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== バリスタとは ==
== バリスタとは ==
バリスタとは、印加電圧が低い場合は抵抗値が大きく、印加電圧が高い場合は抵抗値が小さくなる性質を持っている。<br>
バリスタとは、印加電圧が低い場合は抵抗値が大きく、印加電圧が高い場合は抵抗値が小さくなる性質を持っている。<br>
可変抵抗(ボリューム)とは異なり、線形的に変化するわけではなく、ある電圧で急激に変化するのが特徴である。<br>
可変抵抗(ボリューム)とは異なり、線形的に変化するわけではなく(電圧と電流が比例関係ではない)、ある電圧で急激に変化するのが特徴である。<br>
また、ツェナーダイオードと異なり、<u>電流-電圧特性が対称なので極性がない</u>。
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電気的特性を見ると、抵抗値が変化する電圧というのは極性があり、<br>
電気的特性を見ると、抵抗値が変化する電圧というのは極性があり、<br>
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つまり、通常時は抵抗値が高く電流はほぼ流れないが、過電圧が印加された時のみ電流を流すことで、後段(周辺)の回路を保護することができる。<br>
つまり、通常時は抵抗値が高く電流はほぼ流れないが、過電圧が印加された時のみ電流を流すことで、後段(周辺)の回路を保護することができる。<br>
バリスタは抵抗値が変化する特徴を活かして、保護素子として回路の役に立つ。<br>
バリスタは抵抗値が変化する特徴を活かして、保護素子として回路の役に立つ。<br>
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電圧によって抵抗値が変化する特性を利用して、静電気からICなどの素子を保護したり、雷サージから電子機器を保護するために使用する。<br>
バリスタが無い場合、静電気や雷サージなどの異常電圧が印可されて、電子機器の誤動作や破壊される恐れがある。<br>
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バリスタに高電圧が印可された場合、バリスタの抵抗値が低くなるためバリスタに電流が流れる。<br>
電流が流れると、回路のラインインピーダンスで電圧降下が生じる。<br>
その結果、素子や電子機器に印加される電圧を低くすることができる。<br>
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== バリスタの等価回路 ==
バリスタの等価回路は、下図のように、2つのツェナーダイオードを逆向き接続したものにコンデンサを並列接続させた構成となる。<br>
等価回路から以下の特徴が分かる。<br>
* バリスタにはコンデンサ成分がある。
*: バリスタに印加される電圧が低くバリスタが高抵抗の時は、数十[pF]~数千[pF]の静電容量がある。
* バリスタには極性が無い。
*: ツェナーダイオードが双方向に接続されているため、バリスタには極性が無い。
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== バリスタの特性 ==
バリスタの特性は下図のようになる。<br>
バリスタにかかる電圧とバリスタに流れる電流の特性が赤線です。バリスタにかかる電圧が低いときは高抵抗、高いときは低抵抗になる。<br>
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バリスタ特性は次式で表される。<br>
ここで、Kは素子固有の定数、αは電圧非直線係数(または、α係数とも呼ばれる)である。<br>
<math>I = K V^{\alpha} \mbox {[A]}</math><br>
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低抵抗から高抵抗に移行する点を屈曲点という。<br>
この屈曲点以降の曲率を表すのが電圧非直線係数αである。<br>
電圧非直線係数αにおいて、酸化亜鉛ZnOを使用したものが他の種類のバリスタに比べて大きく優れており、ツェナーダイオードに近い値となっている。<br>
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== バリスタの選定 ==
== バリスタの選定 ==
バリスタを選定するにあたり、確認することは下記の4つである。<br>
バリスタを選定するにあたり、確認することは下記の4つである。<br>
'''1. バリスタ電圧'''<br>
'''2. 最大許容電圧'''<br>
'''3. 制限電圧'''<br>
'''4. サージ電流耐量'''<br>
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'''1. バリスタ電圧'''<br>
バリスタ電圧とは、バリスタの抵抗値が下がって電流が流れ始める電圧のことをいう。<br>
一般的な小型のバリスタでは、0.1[mA] - 1[mA]の電流が流れる時の電圧を指すことが多いが、<br>
データシートを確認してバリスタ電圧の定義がどのように決められているか確認する。<br>
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'''2. 最大許容電圧'''<br>
最大許容電圧とは、バリスタ電圧より低い電圧(抵抗値が高い状態で印可する電圧)を印可する場合に、<br>
バリスタに連続して印加できる電圧の最大値を表す。<br>
電源電圧(過電圧ではない)は常に印加されているが、常に印加されている電圧についてもバリスタに影響を与えないか確認する。<br>
常に印加する電圧と最大許容電圧(AC / DCは別)を比較して選定する必要がある。<br>
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'''3. 制限電圧'''<br>
バリスタに所定のインパルス電流(8 / 20[us])を流した時の端子間電圧のこと。<br>
バリスタのデータシートにインパルス電流の大きさごとに制限電圧を記載している場合がある。<br>
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'''4. サージ電流耐量'''<br>
# '''バリスタ電圧'''
サージ電流が流れた時、バリスタが耐えることができる最大電流のこと。<br>
#: バリスタ電圧とは、バリスタの抵抗値が下がって電流が流れ始める電圧のことをいう。
どの程度のサージ電流を吸収するか確認できる。<br>
#: 一般的な小型のバリスタでは、0.1[mA]〜1[mA]の電流が流れる時の電圧を指すことが多いが、
#: データシートを確認してバリスタ電圧の定義がどのように決められているか確認する。
#: <br>
# '''最大許容電圧'''
#: 最大許容電圧とは、バリスタ電圧より低い電圧(抵抗値が高い状態で印可する電圧)を印可する場合に、
#: バリスタに連続して印加できる電圧の最大値を表す。
#: 電源電圧(過電圧ではない)は常に印加されているが、常に印加されている電圧についてもバリスタに影響を与えないか確認する。
#: 常に印加する電圧と最大許容電圧(AC / DCは別)を比較して選定する必要がある。
#: <br>
# '''制限電圧'''
#: バリスタに所定のインパルス電流(8 / 20[us])を流した時の端子間電圧のこと。
#: バリスタのデータシートにインパルス電流の大きさごとに制限電圧を記載している場合がある。
#: <br>
# '''サージ電流耐量'''
#: サージ電流が流れた時、バリスタが耐えることができる最大電流のこと。
#: どの程度のサージ電流を吸収するか確認できる。
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__FORCETOC__
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[[カテゴリ:電子回路]]
[[カテゴリ:電子部品]]

