-multilib --disable-werror                   \
             --enable-gold --enable-lto --enable-plugins --enable-relro                        \
             --with-sysroot=<ターゲットのシステムルートディレクトリ>

make -j $(nproc)
make install


次に、GCCの公式Webサイトにアクセスして、GCCのソースコードをダウンロードして解凍する。
または、以下のコマンドを実行してダウンロードする。

wget http://ftp.tsukuba.wide.ad.jp/software/gcc/releases/gcc-<バージョン>/gcc-<バージョン>.tar.xz
tar xf gcc-<バージョン>.tar.xz
cd gcc-<バージョン>


クロスコンパイラ向けGCCをビルドおよびインストールする。
クロスコンパイラ向けGCCをビルドする場合、ネイティブ向けGCCとバージョンを合わせた方がよい。

export PATH="/<上記でインストールしたBinutilsのインストールディレクトリ>/bin:$PATH" && \
CC=<ネイティブ向けGCCのパス> CXX=<ネイティブ向けG++のパス>                 \
../configure CFLAGS="-g0 -O3 -fstack-protector-strong"           \
             CXXFLAGS="-g0 -O3 -fstack-protector-strong"         \
             -v --prefix=<クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリ>  \
             --build=x86_64-pc-linux-gnu --host=x86_64-pc-linux-gnu --target=aarch64-linux-gnu \
             --enable-languages=c,c++ --disable-bootstrap --disable-multilib --disable-nls     \
             --with-sysroot=<ターゲットのシステムルートディレクトリ>

make -j $(nproc)
make install-strip


Rsdpberry Pi 32bit (システムルートあり)

まず、GNUの公式Webサイトから、Binutilsをダウンロードする。
ダウンロードしたファイルを解凍する。

tar xf binutils-<バージョン>.tar.xz
cd binutils-<バージョン>


ビルドディレクトリを作成する。

mkdir build && cd build


クロスコンパイラ向けBinutilsのビルドおよびインストールする。
インストールディレクトリは、クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリと同じディレクトリであることに注意する。

# Raspberry Pi Zero / 1 の場合
export ARCH=armv6
export FPU=vfp

# Raspberry Pi 2 / 3B の場合
export ARCH=armv7-a
export FPU=neon-vfpv4

# Raspberry Pi 3B+ の場合
export ARCH=armv8-a
export FPU=neon-fp-armv8

../configure --prefix=<クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリ>
             --build=x86_64-pc-linux-gnu --host=x86_64-pc-linux-gnu --target=arm-linux-gnueabihf \
             --with-arch=$ARCH  \
             --with-fpu=$FPU    \
             --with-float=hard  \
             --disable-multilib \
             --with-sysroot=<ターゲットのシステムルートディレクトリ>

make -j $(nproc)
make install


次に、GCCの公式Webサイトにアクセスして、GCCのソースコードをダウンロードして解凍する。
または、以下のコマンドを実行してダウンロードする。

wget http://ftp.tsukuba.wide.ad.jp/software/gcc/releases/gcc-<バージョン>/gcc-<バージョン>.tar.xz
tar xf gcc-<バージョン>.tar.xz
cd gcc-<バージョン>


クロスコンパイラ向けGCCをビルドおよびインストールする。

# Raspberry Pi Zero / 1 の場合
export ARCH=armv6
export FPU=vfp

# Raspberry Pi 2 / 3B の場合
export ARCH=armv7-a    # 
export FPU=neon-vfpv4  #

# Raspberry Pi 3B+ の場合
export ARCH=armv8-a
export FPU=neon-fp-armv8

export PATH="/<上記でインストールしたBinutilsのインストールディレクトリ>/bin:$PATH"

../configure --prefix=<クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリ> \
             --build=x86_64-pc-linux-gnu --host=x86_64-pc-linux-gnu --target=arm-linux-gnueabihf  \
             --enable-languages=c,c++ \
             --with-arch=$ARCH        \
             --with-fpu=$FPU          \
             --with-float=hard        \
             --disable-multilib       \
             --with-sysroot=<ターゲットのシステムルートディレクトリ>

make -j $(nproc)
make install-strip


Rsdpberry Pi 64bit (システムルートあり)

