Rustの基礎 - グラフ

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概要

ここでは、RustでGUIアプリケーションを作成し、グラフを表示する方法を記載する。


Rustでのグラフ描画について

Rustには、グラフを描画するための複数のライブラリとアプローチが存在する。
主なアプローチとしては、以下に示すようなものがある。

  • plotters
    Rustネイティブのプロット作成ライブラリ
  • eframe + egui_plot
    GUIフレームワークとプロット機能の組み合わせ
    eframe (egui) は、Rustで書かれたイミディエートモードGUIライブラリであり、WebAssemblyにも対応している。
  • gtk-rs + Cairo
    GTKとCairoを使用した描画


eframe (egui) はRustの標準ライブラリではないため、プロジェクトのCargo.tomlに依存関係を追加する必要がある。
以下に示すように、Cargo.tomlの[dependencies]セクションに追加する。

 [dependencies]
 eframe = "0.24"
 egui_plot = "0.24"


依存関係を追加した後、以下に示すコマンドを実行してライブラリをダウンロードしてビルドする。

cargo build


eframe(egui)について詳しく知りたい場合は、GitHubリポジトリ公式ドキュメントを参照すること。


plottersライブラリ

plottersライブラリとは

plottersは、Rustで書かれたデータ可視化ライブラリである。

このライブラリの大きな特徴は、バックエンドに依存しない設計となっている点である。
つまり、同じコードで、画像ファイル(PNG、JPEG)、ベクターグラフィックス(SVG)、HTMLキャンバス、ビットマップバッファ等、様々な出力形式にグラフを描画できる。

plottersは、科学技術計算や統計分析の分野で特に威力を発揮する。
グラフを画像ファイルやSVGとして出力する場合に適している。
複雑な統計グラフ、ヒートマップ、3Dプロット、複数のサブプロットの配置等、高度な可視化要件にも対応できる柔軟性を持っている。
また、パフォーマンスにも優れており、大量のデータポイントを効率的に描画できる。

その他、バッチ処理でレポートを生成、大量のデータを一度に可視化する場合は、plottersが向いている。

Cargo.tomlに以下に示す依存関係を追加する。

 [dependencies]
 plotters = "0.3"


plottersについて詳しく知りたい場合は、GitHubリポジトリ公式ドキュメントを参照すること。
また、Plotters Developer's Guideには、実践的なチュートリアルと豊富なサンプルコードが掲載されている。

plottersで作成するグラフ : 基本

plottersでグラフを作成する基本的な流れを以下に示す。

  1. まず、描画先のバックエンドを作成する。
  2. 次に、描画領域(DrawingArea)を定義して、その中にチャートを構築する。
  3. 最後に、データ系列を描画する。


このフローは、他のプロットライブラリと比べると手続き的であるだが、細かい制御が可能になっている。

以下の例では、sin関数とcos関数のグラフをPNG画像として出力している。

 use plotters::prelude::*;
 
 fn main() -> Result<(), Box<dyn std::error::Error>> {
    // PNGファイルへの描画バックエンドを作成
    // 画像サイズは800x600ピクセル
    let root = BitMapBackend::new("output.png", (800, 600))
       .into_drawing_area();
 
    // 背景を白色で塗りつぶす
    root.fill(&WHITE)?;
 
    // チャートを構築する
    // x軸の範囲: -3.14から3.14(-πからπ)
    // y軸の範囲: -1.5から1.5
    let mut chart = ChartBuilder::on(&root)
       .caption("Sin波とCos波のグラフ", ("sans-serif", 40).into_font())
       .margin(10)
       .x_label_area_size(30)
       .y_label_area_size(30)
       .build_cartesian_2d(-3.14f64..3.14f64, -1.5f64..1.5f64)?;
 
    // メッシュ (グリッド線) を描画
     chart.configure_mesh().draw()?;
 
    // Sin波のデータを生成して描画
    // -π〜πまでを100分割してプロット
    chart
       .draw_series(LineSeries::new(
          (-314..314).map(|x| {
             let x = x as f64 / 100.0;
             (x, x.sin())
          }),
          &RED,
       ))?
       .label("y = sin(x)")
       .legend(|(x, y)| PathElement::new(vec![(x, y), (x + 20, y)], &RED));
 
