「Qtの基礎 - 終了処理」の版間の差分
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また、<code>QObject::deleteLater()</code>メソッドを使用して、イベントループの次の反復時にオブジェクトを安全に削除することもできる。<br> | |||
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メモリリークを防ぐために、動的に割り当てられたリソースを適切に解放することが重要である。<br> | |||
Qtのオブジェクト所有システムを活用すると、多くの場合、明示的なメモリ管理が不要になる。<br> | |||
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エラーハンドリングも終了処理の重要である。<br> | |||
例外が捕捉されずにメイン関数を抜ける場合、プログラムがクラッシュする可能性がある。<br> | |||
そのため、適切な例外処理を実装することが推奨される。<br> | |||
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2024年9月4日 (水) 00:19時点における版
概要
Qtアプリケーションの終了は、いくつかの段階を経て行われる。
まず、アプリケーションの終了が開始される時、QCoreApplication::aboutToQuit()
シグナルが発行される。
このシグナルは、アプリケーションが終了する直前に発生するため、重要なクリーンアップ作業を行うのに適している。
次に、QApplication::exec()
メソッドから制御が戻る。
これにより、メインイベントループが終了して、アプリケーションの実行が停止する。
GUIでは、この時点で、Qtは自動的に全ての子ウィジェットを削除する。
これには、トップレベルウィンドウやダイアログも含まれる。
その後、グローバルなstaticオブジェクトのデストラクタが呼び出される。
これらのオブジェクトは、逆構築順序で破棄される。つまり、最後に作成されたオブジェクトが最初に破棄される。
最後に、メイン関数からreturn文が実行されて、プログラムが完全に終了する。
Qtアプリケーションの終了をカスタマイズする方法もある。
例えば、QApplication::setQuitOnLastWindowClosed(false)
を呼び出すことにより、
最後のウインドウが閉じられてもアプリケーションが終了しないようにすることができる。
また、QObject::deleteLater()
メソッドを使用して、イベントループの次の反復時にオブジェクトを安全に削除することもできる。
メモリリークを防ぐために、動的に割り当てられたリソースを適切に解放することが重要である。
Qtのオブジェクト所有システムを活用すると、多くの場合、明示的なメモリ管理が不要になる。
エラーハンドリングも終了処理の重要である。
例外が捕捉されずにメイン関数を抜ける場合、プログラムがクラッシュする可能性がある。
そのため、適切な例外処理を実装することが推奨される。
コンソールアプリケーション
QCoreApplication::quit()
メソッドおよびQCoreApplication::exit()
において、
両方ともアプリケーションを終了するために使用するが、動作と使用場面が異なる。
使用の指針を以下に示す。
- 一般的な状況では、
QCoreApplication::quit()
メソッドの使用を推奨する。
これは、イベントループを適切に終了して、保留中のイベントを処理する機会を与える。 QCoreApplication::exit()
メソッドは、
即座にアプリケーションを終了する必要がある場合 (例: クリティカルなエラーが発生した場合) や特定の終了コードを返す必要がある場合に使用する。- GUIアプリケーションでは、
QCoreApplication::quit()
メソッドの使用を推奨する。
これにより、ウインドウを適切に閉じて、リソースをクリーンアップする機会が与えられる。 - コンソールアプリケーションでは、
QCoreApplication::quit()
メソッドでもよいが、
特定の終了コードが必要な場合は、QCoreApplication::exit()
メソッドを使用することがある。
QCoreApplication::quit()
QCoreApplication::quit()
メソッドは、シグナルとして実装されている。
非同期で動作して、イベントループを安全に終了させることができる。
(イベントループの次の反復時に処理される)
戻り値はない。
一般的に、スロットとして接続、または、QTimer::singleShot()
と組み合わせて使用する。
以下の例では、QCoreApplication::quit()メソッドはシグナルとして動作するため、関数呼び出しは即座に戻り、次の行が実行される。
アプリケーションは次のイベントループの反復時に終了する。
// 使用例
#include <QCoreApplication>
#include <QTimer>
#include <iostream>
void useQuit()
{
std::cout << "Calling quit()..." << std::endl;
QCoreApplication::quit();
std::cout << "This line will be executed." << std::endl;
}
int main(int argc, char *argv[])
{
QCoreApplication a(argc, argv);
// QCoreApplication::quit()の例
QTimer::singleShot(1000, useQuit);
return a.exec();
}
QCoreApplication::exit()
QCoreApplication::exit(int returnCode = 0)
は、通常のメソッドとして実装されている。
同期的に動作して、イベントループを即座に終了させることができる。
(呼び出された時点で即座に処理される)
整数の戻り値を受け取り、それをアプリケーションの終了コードとして使用する。
特定の終了コードでアプリケーションを終了させる場合に使用する。
以下の例では、QCoreApplication::exit(0)メソッドが呼び出された直後にアプリケーションが終了するため、2番目のcout文は実行されない。
#include <QCoreApplication>
#include <iostream>
void useExit()
{
std::cout << "Calling exit()..." << std::endl;
QCoreApplication::exit(0);
std::cout << "This line will NOT be executed." << std::endl;
}
int main(int argc, char *argv[])
{
QCoreApplication a(argc, argv);
// QCoreApplication::exit()の例
QTimer::singleShot(1000, useExit);
return a.exec();
}