「インストール - GCC」の版間の差分
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# CentOS | # CentOS | ||
sudo yum install gmp-devel mpfr-devel libmpc-devel | sudo yum install gmp-devel mpfr-devel libmpc-devel isl-devel | ||
# SUSE | # SUSE | ||
sudo zypper install gmp-devel mpfr-devel mpc-devel | sudo zypper install gmp-devel mpfr-devel mpc-devel isl-devel | ||
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==== GCCのモジュールの使用 ==== | ==== GCCのモジュールの使用 ==== | ||
[https://gcc.gnu.org GCCの公式Webサイト]にアクセスして、GCCのソースコードをダウンロードして解凍する。<br> | [https://gcc.gnu.org GCCの公式Webサイト]にアクセスして、GCCのソースコードをダウンロードして解凍する。<br> |
2021年3月30日 (火) 16:34時点における版
概要
CentOSやSUSEのパッケージ管理システムで提供されているGCCのバージョンは古い可能性がある。
最新のGCCでは、C++11からC++17を完全にサポートしており、また、C++20を部分的にサポートしている。
また、最新のGCCでは、C11およびC++14のサポートがデフォルトで有効になっている。(-std=c11または-std=c++14を追加する必要はない)
依存関係のライブラリのインストール
まず、システムが最新であることを確認する。
# CentOS sudo yum update # SUSE sudo zypper update
依存関係のライブラリを、以下に示す2種類のいずれかの方法でインストールする。
パッケージ管理システムの使用
# CentOS sudo yum install gmp-devel mpfr-devel libmpc-devel isl-devel # SUSE sudo zypper install gmp-devel mpfr-devel mpc-devel isl-devel
GCCのモジュールの使用
GCCの公式Webサイトにアクセスして、GCCのソースコードをダウンロードして解凍する。
または、以下のコマンドを実行してダウンロードする。
wget http://ftp.tsukuba.wide.ad.jp/software/gcc/releases/gcc-10.1.0/gcc-10.1.0.tar.xz wget http://ftp.tsukuba.wide.ad.jp/software/gcc/releases/gcc-10.1.0/sha512.sum tar zxvf gcc-10.1.0.tar.gz -o src
次に、解凍したGCCのディレクトリに移動して、以下のコマンドを実行すると、依存関係のライブラリがダウンロードされる。
./contrib/download_prerequisites
ダウンロードされた依存関係のライブラリを解凍する。
tar -xvf gmp-6.1.0.tar.bz2 tar -xvf mpfr-3.1.4.tar.bz2 tar -xvf mpc-1.0.3.tar.gz tar -xvf isl-0.18.tar.bz2
これらのライブラリを全てインストールする。
- gmpのインストール
./gmp-6.1.0/configure --prefix=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 --enable-cxx make -j 8 make check make install
- mpfrのインストール
./mpfr-3.1.4/configure --prefix=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 --with-gmp=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 make -s -j 8 make -s check make install
- mpcのインストール
./mpc-1.0.3/configure --prefix=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 --with-gmp=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 --with-mpfr=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 make -s -j 8 make check -s -j 8 make install
- islのインストール
./isl-0.18/configure --prefix=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 --with-gmp-prefix=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 make -j 8 make check make install
GCCのインストール
GCCの公式Webサイトにアクセスして、GCCのソースコードをダウンロードして解凍する。
または、以下のコマンドを実行してダウンロードする。
wget http://ftp.tsukuba.wide.ad.jp/software/gcc/releases/gcc-10.1.0/gcc-10.1.0.tar.xz wget http://ftp.tsukuba.wide.ad.jp/software/gcc/releases/gcc-10.1.0/sha512.sum tar zxvf gcc-10.1.0.tar.gz -o src
sha512.sumファイルを使用して、ダウンロードしたgcc-10.1.0.tar.xzファイルのチェックを行う。