まず、GNUの公式Webサイトから、Binutilsをダウンロードする。
ダウンロードしたファイルを解凍する。

tar xf binutils-<バージョン>.tar.xz
cd binutils-<バージョン>


ビルドディレクトリを作成する。

mkdir build && cd build


クロスコンパイラ向けBinutilsのビルドおよびインストールする。
インストールディレクトリは、クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリと同じディレクトリであることに注意する。

export ARCH=armv8-a+fp+simd

../configure --prefix=<クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリ>
             --build=x86_64-pc-linux-gnu --host=x86_64-pc-linux-gnu --target=aarch64-linux-gnu \
             --with-arch=$ARCH  \
             --disable-multilib \
             --with-sysroot=<ターゲットのシステムルートディレクトリ>

make -j $(nproc)
make install


次に、GCCの公式Webサイトにアクセスして、GCCのソースコードをダウンロードして解凍する。
または、以下のコマンドを実行してダウンロードする。

wget http://ftp.tsukuba.wide.ad.jp/software/gcc/releases/gcc-<バージョン>/gcc-<バージョン>.tar.xz
tar xf gcc-<バージョン>.tar.xz
cd gcc-<バージョン>


クロスコンパイラ向けGCCをビルドおよびインストールする。

export ARCH=armv8-a+fp+simd

export PATH="/<上記でインストールしたBinutilsのインストールディレクトリ>/bin:$PATH"

../configure --prefix=<クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリ> \
             --build=x86_64-pc-linux-gnu --host=x86_64-pc-linux-gnu --target=aarch64-linux-gnu  \
             --enable-languages=c,c++ \
             --with-arch=$ARCH        \
             --disable-multilib       \
             --with-sysroot=<ターゲットのシステムルートディレクトリ>

make -j $(nproc)
make install-strip


H8 (システムルート無し)

※注意 1
H8向けのGCCのターゲットには、h8300-hms(coffと同じ)とh8300-elfがあり,バイナリフォーマットが異なることに注意する。

※注意 2
GCC 9.1以降は、共有ライブラリとしてC++(libstdc++)をビルドすると失敗するため、C言語のみの対応となる。
スタティックライブラリとしてはビルド可能であるが、その場合、例えば、#inlcude <iostream>のインクルードができなくなる。

共有ライブラリとしてビルド不可の理由としては、ビット数を管理するソースコードファイルにおいて、
std::size_tの配列が、H8アーキテクチャ上ではstd::size_tのビット長が短いため、配列の要素が格納できないからである。
また、C++17のメモリ管理機構において、コンパイル時のstatic_assertに失敗する。

GCC 8.5では、GCCのMakefileに手を加えることにより、C言語およびC++言語を対応させることができる。
通常、ビルドを行う場合、basic_string.hファイルにおいて、internal compiler error: unrecognizable insnとしてエラーになる。
これは、C++向けライブラリをビルドするためのxgccにおいて、内部エラーが起きているからである。
しかし、ビルドディレクトリにあるh8300-elfディレクトリ内のMakefileファイルの526行目 CXXFLAGS_FOR_TARGET-g -O0に変更する(最適化を無効にする)ことにより、ビルド可能となる。

H8 GCCツールチェーンのビルドには32ビットGCCライブラリも必要であるため、以下に示すライブラリもインストールする。

sudo zypper install glibc-devel-32bit


まず、GNUの公式Webサイトから、Binutilsをダウンロードする。
ダウンロードしたファイルを解凍する。

tar xf binutils-<バージョン>.tar.xz
cd binutils-<バージョン>


クロスコンパイラ向けBinutilsのビルドおよびインストールする。
インストールディレクトリは、クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリと同じディレクトリであることに注意する。

mkdir build && cd build

../configure --prefix=<クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリ> \
             --build=x86_64-pc-linux-gnu --host=x86_64-pc-linux-gnu --target=h8300-elf \
             --disable-gdb --disable-nls --disable-multilib --disable-werror \
             --enable-lto
make -j $(nproc)
make install


