概要
TCP (Transmission Control Protocol) は、インターネットプロトコルスイートの中核をなす通信プロトコルの1つである。
TCPは信頼性の高い通信を提供する強力なプロトコルであり、C#の豊富なネットワーキングAPIと組み合わせることで、効率的なネットワークアプリケーションの開発が可能になる。
C#においても、TCPを利用したネットワークプログラミングは重要な位置を占めている。
TCPの主な特徴は、信頼性の高い通信を提供することである。
これは、データの送受信を確実に行い、パケットの損失や重複、順序の入れ替わりを防ぐ機能を持っているためである。
また、フロー制御や輻輳制御の仕組みも備えており、ネットワークの状況に応じて通信速度を調整する。
C#でTCP通信を実装する場合は、主にSystem.Net.Sockets
名前空間を使用する。
この名前空間には、TcpClient
クラスやTcpListener
クラス等が含まれており、これらを使用してクライアントとサーバの通信を簡単に実装できる。
TcpClient
クラスを使用すると、サーバへの接続やデータの送信が可能になる。
TcpListener
クラスは、サーバ側でクライアントからの接続を待ち受けるために使用する。
実際の通信では、ストリームを介してデータのやり取りを行う。
NetworkStream
クラスを使用して、接続したソケットからデータを読み書きする。
これにより、テキストやバイナリデータを効率的に送受信することができる。
C#でTCP通信を実装する場合は、非同期プログラミングの手法を活用することが推奨される。
BeginConnect
メソッドやBeginAccept
メソッド等を使用するこにより、アプリケーションの応答性を向上させることができる。
セキュリティ面では、SSL / TLS証明書を使用して通信を暗号化することが可能である。
C#では、SslStream
クラスを使用してこれを実現することができる。
また、接続の確立、切断、タイムアウトの処理、エラーハンドリング等を適切に実装することにより、安定したネットワークアプリケーションを開発することができる。
クライアント
送信
以下の例では、TcpClientクラスを使用して、非同期でサーバに接続およびメッセージを送信している。
また、タイムアウトが発生した場合の再試行処理や高度なエラー処理等も追加することを推奨する。
NetworkStream
クラスのReadTimeout
やWriteTimeout
プロパティを非同期処理と組み合わせることは非推奨である。
非同期操作でタイムアウトを実装する場合、Task.WhenAny
とTask.Delay
を組み合わせる方法が効果的である。
- 互換性の問題
ReadTimeout
プロパティおよびWriteTimeout
プロパティは、同期メソッド (Read, Write) に対してのみ有効である。- 非同期メソッド (ReadAsync, WriteAsync) には影響しない。
- 非同期操作との不適合
- 非同期操作は本質的にタイムアウトの概念と相容れない。
- 非同期メソッドは完了するまで制御を返さないため、タイムアウトを設定しても期待通りに動作しない。
using System;
using System.Text;
using System.Net.Sockets;
using System.Threading.Tasks;
class AsyncTcpClientSender
{
static async Task Main(string[] args)
{
string server = "<ホスト名またはIPアドレス>"; // サーバのアドレス
int port = <ポート番号>; // ポート番号
int timeoutMilliseconds = 5000; // タイムアウト (ミリ秒)
try
{
using (TcpClient client = new TcpClient())
{
// サーバへ接続
var connectTask = client.ConnectAsync(server, port);
// サーバへの接続が確立するまで待機
if (await Task.WhenAny(connectTask, Task.Delay(timeoutMilliseconds)) != connectTask)
{ // タイムアウトが発生した場合
throw new TimeoutException("エラー: サーバへの接続がタイムアウト");
}
using (NetworkStream stream = client.GetStream())
{ // サーバへメッセージを送信
string message = "Hello, Server";
byte[] data = Encoding.UTF8.GetBytes(message);
var sendTask = stream.WriteAsync(data, 0, data.Length);
if (await Task.WhenAny(sendTask, Task.Delay(timeoutMilliseconds)) != sendTask)
{
throw new TimeoutException("エラー: メッセージの送信がタイムアウト");
}
Console.WriteLine($"送信メッセージ: {message}");
}
}
}
catch (SocketException e)
{ // ネットワーク関連のエラーが発生した場合
Console.WriteLine($"SocketException: {e.Message}");
}
catch (TimeoutException e)
{ // タイムアウトが発生した場合
Console.WriteLine($"TimeoutException: {e.Message}");
}
catch (Exception e)
{ // その他の予期せぬエラーが発生した場合
Console.WriteLine($"予期せぬエラーが発生: {e.Message}");
}
}
}
受信
以下の例では、TcpClientクラスを使用して、非同期でサーバに接続およびメッセージを受信している。
また、タイムアウトが発生した場合の再試行処理や高度なエラー処理等も追加することを推奨する。
using System;
using System.Text;
using System.IO;
using System.Threading.Tasks;
using System.Net.Sockets;
class AsyncTcpClientReceiver
{
static async Task Main(string[] args)
{
string server = "<ホスト名またはIPアドレス>"; // サーバーのアドレス
int port = <ポート番号>; // ポート番号
int timeoutMilliseconds = 5000; // タイムアウト(ミリ秒)
try
{
using (TcpClient client = new TcpClient())
{
// サーバへ接続
var connectTask = client.ConnectAsync(server, port);
// サーバへの接続が確立するまで待機
if (await Task.WhenAny(connectTask, Task.Delay(timeoutMilliseconds)) != connectTask)
{ // タイムアウトが発生した場合
throw new TimeoutException("エラー: サーバへの接続がタイムアウト");
}
using (NetworkStream stream = client.GetStream())
{ // サーバへメッセージを送信
byte[] data = new byte[256];
var readTask = stream.ReadAsync(data, 0, data.Length);
if (await Task.WhenAny(readTask, Task.Delay(timeoutMilliseconds)) != readTask)
{
throw new TimeoutException("エラー: メッセージの受信がタイムアウト");
}
int bytes = await readTask;
string responseData = Encoding.UTF8.GetString(data, 0, bytes);
Console.WriteLine($"受信メッセージ: {responseData}");
}
}
}
catch (ArgumentNullException e)
{ // 無効な引数が渡された場合
Console.WriteLine($"ArgumentNullException: {e.Message}");
}
catch (SocketException e)
{ // ネットワーク関連のエラーが発生した場合
Console.WriteLine($"SocketException: {e.Message}");
}
catch (IOException e)
{ // ストリームの読み書き中にエラーが発生した場合
Console.WriteLine($"IOException: {e.Message}");
}
catch (TimeoutException e)
{ // タイムアウトが発生した場合
Console.WriteLine($"TimeoutException: {e.Message}");
}
catch (Exception e)
{ // その他の予期せぬエラーが発生した場合
Console.WriteLine($"予期せぬエラーが発生: {e.Message}");
}
}
}