     // Cos波のデータを生成して描画
     chart
        .draw_series(LineSeries::new(
           (-314..314).map(|x| {
              let x = x as f64 / 100.0;
              (x, x.cos())
           }),
           &BLUE,
        ))?
        .label("y = cos(x)")
        .legend(|(x, y)| PathElement::new(vec![(x, y), (x + 20, y)], &BLUE));
 
    // 凡例を描画
    chart
       .configure_series_labels()
       .background_style(&WHITE.mix(0.8))
       .border_style(&BLACK)
       .draw()?;
 
    // バックエンドに描画内容を書き込む
    root.present()?;
 
    println!("グラフをoutput.pngに保存しました");
 
    Ok(())
 }


注目すべき点は、ChartBuilderを使ってチャートの設定を段階的に構築している部分である。
captionでタイトルを設定、marginで余白を指定、ラベル領域のサイズを設定している。

このようなビルダーパターンは、Rustで広く仕様されている設計手法である。

また、draw_seriesメソッドで系列を描画した後、labelとlegendメソッドをチェーンすることにより、凡例に表示される情報を設定できる。

plottersで作成するグラフ : データ分析

統計分析では、外部ファイルからデータを読み込む場面が頻繁に発生する。

CSVファイルを扱うために、CSVクレートを使用する。
そのため、Cargo.tomlに以下に示す設定を追加する。

 [dependencies]
 plotters = "0.3"
 csv = "1.3"
 serde = { version = "1.0", features = ["derive"] }


以下の例では、月ごとの売上データを記録したCSVファイルを読み込み、棒グラフとして可視化している。
複数の系列 (今年度と前年度の比較等) を表示することにより、データの傾向を把握しやすくなる。

 "month","current_year","previous_year"
 "1","120","100"
 "2","135","110"
 "3","150","125"
 "4","145","130"
 "5","160","140"
 "6","175","155"
 "7","180","160"
 "8","185","165"
 "9","190","170"
 "10","195","175"
 "11","200","180"
 "12","210","185"


 use plotters::prelude::*;
 use serde::Deserialize;
 use std::error::Error;
 
 // CSVの行を表す構造体
 #[derive(Debug, Deserialize)]
 struct SalesData {
    month: u32,
    current_year: f64,
    previous_year: f64,
 }
 
 fn main() -> Result<(), Box<dyn Error>> {
    // CSVファイルを読み込む
    let mut reader = csv::Reader::from_path("data.csv")?;
    let mut data: Vec<SalesData> = Vec::new();
 
    for result in reader.deserialize() {
       let record: SalesData = result?;
       data.push(record);
    }
 
    // 描画の準備
    let root = BitMapBackend::new("sales_chart.png", (1024, 768))
       .into_drawing_area();
    root.fill(&WHITE)?;
 
    // チャートの構築
    let mut chart = ChartBuilder::on(&root)
       .caption("月別売上比較(今年度 vs 前年度)", ("sans-serif", 50))
       .margin(20)
       .x_label_area_size(40)
       .y_label_area_size(50)
       .build_cartesian_2d(0f64..13f64, 0f64..250f64)?;
 
    // メッシュの設定と描画
    chart
       .configure_mesh()
       .x_desc("月")
       .y_desc("売上 (万円)")
       .x_labels(12)
       .y_labels(10)
       .draw()?;
 
    // 今年度のデータを棒グラフとして描画
    chart.draw_series(
       data.iter().map(|d| {
          let x = d.month as f64;
          // 棒の幅を0.3に設定し、x座標から0.15左にオフセット
          Rectangle::new(
             [(x - 0.15, 0.0), (x + 0.15, d.current_year)],
             BLUE.filled(),
          )
       }),
    )?
    .label("今年度")
    .legend(|(x, y)| Rectangle::new([(x, y - 5), (x + 15, y + 5)], BLUE.filled()));
 
    // 前年度のデータを棒グラフとして描画
    // 今年度の棒と重ならないように、少し右側にオフセット
    chart.draw_series(
       data.iter().map(|d| {
          let x = d.month as f64 + 0.3;
          Rectangle::new(
             [(x - 0.15, 0.0), (x + 0.15, d.previous_year)],
             RED.filled(),
          )
       }),
    )?
    .label("前年度")
    .legend(|(x, y)| Rectangle::new([(x, y - 5), (x + 15, y + 5)], RED.filled()));
 