次に、GCCの公式Webサイトにアクセスして、GCCのソースコードをダウンロードする。
ダウンロードしたファイルを解凍する。

tar xf gcc-<バージョン>.tar.xz
cd gcc-<バージョン>


さらに、NewLibの公式Webサイト、または、NewLibのGithubにアクセスして、NewLibのソースコードをダウンロードする。
もし、NewLibの公式Webサイトからファイルをダウンロードできない場合は、wgetコマンド等を使用してダウンロードする。

wget ftp://sourceware.org/pub/newlib/newlib-<バージョン>.tar.gz


ただし、現在(2022年11月現在)、NewLibの公式Webサイトからダウンロードしたファイルを使用するとビルドに失敗するため、Githubからダウンロードすること。

ダウンロードしたファイルを解凍する。

tar xf newlib-<バージョン>.tar.gz


クロスコンパイラ向けGCC(1度目は、gccファイルのみ)をビルドおよびインストールする。
クロスコンパイラ向けGCCをビルドする場合、ネイティブ向けGCCとバージョンを合わせた方がよい。

# GCC ビルド ステージ:1
cd <GCCのソースコードがあるディレクトリ>
mkdir build && cd build

# GCC 8.5以前
export PATH="/<上記でインストールしたBinutilsのインストールディレクトリ>/bin:$PATH" && \
CC=<ネイティブ向けGCCのパス> CXX=<ネイティブ向けG++のパス> \
../configure --prefix=<クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリ>  \
             --build=x86_64-pc-linux-gnu --host=x86_64-pc-linux-gnu --target=h8300-elf \
             --enable-languages=c,c++ \
             --disable-bootstrap --disable-nls --disable-werror --enable-lto --enable-gold \
             --with-newlib \
             --with-headers=/<上記でダウンロードしたNewLibのディレクトリ>/newlib/libc/include
make -j $(nproc)
make install

# GCC 9.1以降
export PATH="/<上記でインストールしたBinutilsのインストールディレクトリ>/bin:$PATH" && \
CC=<ネイティブ向けGCCのパス> CXX=<ネイティブ向けG++のパス> \
../configure --prefix=<クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリ>  \
             --build=x86_64-pc-linux-gnu --host=x86_64-pc-linux-gnu --target=h8300-elf \
             --enable-languages=c \
             --disable-bootstrap --disable-nls --disable-shared --enable-static --enable-lto --enable-gold \
             --with-newlib \
             --with-headers=/<上記でダウンロードしたNewLibのディレクトリ>/newlib/libc/include
make -j $(nproc)
make install


次に、NewLibをビルドおよびインストールする。

mkdir build && cd build

export PATH="/<上記でインストールしたBinutilsのインストールディレクトリ>/bin:$PATH" && \
CC=<ネイティブ向けGCCのパス> CXX=<ネイティブ向けG++のパス> \
../configure --prefix=<クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリ>  \
             --build=x86_64-pc-linux-gnu --host=x86_64-pc-linux-gnu --target=h8300-elf
make -j $(nproc)
make install


最後に、クロスコンパイラ向けGCC(2度目は、g++ファイルのみ)をビルドおよびインストールする。

# GCC ビルド ステージ:2
cd <GCCのソースコードがあるディレクトリ>/build

# GCC 8.5以前は不要

# GCC 9.1以降
export PATH="/<上記でインストールしたBinutilsのインストールディレクトリ>/bin:$PATH" && \
CC=<ネイティブ向けGCCのパス> CXX=<ネイティブ向けG++のパス> \
../configure --prefix=<クロスコンパイラ向けGCCのインストールディレクトリ>  \
             --build=x86_64-pc-linux-gnu --host=x86_64-pc-linux-gnu --target=h8300-elf \
             --enable-languages=c,c++ \
             --disable-bootstrap --disable-nls --disable-shared --enable-static --disable-libstdc__-v3 --enable-lto --enable-gold \
             --with-newlib \
             --with-headers=/<上記でダウンロードしたNewLibのディレクトリ>/newlib/libc/include
make -j $(nproc)
make install



