📢 Webサイト閉鎖と移転のお知らせ
このWebサイトは2026年9月に閉鎖いたします。
新しい記事は移転先で追加しております。(旧サイトでは記事を追加しておりません)
| (同じ利用者による、間の8版が非表示) | |||
| 73行目: | 73行目: | ||
傾きが-40[dB/dec]に変化する1/πtsの周波数は低くなるが、結果的に以後の振幅が減少することになる。<br> | 傾きが-40[dB/dec]に変化する1/πtsの周波数は低くなるが、結果的に以後の振幅が減少することになる。<br> | ||
端的に言えば、tsを遅くするとスペクトラムの振幅が減衰することになる。<br> | 端的に言えば、tsを遅くするとスペクトラムの振幅が減衰することになる。<br> | ||
[[ファイル:Electronic Circuit EMC 1.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>図. スイッチング電源のパルス波形のスペクトラム</center><br> | <center>図. スイッチング電源のパルス波形のスペクトラム</center><br> | ||
<br> | <br> | ||
==== 波形変化とスペクトラムの変化 ==== | ==== 波形変化とスペクトラムの変化 ==== | ||
このセクションでは、スペクトラムアナライザのデータを使用して、周波数等の他のパラメータの変化に対するスペクトラムの変化を見る。<br> | このセクションでは、スペクトラムアナライザのデータを使用して、周波数等の他のパラメータの変化に対するスペクトラムの変化を見る。<br> | ||
| 82行目: | 83行目: | ||
これは、スイッチング電源回路のスイッチングに関するスペクトラムから、EMCへの対応を解析して対策するために必要な知識である。<br> | これは、スイッチング電源回路のスイッチングに関するスペクトラムから、EMCへの対応を解析して対策するために必要な知識である。<br> | ||
<br> | <br> | ||
下図のグラフは、比較の元となるデフォルト条件でのデータである。<br> | |||
条件は、振幅10[V]、周波数400[kHz]、Duty(デューティサイクル)50[%]、tr/tf(立ち上がり時間 / 立ち下がり時間)10[ns]としている。<br> | 条件は、振幅10[V]、周波数400[kHz]、Duty(デューティサイクル)50[%]、tr/tf(立ち上がり時間 / 立ち下がり時間)10[ns]としている。<br> | ||
<br> | <br> | ||
| 92行目: | 93行目: | ||
下図右のグラフは、振幅を[dBµV]とした対数グラフである。<br> | 下図右のグラフは、振幅を[dBµV]とした対数グラフである。<br> | ||
[dBμV]は、1µVの電圧を基準とする電圧比によるデシベル値である。<br> | [dBμV]は、1µVの電圧を基準とする電圧比によるデシベル値である。<br> | ||
[[ファイル:Electronic Circuit EMC 2.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>図. </center><br> | <center>図. デフォルト条件の測定データ</center><br> | ||
<br> | <br> | ||
# 周波数を2[MHz]に変更したスペクトラム。<br>周波数 - 振幅(dBµV)のグラフで明らかなように、周波数が高くなると全体的に振幅が増加していることがわかる。 | # 周波数を2[MHz]に変更したスペクトラム。<br>周波数 - 振幅(dBµV)のグラフで明らかなように、周波数が高くなると全体的に振幅が増加していることがわかる。 | ||
#: <center>図. </center> | #: [[ファイル:Electronic Circuit EMC 3.jpg|フレームなし|中央]] | ||
#: <center>図. 周波数のみ2[MHz]に変更した測定データ</center> | |||
#: <br> | #: <br> | ||
# trとtfの両方を100[ns] | # trとtfの両方を100[ns]に変更(遅延)したスペクトラム。<br>これは上記の図で記載した通り、-40[dB/dec]の減衰に入る周波数が低くなり、スペクトラムの振幅は減衰する。 | ||
#: <center>図. </center> | #: [[ファイル:Electronic Circuit EMC 4.jpg|フレームなし|中央]] | ||
