「電子部品 - 抵抗器(ゼロオーム抵抗)」の版間の差分

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<u>※補足</u><br>
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<u>パッケージサイズを大きくすると(抵抗値は小さくなる)、抵抗値も微妙に変化する。</u><br>
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== ゼロオーム抵抗とジャンパー線の違い ==
電気的には、ゼロオーム抵抗とジャンパー線は同じだが、ゼロオーム抵抗が使用される理由は大きく2つある。
# 実装が容易である。
#: 人間による手差し実装の場合には、ゼロオーム抵抗ではなくジャンパー線を使用することが多いです。これは、コスト的にはゼロオーム抵抗よりジャンパー線の方が安いからです。しかし、機械(自動挿入機)で取り付ける場合は話が変わります。
#: ほとんどのプリント基板の部品は人間による手差し実装ではなく、自動挿入機を使用して実装されています。
#: ゼロオーム抵抗の場合、他の抵抗器と形を同じにできるため、同じように自動挿入機を使用して実装することができます。
#: しかし、ジャンパー線の場合、形が抵抗器と異なるため、機械がつかみにくく、ジャンパー線を取り付けるための別の機械が必要となります。または、ジャンパー線を人間が手動で実装する必要があります。その結果、作業効率が悪くなり、単価がゼロオーム抵抗より上がってしまいます。
# 回路変更が簡単である。
ゼロオーム抵抗は他の抵抗器と形が同じであり、ジャンパー線よりも簡単に取り外しすることができます。
そのため、後から設計変更で普通の抵抗に変更することや、その逆の変更が簡単にできるようになります。
普通の抵抗に変更することを考え、ゼロオーム抵抗の部品番号にもRxx等と記載し、普通の抵抗と同じように番号を振っている場合もあります。
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== ゼロオーム抵抗の用途 ==
* ジャンパー用
*: プリント基板において、配線が交差させたい時、片方の配線にゼロオーム抵抗を使い、交差する配線はその下をプリントパターンで通します。
* アナログGNDとデジタルGNDの接続用
*: アナログGNDとデジタルGNDは1箇所で接続するのが一般的なのですが、CADを用いるとその指定ができないことがあります。そのため、アナログGNDとデジタルGNDの接続にゼロオーム抵抗を使用することもあります。
回路検討用・回路の切り替え用
ゼロオーム抵抗の様々な用途
回路基板を作るときに、使い方によって配線をつないだり外したりしたい場合があります。このような場合、この接続箇所にゼロオーム抵抗を入れておけば、抵抗を実装するかしないかの選択を変えるだけで回路の動作を変える事ができます。
昔、私は回路設計をしている時にMOSFETをICから駆動するか、外部の電源から駆動するのどちらが良いのかを検討する際にゼロオーム抵抗を接続して回路を実装しました。
仕様が異なる製品を作るとき
製品の機能の違いや輸出先の国が異なる場合、製品の仕様が異なります。例えば、以下の製品Aと製品Bを考えてみましょう。
製品A:端子Xを端子Yに接続
製品B:端子Xを端子Yに接続しない
この場合、両製品でこれ以外に差異がなければ、プリント基板を共通化し、端子Xと端子Yの間にゼロオーム抵抗を接続する箇所を設け、ゼロオーム抵抗の接続有無を変えることで、製品Aと製品Bの両方を作ることができます。
ゼロオーム抵抗を接続することによる部品のコストアップは微妙にありますが、プリント基板を共通化することで、設計費+基板製作費+管理費の削減をすることができます。また、プリント基板の管理も簡単になります。
スイッチの代わり
ゼロオーム抵抗とDIPスイッチ
基板上にDIPスイッチを実装することで、回路の切り替えを行う場合がありますが、DIPスイッチは外形が大きいため、配置できる場所に制約があり、配線経路を変えなければならない場合があります。このような場合、DIPスイッチの代わりにゼロオーム抵抗を接続し、ゼロオーム抵抗の接続有無を変えたりします。
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__FORCETOC__
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[[カテゴリ:電子部品]]
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2020年8月29日 (土) 12:05時点における版

概要

基板では、抵抗値が0[Ω]のゼロオーム抵抗が実装されていることがある。

ここでは、ゼロオーム抵抗の定格電力と定格電流、ゼロオーム抵抗とジャンパー線の違い、ゼロオーム抵抗の用途を記載する。


ゼロオーム抵抗とは

ゼロオーム抵抗とは、その名の通り抵抗値がゼロオームの抵抗である。
ゼロオーム抵抗は、配線間を接続するジャンパー線のように使用されるため、ジャンパー抵抗とも呼ばれている。

リード抵抗の場合は抵抗に黒色の帯が1つ印刷されており、チップ抵抗の場合はゼロオーム抵抗であることを示す"0"または"000"が表示されている。


ゼロオーム抵抗の定格電力と定格電流

ゼロオーム抵抗器は、定格電力が、1/10[W]品、1/8[W]品、1/4[W]品、0.75[W]品、2[W]品などがある。
また、ゼロオーム抵抗は、実際には完全に0[Ω]ではなく、厳密には0.001[Ω]や0.003[Ω]など、微小の抵抗値を持っている。