GCC ARMツールチェーンの使用方法

GCC ARMツールチェーンとは

Cortex-A向けGNUツールチェインは、C/C++、アセンブリ言語のためのオープンソースのツール群である。
これは、Cortex-Aファミリのプロセッサを対象としており、Arm Aプロファイルアーキテクチャを実装している。
このツールチェーンにはGCCが含まれており、WindowsおよびLinux向けに無償で提供されている。

GCC ARMツールチェーンのダウンロード

Cortex-Aファミリ

ARMの公式Webサイトから、ユーザの環境に合うバージョンをダウンロードする。
GCC ARMを解凍して、適切なディレクトリに配置する。

Raspberry Pi

Raspberry Pi向けにクロスコンパイルする場合は、下表を参考にして、ユーザの環境に合ったGCC ARMツールチェーンをダウンロードする。
https://sourceforge.net/projects/raspberry-pi-cross-compilers/files/Raspberry%20Pi%20GCC%20Cross-Compiler%20Toolchains/

表. Raspberry Pi専用GCC ARMツールチェーンのダウンロード
Raspberry Piの種類 Raspbian Stretch(32-bit) Raspbian Buster(32-bit) Raspbian Bullseye(32-bit)
Raspberry Pi Zero/W/WH
Raspberry Pi 1 Model A / B / A+ / B+
6.3.0
9.3.0
10.2.0
8.3.0
9.3.0
10.2.0
10.2.0
10.3.0
Raspberry Pi 2 Model A / B
Raspberry Pi 3 Model A / B
6.3.0
9.3.0
10.2.0
8.3.0
9.3.0
10.2.0
10.2.0
10.3.0
Raspberry Pi 3 Model A+ / B+
Raspberry Pi 4 Model A+ / B+
Raspberry Pi Compute 3 / 3lite / 3+
6.3.0
8.3.0
10.2.0
8.3.0
9.3.0
10.2.0
10.2.0
10.3.0


上表は、Raspbian OS 32bit向けのGCC ARMツールチェインであるが、Raspbian OS 64bit向けのGCC ARMツールチェインが必要な場合は、以下に示すURLにアクセスする。
https://sourceforge.net/projects/raspberry-pi-cross-compilers/files/Bonus%20Raspberry%20Pi%20GCC%2064-Bit%20Toolchains/Raspberry%20Pi%20GCC%2064-Bit%20Cross-Compiler%20Toolchains/

また、Raspberry Pi向けには、Linaro社が提供しているGCC ARMツールチェインを使用することもできる。
https://releases.linaro.org/components/toolchain/binaries/latest-7/arm-linux-gnueabihf

  • Windows x86 / Linux x86の場合
    gcc-linaro-7.5.0-2019.12-i686_arm-linux-gnueabihf.tar.xz
  • Linux x64の場合
    gcc-linaro-7.5.0-2019.12-x86_64_arm-linux-gnueabihf.tar.xz


GCC ARMツールチェーンを使用したコンパイル

Cortex-Aファミリ

以下の例では、ARMの公式WebサイトからダウンロードしたGCC ARMツールチェーンを使用して、
任意のソフトウェアをCortex-Aファミリ向けにビルドしている。

もし、configureスクリプトを実行する時、undefined reference to 'rpl_malloc'というエラーが表示される場合は、
ac_cv_func_malloc_0_nonnull=yes ac_cv_func_realloc_0_nonnull=yesオプションを付加する。
これは、autotoolsの仕様で、GLIBC以外のシステム(例. uClibc等)を使用しているからである。