#: <center>図. trとtfの両方を100[ns]に変更した測定したデータ</center> | |||
#: <br> | #: <br> | ||
# Dutyを50[%]から20[%] | # Dutyを50[%]から20[%]に変更したスペクトラム。<br>Dutyが1:1ではないため、偶数次高調波が発生するが、基本的にピークには変動はない。<br>パルス幅twが狭くなったことで、基本波のスペクトラムの振幅は減衰する。 | ||
#: <center>図. </center> | #: [[ファイル:Electronic Circuit EMC 5.jpg|フレームなし|中央]] | ||
#: <center>図. Dutyを50[%]から20[%]に変更した測定データ</center> | |||
#: <br> | #: <br> | ||
# 下図は、tr(立ち上がり時間) | # 下図は、tr(立ち上がり時間)のみを変更(遅延)した場合のグラフである。<br>trに関する成分が、trが遅くなったことでより低い周波数から減衰している。 | ||
#: <center>図. </center> | #: [[ファイル:Electronic Circuit EMC 6.jpg|フレームなし|中央]] | ||
#: <center>図. tr(立ち上がり時間)のみを変更した測定データ</center> | |||
<br> | <br> | ||
上図のグラフより、周波数が低く、立ち上がり / 立ち下がりが遅い場合、スペクトラムは減衰することがわかる。 | 上図のグラフより、周波数が低く、立ち上がり / 立ち下がりが遅い場合、スペクトラムは減衰することがわかる。 | ||
| 127行目: | 131行目: | ||
<br><br> | <br><br> | ||
== ノーマル | == ディファレンシャル(ノーマル)モードノイズとコモンモードノイズ : 原因と対策 == | ||
電磁妨害EMIは、伝導ノイズと放射ノイズの2種類ある。<br> | 電磁妨害EMIは、伝導ノイズと放射ノイズの2種類ある。<br> | ||
そのうち、伝導ノイズは伝導の仕方によって、ディファレンシャル(ノーマル)モードノイズとコモンモードノイズの2種類に分類できる。<br> | そのうち、伝導ノイズは伝導の仕方によって、ディファレンシャル(ノーマル)モードノイズとコモンモードノイズの2種類に分類できる。<br> | ||
| 143行目: | 147行目: | ||
*: 電源の+側と-側で流れるノイズ電流の向きが同じことから、コモンモードと呼ばれる。 | *: 電源の+側と-側で流れるノイズ電流の向きが同じことから、コモンモードと呼ばれる。 | ||
*: 電源ライン間には、ノイズ電圧は発生しない。 | *: 電源ライン間には、ノイズ電圧は発生しない。 | ||
[[ファイル:Electronic Circuit EMC 7.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>図. ディファレンシャル(ノーマル)モードノイズとコモンモードノイズの違い</center><br> | |||
<br> | <br> | ||
これらは伝導ノイズであるが、電源ラインにノイズ電流が流れるため、ノイズは放射される。<br> | これらは伝導ノイズであるが、電源ラインにノイズ電流が流れるため、ノイズは放射される。<br> | ||
| 148行目: | 154行目: | ||
ディファレンシャルモードノイズによる放射の電界強度Edは、下図左の式で表すことができる。<br> | ディファレンシャルモードノイズによる放射の電界強度Edは、下図左の式で表すことができる。<br> | ||
ここで、Idはディファレンシャルモードでのノイズ電流、rは観測点までの距離、fはノイズ周波数である。<br> | ここで、Idはディファレンシャルモードでのノイズ電流、rは観測点までの距離、fはノイズ周波数である。<br> | ||
<math>E_d \propto \frac{I_d \times f^2 \times S}{r} \, \mbox{[V/m]}</math><br> | |||
<br> | <br> | ||
ディファレンシャルモードノイズは、ノイズ電流ループが作られるので、ループ面積Sが重要なファクタになる。<br> | ディファレンシャルモードノイズは、ノイズ電流ループが作られるので、ループ面積Sが重要なファクタになる。<br> | ||
