「統計学 - 二項分布」の版間の差分
(ページの作成:「== 概要 == 二項分布は、成功か失敗のいずれかの結果しかない試行 (ベルヌーイ試行と呼ばれる) を複数回実施した場合の、成功回数の分布を表現する。<br> <br> 二項分布の表現として、確率質量関数 <math>P(X = k) = \dbinom{n}{k} p^k (1 - p)^{n-k}</math> を用いる。<br> ここで、nは試行回数、kは成功回数、pは1回の試行における成功確率を表す。<br> <br> この式中の…」) |
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二項分布は、<math>B (n, p)</math> で表す。<br> | |||
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なお、二項分布は、より一般的なポアソン分布や超幾何分布の特殊なケースとしても位置付けられる。<br> | なお、二項分布は、より一般的なポアソン分布や超幾何分布の特殊なケースとしても位置付けられる。<br> | ||
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== 二項定理 == | |||
二項定理は代数学の定理の1つであり、2つの数値や文字の和の累乗を展開する方法を示すものである。<br> | |||
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基本的な形は、<math>(a + b)^{n}</math> の展開を表し、次のような形になる。<br> | |||
<math>(a + b)^{n} = \dbinom{n}{0} a^n + \dbinom{n}{1} a^{n-1} b + \dbinom{n}{2} a^{n-2} b^{2} + \cdots + \dbinom{n}{n-1} ab^{n-1} + \dbinom{n}{n} b^{n}</math><br> | |||
したがって、<math>(a + b)^{n} = \sum_{k=0}^{n} \dbinom{n}{k} a^{k} b^{n-k}</math><br> | |||
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* <math>(a + b)^{2}</math> の場合 | |||
*: <math>(a + b)^{2} = a^{2} + 2ab + b^{2}</math> | |||
* <math>(a + b)^{3}</math> の場合 | |||
*: <math>(a + b)^{3} = a^{3} + 3 a^{2} b + 3ab^{2} + b^{3}</math> | |||
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この定理の応用は広く、確率論 (二項分布の計算) や、多項式の展開、近似計算等で使用される。<br> | |||
また、パスカルの三角形と密接な関係があり、係数の計算に活用される。<br> | |||
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<math<(a + b)^{n}</math> の展開式の第 <math>r + 1</math> 項 <math>\dbinom{n}{k} a^{n-r} b^{r}</math> を <math>(a + b)^{n}</math> の展開式の一般項という。<br> | |||
また、<math>\dbinom{n}{k}</math> を二項係数という。<br> | |||
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== パスカルの三角形 == | |||
パスカルの三角形は、組み合わせの数を表現する数学的な図形であり、二項係数を簡単に求めることができる便利なツールである。<br> | |||
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三角形の各数は、その上にある2つの数の和として計算される。<br> | |||
例えば、20という数字は、その上にある10と10の和として得られる。<br> | |||
各行の数字は、二項展開の係数と一致する。<br> | |||
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また、パスカルの三角形の性質を以下に示す。<br> | |||
* 各行は左右対称である。 | |||
* 端の数は常に1 | |||
* 2番目の斜めの数 (1, 2, 3, 4, 5, ...) は自然数の列になる。 | |||
* 各行の合計は2の冪乗 | |||
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== 期待値および分散 == | == 期待値および分散 == | ||
これらの値は、実際のデータの分布がどの程度理論値から外れているかを判断する時の基準として使用される。<br> | |||
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==== 二項分布 B(n, p) の期待値 ==== | |||
