概要
比表面積は、物質の単位質量または単位体積あたりの表面積を表す物理量である。
定義と単位
- 質量基準
- m2/g (単位質量あたりの表面積)
- 体積基準
- m2/m3 (単位体積あたりの表面積)
比表面積が大きいほど粒子が細かいことを意味する。
セメントの比表面積が規定されており、比表面積の大きなセメントは硬化が早いといえる。
物質の性質との関係
- 反応性
- 比表面積が大きいほど、化学反応が起こりやすくなる。
- 吸着性
- 比表面積が大きいほど、物質の吸着能力が向上する。
- 溶解性
- 比表面積が大きいほど、溶解速度が速くなる。
粒子径との関係
比表面積 (S) は、粒子径 (d) と以下に示すような関係がある。
球形粒子の場合
- ρ
- 粒子の密度
- d
- 粒子径
上記の関係から、粒子が小さくなるほど比表面積は増大することがわかる。
下図において、左は粒径の小さな粒子の集まり、右は大きな粒径が1つである。
両者の質量は同じとする時、左のほうが表面積が大きくなる。
つまり、粒径の細かい方が表面積が大きい (比表面積が大きい) ということでである。
例題:
密度2.5[g/cm3]、直径0.001[cm]の球形粒子の比表面積を求める。
立方体粒子の場合
- a
- 立方体の一辺の長さ [cm]
- ρ
- 密度 [g/cm³]
応用例
注意点
- 粒度分布の影響
- 実際の粒子は単一径ではない。
- 平均粒子径を使用する場合の誤差
- 分布の広がりの考慮
- 形状係数の考慮
- 実際の粒子は完全な球形でない。
- 形状係数を導入した補正
- 業界標準値の使用
- 測定環境の影響
- 温度・湿度の管理
- サンプルの前処理方法
- 測定機器の校正
セメント工業での活用
比表面積は、セメントの品質管理における重要な指標である。
JISでは、ポルトランドセメントの比表面積は2,500[cm2/g]以上と規定されている。
比表面積が大きいほど、水和反応が促進、初期強度の発現が早い、施工性が向上する。
ブレーン値 (空気透過法による比表面積測定)
- 普通ポルトランドセメント
- 3,300~3,500 [cm²/g]
- 早強ポルトランドセメント
- 4,500~5,000 [cm²/g]
品質管理のポイント
- 粉砕時間の管理
- 粒度分布の制御
- 水和熱の予測
触媒での活用
触媒の効率は比表面積に大きく依存する。
活性炭や多孔質材料では、比表面積を最大化する設計が重要となる。
- 活性アルミナの場合
- 150~300 [m²/g]
- シリカゲルの場合
- 300~800 [m²/g]
- 活性炭の場合
- 500~1,500 [m²/g]
測定方法
BET法 (ガス吸着法)
窒素ガスの吸着量から算出する。
これは、精密な測定が可能である。
手順
- サンプルの前処理 (脱気)
- 窒素ガスの吸着
- BET式による解析
空気透過法
セメント等の粉体材料に使用する。
これは、ブレーン法とも呼ばれる。
手順
- 試料の充填
- 空気の透過時間測定
- 計算式による算出