| 154行目: | 161行目: | ||
コモンモードノイズによる放射の電界強度Ecは、下図右の式で表すことができる。<br> | コモンモードノイズによる放射の電界強度Ecは、下図右の式で表すことができる。<br> | ||
図と式が示すように、ケーブル長Lが重要なファクタになる。<br> | 図と式が示すように、ケーブル長Lが重要なファクタになる。<br> | ||
<math>E_c \propto \frac{I_c \times f^2 \times L}{r} \, \mbox{[V/m]}</math><br> | |||
<center>図. </center><br> | <br> | ||
[[ファイル:Electronic Circuit EMC 8.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>図. ディファレンシャルモードノイズとコモンモードノイズによる放射</center><br> | |||
<br> | <br> | ||
ここで、それぞれのノイズによる放射の特徴を確認するために、実際の数値を入れて電界強度を計算する。(条件は同じ)<br> | ここで、それぞれのノイズによる放射の特徴を確認するために、実際の数値を入れて電界強度を計算する。(条件は同じ)<br> | ||
電界強度の観測点を青色のドットで示す。<br> | 電界強度の観測点を青色のドットで示す。<br> | ||
[[ファイル:Electronic Circuit EMC 9.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>図. </center><br> | <center>図. ディファレンシャルモードノイズとコモンモードノイズの電界強度</center><br> | ||
<br> | <br> | ||
この計算結果で重要なことは、同じノイズ電流値でもコモンモードノイズによる放射が遥に大きい点である。<br> | この計算結果で重要なことは、同じノイズ電流値でもコモンモードノイズによる放射が遥に大きい点である。<br> | ||
| 176行目: | 185行目: | ||
* 放射に関しては、ディファレンシャルモードノイズはラインのループ面積、コモンモードノイズはライン長が重要なファクタになる。 | * 放射に関しては、ディファレンシャルモードノイズはラインのループ面積、コモンモードノイズはライン長が重要なファクタになる。 | ||
* 条件が同じでも、コモンモードノイズによる放射はディファレンシャルモードノイズより遥に大きいので注意する。 | * 条件が同じでも、コモンモードノイズによる放射はディファレンシャルモードノイズより遥に大きいので注意する。 | ||
<br><br> | |||
== クロストーク == | |||
クロストークとは、線間の結合による信号やノイズの伝播のことで、漏話、混線、混信とも呼ばれる。<br> | |||
<br> | |||
漏話は、2本の線(PCBの薄膜配線も含む)が別個であれば、電気的信号やノイズは伝わらないはずであるが、<br> | |||
特に、2本の線が平行している場合、その線間に存在している浮遊(寄生)容量や相互インダクタンスにより、ノイズが伝わる。<br> | |||
したがって、クロストークは誘導ノイズと考えられる。<br> | |||
<br> | |||
線間の結合には、浮遊(寄生)容量による容量(静電)結合と、相互インダクタンスによる誘導(電磁)結合がある。<br> | |||
これらにより、ノイズが誘起される。<br> | |||
<br> | |||
下図に、それぞれの結合のイメージと簡素化された等価回路を示す。<br> | |||
<br> | |||
ノイズ源の配線であるパターン1から、近接する配線のパターン2に発生するノイズ電圧Vnを表す式を示している。<br> | |||
Rは抵抗分、Cは容量、Mは相互インダクタンス、Vsはノイズ源電圧、Isはノイズ源電流である。<br> | |||
<br> | |||
平行する配線間において、クロストークが発生することを理解しておくこと。<br> | |||
また、配線が直交する場合、浮遊(寄生)容量や相互インダクタンスはかなり小さくなる。<br> | |||
[[ファイル:Electronic Circuit EMC 10.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>図. 容量結合(静電結合)と誘導結合(電磁結合)および等価回路</center><br> | |||