<math>\mu = np</math><br> | |||
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表が出る確率 <math>p = 0.6</math> のコイン <math>n = 1000</math> 枚を投げる。 | |||
1000枚のうち、表が出る枚数の期待値μを求めよ。 | |||
解答: | |||
<math>\mu = np = 1000 \times 0.6 = 600</math> [枚] | |||
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==== 二項分布 B(n, p) の分散 ==== | |||
<math>\sigma^2 = npq = np (1 - p)</math><br> | |||
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例題: | |||
表が出る確率 <math>p = 0.6</math> のコイン <math>n = 1000</math> 枚を投げる。 | |||
1000枚のうち、表が出る枚数の標準偏差σを求めよ。 | |||
解答: | |||
<math>\sigma = \sqrt{\sigma^2} = \sqrt{np (1 - p)} = \sqrt{1000 \times 0.6 \times 0.4} \cong 15.5 </math> [枚] | |||
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2025年1月4日 (土) 02:18時点における最新版
概要
二項分布は、成功か失敗のいずれかの結果しかない試行 (ベルヌーイ試行と呼ばれる) を複数回実施した場合の、成功回数の分布を表現する。
二項分布の表現として、確率質量関数 を用いる。
ここで、nは試行回数、kは成功回数、pは1回の試行における成功確率を表す。
この式中の は組み合わせの数を表しており、n個からk個を選ぶ方法の数を示している。
二項分布は、 で表す。
- n
- 試行回数
- p
- 1回の試行でAの起こる確率
二項分布の実社会での例として、以下に示すようなものが挙げられる。
- 製品の不良品検査
- ロットから抽出したサンプルの中の不良品数の予測
- マーケティングにおける新商品の購入意向調査での肯定的な回答数の予測
- 医療における治療効果の判定
また、二項分布は試行回数nが大きくなるにつれ、正規分布に近似されることが知られている。(中心極限定理)
これは、実務上において重要な性質であり、計算の簡略化に役立つ。
また、二項分布では独立性と確率の一定性がある。
つまり、各試行は互いに独立していなければならず、各試行における成功確率は一定である必要がある。
例えば、コイン投げの場合、各投げは独立しており、かつ、表が出る確率は常に であると仮定する。
この分布の応用範囲は非常に広く、品質管理、世論調査、医学研究等、様々な分野で活用されている。
特に、ある事象が成功か失敗のどちらかに分類できる場合の確率予測に有用である。
なお、二項分布は、より一般的なポアソン分布や超幾何分布の特殊なケースとしても位置付けられる。
二項定理
二項定理は代数学の定理の1つであり、2つの数値や文字の和の累乗を展開する方法を示すものである。
基本的な形は、 の展開を表し、次のような形になる。
したがって、
- の場合
- の場合
この定理の応用は広く、確率論 (二項分布の計算) や、多項式の展開、近似計算等で使用される。
また、パスカルの三角形と密接な関係があり、係数の計算に活用される。
<math<(a + b)^{n}</math> の展開式の第 項 を の展開式の一般項という。
また、 を二項係数という。
パスカルの三角形
パスカルの三角形は、組み合わせの数を表現する数学的な図形であり、二項係数を簡単に求めることができる便利なツールである。
三角形の各数は、その上にある2つの数の和として計算される。
例えば、20という数字は、その上にある10と10の和として得られる。
各行の数字は、二項展開の係数と一致する。
また、パスカルの三角形の性質を以下に示す。
- 各行は左右対称である。
- 端の数は常に1
- 2番目の斜めの数 (1, 2, 3, 4, 5, ...) は自然数の列になる。
- 各行の合計は2の冪乗
期待値および分散
これらの値は、実際のデータの分布がどの程度理論値から外れているかを判断する時の基準として使用される。
二項分布 B(n, p) の期待値
例題: 表が出る確率 のコイン 枚を投げる。 1000枚のうち、表が出る枚数の期待値μを求めよ。 解答: [枚]
二項分布 B(n, p) の分散
例題: 表が出る確率 のコイン 枚を投げる。 1000枚のうち、表が出る枚数の標準偏差σを求めよ。 解答: [枚]
例題
例題: 硬貨を2枚投げて、1枚だけ表が出る確率を求めよ。 解答: 二項分布の確率質量関数を使用する。 nは試行回数 = 2 (コインを2回投げる) kは成功回数 = 1 (表が出る回数) pは1回の試行での成功確率 = 1/2 (コインの表が出る確率) 2個から1個を選ぶ組み合わせの数 : よって、 したがって、硬貨を2回投げて1枚だけ表が出る確率は、 となる。