このゼロオーム抵抗の定格電力と抵抗値の大きさは、各メーカーのWebサイトに記載されている。

定格電力と抵抗値があるということは、流せる電流量(定格電流)に制限があるということである。
例えば、0805サイズのチップ抵抗が以下のパラメータの場合を考える。

  • 定格電力PRATED
    1/2[W]
  • 抵抗値R
    0.002[Ω]


定格電力PRATEDと抵抗値Rが分かれば、定格電流IRATEDを導出することができる。
電流と電力の式()を用いると、定格電流IRATEDは下式のようになる。


したがって、このチップ抵抗は、最大15.81[A]の電流を流すことができる。

このように、ゼロオーム抵抗でも微小な抵抗値Rと定格電力PRATEDを持つため、流せる電流には制限がある。
そのため、ゼロオーム抵抗はヒューズの代わりとしても使われることがある。

一般的に、定格電流以上の電流を流したい場合は、以下の2つのどちらかを選択する。

  • より低抵抗の製品を使用する。
    パッケージサイズは変わらないが、高価となる。
  • パッケージサイズを大きくして定格電力が増加させる。
    パッケージサイズが大きくなるため、多くの基板スペースを占有するが、安価となる。


ここで、パッケージサイズを大きくして、1206サイズのチップ抵抗(定格電力PRATEDが0.75[W]、抵抗値Rが0.002[Ω])にすると、
定格電流IRATEDは下式のようになり、15.81[A]以上の電流が流せるようになる。


※補足
パッケージサイズを大きくすると(抵抗値は小さくなる)、抵抗値も微妙に変化する。


ゼロオーム抵抗とジャンパー線の違い

電気的には、ゼロオーム抵抗とジャンパー線は同じだが、ゼロオーム抵抗が使用される理由は大きく2つある。

  1. 実装が容易である。
    人間による手差し実装の場合には、ゼロオーム抵抗ではなくジャンパー線を使用することが多いです。これは、コスト的にはゼロオーム抵抗よりジャンパー線の方が安いからです。しかし、機械(自動挿入機)で取り付ける場合は話が変わります。
    ほとんどのプリント基板の部品は人間による手差し実装ではなく、自動挿入機を使用して実装されています。
    ゼロオーム抵抗の場合、他の抵抗器と形を同じにできるため、同じように自動挿入機を使用して実装することができます。
    しかし、ジャンパー線の場合、形が抵抗器と異なるため、機械がつかみにくく、ジャンパー線を取り付けるための別の機械が必要となります。または、ジャンパー線を人間が手動で実装する必要があります。その結果、作業効率が悪くなり、単価がゼロオーム抵抗より上がってしまいます。
  1. 回路変更が簡単である。

ゼロオーム抵抗は他の抵抗器と形が同じであり、ジャンパー線よりも簡単に取り外しすることができます。

そのため、後から設計変更で普通の抵抗に変更することや、その逆の変更が簡単にできるようになります。

普通の抵抗に変更することを考え、ゼロオーム抵抗の部品番号にもRxx等と記載し、普通の抵抗と同じように番号を振っている場合もあります。

ゼロオーム抵抗の用途

  • ジャンパー用
    プリント基板において、配線が交差させたい時、片方の配線にゼロオーム抵抗を使い、交差する配線はその下をプリントパターンで通します。
  • アナログGNDとデジタルGNDの接続用
    アナログGNDとデジタルGNDは1箇所で接続するのが一般的なのですが、CADを用いるとその指定ができないことがあります。そのため、アナログGNDとデジタルGNDの接続にゼロオーム抵抗を使用することもあります。

回路検討用・回路の切り替え用

ゼロオーム抵抗の様々な用途 回路基板を作るときに、使い方によって配線をつないだり外したりしたい場合があります。このような場合、この接続箇所にゼロオーム抵抗を入れておけば、抵抗を実装するかしないかの選択を変えるだけで回路の動作を変える事ができます。

昔、私は回路設計をしている時にMOSFETをICから駆動するか、外部の電源から駆動するのどちらが良いのかを検討する際にゼロオーム抵抗を接続して回路を実装しました。

仕様が異なる製品を作るとき

製品の機能の違いや輸出先の国が異なる場合、製品の仕様が異なります。例えば、以下の製品Aと製品Bを考えてみましょう。

製品A:端子Xを端子Yに接続 製品B:端子Xを端子Yに接続しない この場合、両製品でこれ以外に差異がなければ、プリント基板を共通化し、端子Xと端子Yの間にゼロオーム抵抗を接続する箇所を設け、ゼロオーム抵抗の接続有無を変えることで、製品Aと製品Bの両方を作ることができます。

ゼロオーム抵抗を接続することによる部品のコストアップは微妙にありますが、プリント基板を共通化することで、設計費+基板製作費+管理費の削減をすることができます。また、プリント基板の管理も簡単になります。

スイッチの代わり

ゼロオーム抵抗とDIPスイッチ 基板上にDIPスイッチを実装することで、回路の切り替えを行う場合がありますが、DIPスイッチは外形が大きいため、配置できる場所に制約があり、配線経路を変えなければならない場合があります。このような場合、DIPスイッチの代わりにゼロオーム抵抗を接続し、ゼロオーム抵抗の接続有無を変えたりします。