sha512sum: gcc-8.2.0.tar.gz: No such file or directory
やgcc-8.2.0.tar.xz: FAILED open or read
というメッセージが表示されるが、
gcc-10.1.0.tar.gzファイルをダウンロードしていないため表示されているだけなので、特に問題ない。
sha512sum --check sha512.sum
ここでは、ホームディレクトリにインストールを行う。
mkdir -p ~/InstallSoftware/GCC/gcc-10_1_0 && cd ~/InstallSoftware/GCC
以下のコマンドを実行して、GCCをビルドおよびインストールする。
オプションの説明を記載する。
- enable-languages=c,c++,fortran
- C、C++、FORTRANのコンパイラをビルド対象とする。
- disable-bootstrap
- 3-stage bootstrap buildの無効化。
- disable-multilib
- 64bit専用コンパイラとする(OSが64bitの場合は指定)
cd gcc-10.1.0 mkdir build && cd build
# パッケージ管理システムで依存関係のライブラリをインストールしている場合 ../configure -v --build=x86_64-linux-gnu --host=x86_64-linux-gnu --target=x86_64-linux-gnu --prefix=$HOME/InstallSoftware/GCC/gcc-10_1_0 \ --enable-checking=release --enable-languages=c,c++,fortran --disable-multilib --disable-bootstrap --program-suffix=-10.1 make -j 8 make install-strip # 手動で依存関係のライブラリをインストールしている場合 ../configure --disable-multilib --enable-languages=c,c++,fortran --prefix=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 \ --with-gmp=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 --with-mpc=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 \ --with-mpfr=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 --with-isl=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0 unset LIBRARY_PATH CPATH C_INCLUDE_PATH PKG_CONFIG_PATH CPLUS_INCLUDE_PATH INCLUDE LD_LIBRARY_PATH=$HOME/InstallSoftware/GCC/GCC-10_1_0/lib make -j 8 make install
インストールしたGCCへ環境変数のパスを通す。
vi ~/.profile # .profileファイル export export PATH=$HOME/InstallSoftware/GCC/gcc-10_1_0/bin:$PATH export LD_LIBRARY_PATH=$HOME/InstallSoftware/GCC/gcc-10.1.0/lib64:$LD_LIBRARY_PATH
最後に、PCを再起動する。
共有ライブラリの参照設定
GCCをソースコードからインストールした場合、共有ライブラリが/<GCCのインストールディレクトリ>/lib64に作成されるが、
環境変数のパスが通っていないため、Linuxから参照されない。
そのため、以下のいずれかの方法で環境変数のパスを通す必要がある。
- /etc/ld.so.confファイルに記述する。(システム全体)
- ~/.profileファイルまたは~/.bashrcファイル等に、LD_LIBRARY_PATHを記述する。(ユーザごとに設定が必要)
ld.so.confファイルに設定する
/etc/ld.so.confファイルに/<GCCのインストールディレクトリ/lib64
を追記することで、Linuxがライブラリを認識する。
以下のコマンドを実行して、設定を追記する。
sudo vi /etc/ld.so.conf # /etc/ld.so.confファイル /<GCCのインストールディレクトリ/lib64
上記の設定を反映させるため、ldconfig
コマンドを実行する。
ldconfig -v
ldconfig
コマンドを実行した時に表示される情報から、
以下のように、/<GCCのインストールディレクトリ/lib64
ディレクトリが読み込まれていることを確認する。
/<GCCのインストールディレクトリ>/lib64: ldconfig: /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.25-gdb.py is not an ELF file - it has the wrong magic bytes at the start. libatomic.so.1 -> libatomic.so.1.2.0 libitm.so.1 -> libitm.so.1.0.0 libgomp.so.1 -> libgomp.so.1.0.0 libquadmath.so.0 -> libquadmath.so.0.0.0 libssp.so.0 -> libssp.so.0.0.0 libmpxwrappers.so.2 -> libmpxwrappers.so.2.0.1
ldconfig
コマンドを実行した結果、もし、以下のようなメッセージが表示された場合の対処方法を記載する。
ldconfig: /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.25-gdb.py is not an ELF file - it has the wrong magic bytes at the start.