# 32bit Cortex-A(Hard Float版)向けにビルドする場合
ac_cv_func_malloc_0_nonnull=yes ac_cv_func_realloc_0_nonnull=yes \
../configure --prefix=<ソフトウェアのインストールディレクトリ> \
CC=/<GCC_ARMのインストールディレクトリ>/bin/arm-none-linux-gnueabihf-gcc \
CXX=/<GCC_ARMのインストールディレクトリ>/bin/arm-none-linux-gnueabihf-g++ \
--build=x86_64-unknown-linux-gnu --host=arm-none-linux-gnueabihf --target=arm-none-linux-gnueabihf \
--with-sysroot=/<GCC_ARMのインストールディレクトリ>/arm-none-linux-gnueabihf/libc --with-gnu-ld

make -j $(nproc) LDFLAGS="-L/<GCC_ARMのインストールディレクトリ>/arm-none-linux-gnueabihf/lib" \
CFLAGS="-I/<GCC_ARMのインストールディレクトリ>/arm-none-linux-gnueabihf/include"

make install


# 64bit Cortex-A向けにビルドする場合
ac_cv_func_malloc_0_nonnull=yes ac_cv_func_realloc_0_nonnull=yes \
../configure --prefix=<ソフトウェアのインストールディレクトリ> \
CC=/<GCC_ARMのインストールディレクトリ>/bin/aarch64-none-linux-gnu-gcc \
CXX=/<GCC_ARMのインストールディレクトリ>/bin/aarch64-none-linux-gnu-g++ \ 
--build=x86_64-unknown-linux-gnu --host=aarch64-none-linux-gnu --target=aarch64-none-linux-gnu \
--with-sysroot=/<GCC_ARMのインストールディレクトリ>/aarch64-none-linux-gnu/libc --with-gnu-ld

make -j $(nproc) LDFLAGS="-L/<GCC_ARMのインストールディレクトリ>/aarch64-none-linux-gnu/lib64" \
CFLAGS="-I/<GCC_ARMのインストールディレクトリ>/aarch64-none-linux-gnu/include"

make install


Raspberry Pi

以下の例では、SourceForgeからダウンロードしたRaspberry Pi専用のGCC ARMツールチェーンを使用して、
任意のソフトウェアをRaspberry Pi向けにビルドしている。

ac_cv_func_malloc_0_nonnull=yes ac_cv_func_realloc_0_nonnull=yes \
../configure --prefix=<ソフトウェアのインストールディレクトリ> \
CC=/<GCC_ARMのインストールディレクトリ>/bin/arm-linux-gnueabihf-gcc CXX=/<GCC_ARMのインストールディレクトリ>/bin/arm-linux-gnueabihf-g++ \
--build=x86_64-unknown-linux-gnu --host=arm-linux-gnueabihf --target=arm-linux-gnueabihf

make -j $(nproc)

make install



C++14 / C++17のサンプルコード

C++14では、ラムダ式のパラメータのタイプにautoが使用できる。

 // sample.cpp
 
 #include <iostream>
  
 int main()
 {
    std::cout << [](auto a, auto b) { return a + b; } (5, 6) << std::endl;
    std::cout << [](auto a, auto b) { return a + b; } (5.23, 6.45) << std::endl;
    return 0;
 }


# 実行
g++-10.1 -Wall -pedantic sample.cpp -o sample
./sample

# 出力
11
11.68


このページの冒頭で述べたように、GCC 10.1は、C++17を完全にサポートしている。
以下の例では、static_assertへのC++17変更の使用例をテストしている。

 // sample.cpp
 
 #include <type_traits>
 #include <iostream>
  
 struct A
 {
    int foo;
 };
 
 struct B
 {
    int foo = 0;
 };
  
 template <typename T>
 void print(const T& a)
 {
    static_assert(std::is_pod<T>::value);
    std::cout << a.foo << '\n';
 }
  
 int main()
 {
    A x{1};
    B y{2};
    B z;
 
    print<A>(x);
    print<B>(y);
    print<B>(z);
 
    return 0;
 }


コンパイルを行うには、-std=c++17オプションを付与する。
また、上記のコードの17行目と24行目でトリガーされたコンパイルエラーが表示される。

# 実行
g++-10.1 -std=c++17 -Wall -pedantic sample.cpp -o sample

# 出力
sample.cpp: In instantiation of ‘void print(const T&) [with T = B]’:
sample.cpp:24:13:   required from here
sample.cpp:14:33: error: static assertion failed
    17 |   static_assert(std::is_pod<T>::value);


もし、C++11の構文の詳細に興味がある場合は、Bjarne StroustrupによるC++プログラミング言語を読むことを推奨する。