<br> | |||
<u>※キーポイント</u><br> | |||
* 平行する配線間においてはクロストークが発生する。 | |||
* クロストークの要因には、浮遊(寄生)容量による容量(静電)結合と相互インダクタンスによる誘導(電磁)結合がある。 | |||
<br><br> | |||
== スイッチング電源で発生するノイズ == | |||
まず、同期整流型降圧DC-DCコンバータの等価回路を使用して、スイッチング電流の経路を確認する。<br> | |||
[[ファイル:Electronic Circuit EMC 11.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>図. 同期整流型降圧DC-DCコンバータのスイッチング電流の経路</center><br> | |||
<br> | |||
ハイサイドスイッチをSW1、ローサイドスイッチをSW2とする時、<br> | |||
SW1がオンの時(SW2はオフ)、入力コンデンサ→SW1→インダクタL→出力コンデンサへという電流経路となる。<br> | |||
SW2がオンの時(SW1はオフ)、SW2→インダクタL→出力コンデンサへという電流経路となる。<br> | |||
<br> | |||
下図は、これらの電流経路の差分であり、スイッチがオン / オフを繰り返す度、赤のラインの電流は激しく変化する。<br> | |||
このループは、電流変化が急峻なため、基板配線のインダクタンスにより、ループ内に高周波のリンギングが生じる。<br> | |||
[[ファイル:Electronic Circuit EMC 12.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>図. 同期整流型降圧DC-DCコンバータのリンギング</center><br> | |||
<br> | |||
下図に、電源回路を構成する外付け部品およびPCBの寄生成分とリンギングの関係を示す。<br> | |||
<br> | |||
下図に示すように、電流が急激に変化するループにおける寄生成分を赤で示している。<br> | |||
配線には配線インダクタンスがあり、1[mm]あたり約1[nH]のインダクタンスが存在する。<br> | |||
また、コンデンサには等価直列インダクタンス(ESL)が存在しており、また、MOSFETには各端子間に寄生容量が存在する。<br> | |||
これらの原因により、スイッチノードには赤枠で示したような100[MHz]から300[MHz]のリンギングが発生する。<br> | |||
<br> | |||
リンギングによって発生する電流と電圧は、2つの式により求められる。<br> | |||
[[ファイル:Electronic Circuit EMC 13.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>図. 外付け部品およびPCBの寄生成分とリンギングの関係</center><br> | |||
<br> | |||
このリンギングは、高周波のスイッチングノイズとして様々な影響を与える。<br> | |||
対策を施す場合、PCBの寄生成分は電源IC側では除去することができないため、PCBの配線レイアウトやデカップリングコンデンサを使用して対処する。<br> | |||
PCBの配線レイアウトの詳細は、[https://techweb.rohm.co.jp/knowledge/dcdc/dcdc_pwm/dcdc_pwm03/2734 DC-DCコンバータのPCBレイアウトのページ]を参照すること。<br> | |||
[[ファイル:Electronic Circuit EMC 14.jpg|フレームなし|中央]] | |||
<center>図. 同期整流型降圧DC-DCコンバータのリンギングとその対策</center><br> | |||
<br> | |||
<u>※キーポイント</u><br> | |||
* スイッチングにより急峻な電流のオン / オフが発生する回路では、寄生成分により、高周波リンギング(スイッチングノイズ)が発生する。 | |||
* このスイッチングノイズは、PCBの配線の最適化等によって低減できるが、それでもノイズが残る場合は、<br>コモンモードノイズとして入力電源に伝導するため漏出を防ぐ対処が必要となる。 | |||
<br><br> | <br><br> | ||
__FORCETOC__ | __FORCETOC__ | ||
[[カテゴリ:電子回路]] | [[カテゴリ:電子回路]] | ||