これは、libstdc++.so.6.0.25-gdb.pyは、pythonのスクリプトであるが、これを共有ライブラリとして認識していることが原因である。
file /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.25-gdb.py /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.25-gdb.py: Python script, ASCII text executable
対処方法としては、該当ファイルの名前を変更して、共有ライブラリと認識されないようする。
mv /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.25-gdb.py /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.25-gdb.py_org
再度、ldconfig
コマンドを実行する。
ldconfig -v
また、CentOS 7の場合、/etc/ld.so.confファイルにinclude ld.so.conf.d/*.conf
と設定されているが、
これは、ld.so.conf.dディレクトリ内のconf拡張子をもつファイルの内容を読み込むという設定である。
ld.so.conf.dディレクトリ内に/<GCCのインストールディレクトリ>/lib64と記述したconfファイルを作成することにより、
Linuxに共有ライブラリのパスを認識させることができる。
ここでは、/etc/ld.so.conf.d/UserAdd-lib64.confファイルを作成する。
sudo vi /etc/ld.so.conf.d/UserAdd-lib64.conf # UserAdd-lib64.confファイル /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64
上記の設定を反映させるため、ldconfig
コマンドを実行する。
ldconfig -v
LD_LIBRARY_PATHに設定する
この方法は、ユーザごとに設定する必要がある。
~/.profileファイルまたは~/.bashrcファイル等に、LD_LIBRARY_PATHの設定を追加することで、ユーザがログインする際に設定が読み込まれる。
vi ~/.profile # ~/.profileファイル export LD_LIBRARY_PATH=$LD_LIBRARY_PATH:/<GCCのインストールディレクトリ>/lib64
上記の設定を反映させるため、PCを再起動または再ログインする。
libstdc++の入れ替え
この操作を行うと、システムが不安定になる可能性があるため、必要な時にのみこれを行う。
現在のlibstdc++の対応関係を確認する。
strings /usr/lib64/libstdc++.so.6 | grep GLIBCXX
インストールしたGCCのlibstdc++.so.<バージョン名>をコピーする。
sudo cp /<GCCのインストールディレクトリ>/lib64/libstdc++.so.6.0.28 /usr/lib64
/usr/lib64ディレクトリにあるlibstdc++.so.6ファイルのバージョンを確認する。
ls -ahlF /usr/lib64/libstd*
libstdc++.so.6ファイルを入れ替える。
sudo mv /usr/lib64/libstdc++.so.6 /usr/lib64/libstdc++.so.6_org sudo ln -s /usr/lib64/libstdc++.so.<バージョン名> /usr/lib64/libstdc++.so.6
正常にコピーできたか確認する。
ls -ahlF /usr/lib64/libstd*
入れ替えたlibstdc++の対応関係を確認する。
strings /usr/lib64/libstdc++.so.6 | grep GLIBCXX
C++14 / C++17のサンプルコード
C++14では、ラムダ式のパラメータのタイプにautoが使用できる。
// sample.cpp
#include <iostream>
int main()
{
std::cout << [](auto a, auto b) { return a + b; } (5, 6) << std::endl;
std::cout << [](auto a, auto b) { return a + b; } (5.23, 6.45) << std::endl;
return 0;
}
# 実行 g++-10.1 -Wall -pedantic sample.cpp -o sample ./sample # 出力 11 11.68
このページの冒頭で述べたように、GCC 10.1は、C++17を完全にサポートしている。
以下の例では、static_assertへのC++17変更の使用例をテストしている。
// sample.cpp
#include <type_traits>
#include <iostream>
struct A
{
int foo;
};
struct B
{
int foo = 0;
};
template <typename T>
void print(const T& a)
{
static_assert(std::is_pod<T>::value);
std::cout << a.foo << '\n';
}
int main()
{
A x{1};
B y{2};
B z;
print<A>(x);
print<B>(y);
print<B>(z);
return 0;
}
コンパイルを行うには、-std=c++17オプションを付与する。
また、上記のコードの17行目と24行目でトリガーされたコンパイルエラーが表示される。
# 実行 g++-10.1 -std=c++17 -Wall -pedantic sample.cpp -o sample # 出力 sample.cpp: In instantiation of ‘void print(const T&) [with T = B]’: sample.cpp:24:13: required from here sample.cpp:14:33: error: static assertion failed 17 | static_assert(std::is_pod<T>::value);
もし、C++11の構文の詳細に興味がある場合は、Bjarne StroustrupによるC++プログラミング言語を読むことを推奨する。