    // 凡例を描画
    chart
       .configure_series_labels()
       .background_style(&WHITE.mix(0.8))
       .border_style(&BLACK)
       .draw()?;
 
    root.present()?;
 
    println!("売上グラフをsales_chart.pngに保存しました");
 
    Ok(())
 }


serdeクレートのDeserializeトレイトを使用して、CSVの各行を構造体に自動的にマッピングしている。
これにより、型安全にデータを扱うことができ、コンパイル時にデータ構造の誤りを検出することができる。

棒グラフの描画では、Rectangleを使用して各月の売上を矩形として表現している。
今年度と前年度のデータを並べて表示するために、x座標を少しずつずらして配置している。
このように細かい調整が可能なのが、plottersの柔軟性の高さを示している。

また、configure_meshメソッドで軸のラベルや目盛りの数を詳細に制御できる。
x_descとy_descで軸の説明を追加し、x_labelsとy_labelsで目盛りの数を指定している。

これらの設定により、グラフが読みやすくなる。

plottersで作成するグラフ : Webアプリケーション

plottersのメリットの1つは、バックエンドを切り替えるだけで、異なる出力形式に対応できる点である。

SVGはベクター形式のため、拡大しても画質が劣化せず、Webページへの埋め込みにも適している。

BitMapBackendをSVGBackendに変更するだけで、その他はほとんど変更せずに済むという点である。

 use plotters::prelude::*;
 
 fn main() -> Result<(), Box<dyn std::error::Error>> {
    // SVGファイルへの描画バックエンドを作成
    let root = SVGBackend::new("output.svg", (800, 600))
       .into_drawing_area();
 
    root.fill(&WHITE)?;
 
    let mut chart = ChartBuilder::on(&root)
       .caption("Sin波とCos波のグラフ(SVG版)", ("sans-serif", 40))
       .margin(10)
       .x_label_area_size(30)
       .y_label_area_size(30)
       .build_cartesian_2d(-3.14f64..3.14f64, -1.5f64..1.5f64)?;
 
    chart.configure_mesh().draw()?;
 
    // Sin波を描画
    chart
       .draw_series(LineSeries::new(
          (-314..314).map(|x| {
             let x = x as f64 / 100.0;
             (x, x.sin())
          }),
          &RED,
       ))?
       .label("y = sin(x)")
       .legend(|(x, y)| PathElement::new(vec![(x, y), (x + 20, y)], &RED));
 
    // Cos波を描画
    chart
       .draw_series(LineSeries::new(
          (-314..314).map(|x| {
             let x = x as f64 / 100.0;
             (x, x.cos())
          }),
          &BLUE,
       ))?
       .label("y = cos(x)")
       .legend(|(x, y)| PathElement::new(vec![(x, y), (x + 20, y)], &BLUE));
 
    chart
       .configure_series_labels()
       .background_style(&WHITE.mix(0.8))
       .border_style(&BLACK)
       .draw()?;
 
    root.present()?;
 
    println!("グラフをoutput.svgに保存しました");
 
    Ok(())
 }


生成されたSVGファイルは、Webブラウザで直接開いて表示できる。
また、HTMLファイルに埋め込むことで、Webページ上でインタラクティブな要素として利用することも可能である。

さらに、plottersはWebAssemblyにも対応しており、CanvasBackendを使用することにより、Webブラウザ上のHTMLキャンバス要素に直接描画することができる。
これにより、完全にRustで記述したWebアプリケーションで、動的なグラフ表示を実現できる。


その他

Rustでグラフ描画を行う場合、言語の特性として以下に示す事柄に注意する。

Rustは所有権システムとライフタイムという独自の概念を持っており、これによりメモリ安全性とスレッド安全性が保証される。
GUIアプリケーションにおいても、この恩恵を受けることができ、実行時エラーやメモリリークのリスクを大幅に減らすことができる。

また、Rustはゼロコスト抽象化を提供するため、高レベルな記述でありながら、C/C++に匹敵するパフォーマンスを実現できる。
これは、大量のデータをプロットする場合や、リアルタイムでグラフを更新する場合に特に有利である。

Rustのエコシステムは活発に発展しており、新しいライブラリやツールが日々登場している。
公式のクレートレジストリであるcrates.iodocs.rsのドキュメントを定期的に確認することを推奨する。