2020年8月11日 (火) 11:58時点における最新版

バリスタとは

バリスタとは、印加電圧が低い場合は抵抗値が大きく、印加電圧が高い場合は抵抗値が小さくなる性質を持っている。
可変抵抗(ボリューム)とは異なり、線形的に変化するわけではなく(電圧と電流が比例関係ではない)、ある電圧で急激に変化するのが特徴である。
また、ツェナーダイオードと異なり、電流-電圧特性が対称なので極性がない

Electronic Parts Varistor 1.jpg


電気的特性を見ると、抵抗値が変化する電圧というのは極性があり、
正電圧が所定以上印加もしくは負電圧が所定以上印加のどちらかで抵抗値が急激に下がる。

つまり、通常時は抵抗値が高く電流はほぼ流れないが、過電圧が印加された時のみ電流を流すことで、後段(周辺)の回路を保護することができる。
バリスタは抵抗値が変化する特徴を活かして、保護素子として回路の役に立つ。


電圧によって抵抗値が変化する特性を利用して、静電気からICなどの素子を保護したり、雷サージから電子機器を保護するために使用する。
バリスタが無い場合、静電気や雷サージなどの異常電圧が印可されて、電子機器の誤動作や破壊される恐れがある。

バリスタに高電圧が印可された場合、バリスタの抵抗値が低くなるためバリスタに電流が流れる。
電流が流れると、回路のラインインピーダンスで電圧降下が生じる。
その結果、素子や電子機器に印加される電圧を低くすることができる。

Electronic Parts Varistor 2.jpg



バリスタの等価回路

バリスタの等価回路は、下図のように、2つのツェナーダイオードを逆向き接続したものにコンデンサを並列接続させた構成となる。
等価回路から以下の特徴が分かる。

  • バリスタにはコンデンサ成分がある。
    バリスタに印加される電圧が低くバリスタが高抵抗の時は、数十[pF]~数千[pF]の静電容量がある。
  • バリスタには極性が無い。
    ツェナーダイオードが双方向に接続されているため、バリスタには極性が無い。
Electronic Parts Varistor 3.jpg



バリスタの特性

バリスタの特性は下図のようになる。
バリスタにかかる電圧とバリスタに流れる電流の特性が赤線です。バリスタにかかる電圧が低いときは高抵抗、高いときは低抵抗になる。

Electronic Parts Varistor 4.jpg


バリスタ特性は次式で表される。
ここで、Kは素子固有の定数、αは電圧非直線係数(または、α係数とも呼ばれる)である。


低抵抗から高抵抗に移行する点を屈曲点という。
この屈曲点以降の曲率を表すのが電圧非直線係数αである。
電圧非直線係数αにおいて、酸化亜鉛ZnOを使用したものが他の種類のバリスタに比べて大きく優れており、ツェナーダイオードに近い値となっている。


サージ電圧吸収用としてのバリスタ

バリスタは、ある電圧(バリスタ電圧)を超えた時に抵抗値が低くなる特徴を活かして、主に電源回路のサージ電圧吸収用として使用される。
バリスタには極性がないため、AC / DCの両方に使用することができる。

電源回路は、静電気や雷サージの影響により故障する可能性があるため、保護しなければならない。
そこで、バリスタがあれば、静電気や雷サージで発生する高電圧を吸収して、回路への影響を抑えることができる。

一般的に、AC100[V]には270[V]仕様、AC230[V品]は470[V]仕様のバリスタを使用することが多い。

NOTE
静電気 :
人体には3000[V]から10[kV]を超える静電気を纏う可能性がある。
帯電している状態で回路に触れた場合、回路には数千[V]の電圧が印加される。

雷サージ :
落雷の影響で3000[V]から4500[V]の電圧が回路に印加されることを雷サージという。


バリスタの選定

バリスタを選定するにあたり、確認することは下記の4つである。

  1. バリスタ電圧
    バリスタ電圧とは、バリスタの抵抗値が下がって電流が流れ始める電圧のことをいう。
    一般的な小型のバリスタでは、0.1[mA]〜1[mA]の電流が流れる時の電圧を指すことが多いが、
    データシートを確認してバリスタ電圧の定義がどのように決められているか確認する。

  2. 最大許容電圧
    最大許容電圧とは、バリスタ電圧より低い電圧(抵抗値が高い状態で印可する電圧)を印可する場合に、
    バリスタに連続して印加できる電圧の最大値を表す。
    電源電圧(過電圧ではない)は常に印加されているが、常に印加されている電圧についてもバリスタに影響を与えないか確認する。
    常に印加する電圧と最大許容電圧(AC / DCは別)を比較して選定する必要がある。

  3. 制限電圧
    バリスタに所定のインパルス電流(8 / 20[us])を流した時の端子間電圧のこと。
    バリスタのデータシートにインパルス電流の大きさごとに制限電圧を記載している場合がある。

  4. サージ電流耐量
    サージ電流が流れた時、バリスタが耐えることができる最大電流のこと。
    どの程度のサージ電流を吸収するか確認できる。