「数列 - 等差数列・等比数列・階差数列」の版間の差分

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(ページの作成:「== 概要 == <br><br> == 階差数列 == ==== 基本 ==== 元の数列の隣り合う項の差を順番に並べたものを第1階差数列と呼ぶ。<br> <math>a_n = a_{n + 1} - a_n</math> と表す。<br> <br> 第1階差数列から、さらに階差を取ったものを第2階差数列と呼ぶ。<br> これを繰り返すことで第3、第4...階差数列が得られる。<br> <br> 例: 原数列: 2, 5, 10, 17, 26, 37 第1階差: 3, 5, 7, 9, 11…」)
 
 
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== 概要 ==
== 概要 ==
等差数列は、隣り合う項の差が常に一定の数列である。<br>
日常生活では、例えば、1時間ごとの気温の変化や定期的な積立預金の残高等がこれに似た形になることがある。<br>
<br>
等比数列は、隣り合う項の比が常に一定の数列である。<br>
現実の例としては、細胞分裂による細胞数の増加や複利計算による預金の増え方等が挙げられる。<br>
「前の項に対して同じ割合で増減する」という特徴がある。<br>
<br>
階差数列は、元の数列から隣り合う項の差を取って新しい数列を作り、それを繰り返す数列である。<br>
例えば、2次関数のグラフ上の点の値から作った数列の階差数列は、最終的に0になるという性質がある。<br>
<br>
これらの数列は、特に、予測・分析やデジタル信号処理等で活用されることが多い。<br>
<br><br>


== 等差数列 ==
==== 基本 ====
等差数列とは、隣り合う項の差が常に一定である数列のことである。<br>
例:
3, 7, 11, 15, 19, 23, ...
<br>
隣接する2項の差を<u>公差</u>と呼ぶ。(dで表すことが多い)<br>
<br>
第n項は、初項a<sub>1</sub>と公差dを用いて次式で表される。<br>
<math>a_n = a_1 + (n - 1)d</math>
<br>
# n項目の計算例:
上記の例では
初項 : 3
公差 : 4
であるため、
<math>a_n = 3 + 4(n - 1) = 4n -1</math> となる。
<br>
==== 等差数列の和 ====
項数nの等差数列の和 (S<sub>n</sub>) は、次式で求められる。<br>
<math>S_n = \frac{n (a_1 + a_n)}{2}</math>
または
<math>S_n = \frac{1}{2} n \, \{2 a_1 + (n - 1)d \}</math>
<br>
<math>S_n = \frac{1}{2} n \, \{2 a_1 + (n - 1)d \}</math> は、<math>S_n = \frac{n (a_1 + a_n)}{2}</math> の a<sub>n</sub>に対して、 <br>
<math>a_n = a_1 + (n - 1)d</math> を代入することにより、<br>
<math>
\begin{align}
S_n &= \frac{n (a_1 + a_n)}{2} \\
    &= \frac{n (a_1 +  a_1 + (n - 1)d)}{2} \\
    &= \frac{n \{2 a_1 + (n - 1)d \}}{2}
\end{align}
</math><br>
<br>
ゆえに、<math>\frac{1}{2} n \, \{2 a_1 + (n - 1)d \}</math> となる。<br>
<br>
導出: 等差数列の和
<math>S = a + (a + d) + (a + 2d) + \cdots + {a + (n - 1)d}</math> において、aの部分とdの部分に分ける。
<math>S = na + d{1 + 2 + \cdots + (n - 1)}</math>
ここで、<math>1 + 2 + \cdots + (n - 1) = \frac{n(n - 1)}{2}</math>​ であるので、
<math>S = na + \frac{1}{2}nd (n - 1) = \frac{1}{2} n \{ 2a + (n - 1)d \}</math> となる。
つまり,等差数列の和は、自然数の和を1次変換したものである。
<br>
例題:
初項が4、公差が3、項数が6であるような等差数列の和Sを求めよ。
解答:
<math>S = \frac{1}{2} n \, \{ 2a_1 + (n - 1)d \}</math> において、<math>a_1 = 4, \, d = 3, \, n = 6</math> とする時、
<math>S = \frac{6}{2} (8 + 5 \times 3) = 69</math> となる。
<br>
==== 特徴 ====
等差数列の中項は両端の項の平均値になる。<br>
<br>
==== 実生活での例 ====
* 定額の積立貯金
* 等間隔に並んだ数値
* 等間隔の時間経過
<br><br>
== 等比数列 ==
==== 基本 ====
等比数列とは、隣り合う項の比が常に一定である数列のことである。<br>
隣接する2項の比を<u>公比</u>と呼び、rで表すことが多い。<br>
<br>
第n項は、初項a<sub>1</sub>と公比rを用いて、次式で表される。<br>
<math>a_n = a_1 r^{n - 1}</math><br>
<br>
例:
2, 6, 18, 54, 162, ...
* 初項 <math>a_1 = 2</math>
* 公比 <math>r = 3 \, \,</math> (どの隣り合う項も比が3で一定)
<br>
==== 性質 ====
等比数列の任意の連続する3項a, b, cについて、<math>b^2 = ac</math> が成り立つ。<br>
これを、等比中項という。<br>
<br>
==== 等比数列の和 ====
項数nの等比数列の和 S<sub>n</sub> は、次式で求められる。<br>
<br>
<math>
\begin{cases}
S_n = \dfrac{a_1 (1 - r^n)}{(1 - r)}, & r \ne 1 \\
S_n = n a_1, & r = 1
\end{cases}
</math>
<br>
==== 実生活での例 ====
* 複利計算での預金の増加
* 細胞分裂による増殖
* 放射性物質の崩壊
<br>
等比数列は、指数関数的な成長や減衰を示す現象を扱う場合や金融や自然科学の分野でも頻繁に使用される。<br>
また、デジタル信号処理において、Z変換を使用して伝達関数を求める場合にも使用される。<br>
<br><br>
<br><br>


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<br>
<br>
==== 応用例 ====
==== 応用例 ====
数列 2, 5, 10, 17, 26, 37 の一般項を求める場合、第2階差が定数列であるため、2次式で表されることがわかる。<br>
数列2, 5, 10, 17, 26, 37の一般項を求める場合、第2階差が定数列であるため、2次式で表されることがわかる。<br>
これは、<math>a_n = \alpha n^2 + \beta n + \gamma</math> の形で表される。<br>
これは、<math>a_n = \alpha n^2 + \beta n + \gamma</math> の形で表される。<br>
<br>
<br>
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     &= 2 + \sum_{k = 1}^{n - 1} {2n + 1)} \\
     &= 2 + \sum_{k = 1}^{n - 1} {2n + 1)} \\
     &= 2 + 2 \sum_{k = 1}^{n - 1} {n} + \sum_{k = 1}^{n - 1} {1} \\
     &= 2 + 2 \sum_{k = 1}^{n - 1} {n} + \sum_{k = 1}^{n - 1} {1} \\
     &= 2 + 2 \cdot \frac{n (n + 1)}{2} + (n - 1) \\
     &= 2 + 2 \cdot \frac{n (n - 1)}{2} + (n - 1) \\
     &= 2 + n(n - 1) + n - 1                      \\
     &= 2 + n(n - 1) + n - 1                      \\
     &= n^2 + 1
     &= n^2 + 1
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階差数列の考え方を用いれば、複雑に見える数列でもその規則性を見つけやすくなる。<br>
階差数列の考え方を用いれば、複雑に見える数列でもその規則性を見つけやすくなる。<br>
特に、多項式で表される数列の分析に効果的である。<br>
特に、多項式で表される数列の分析に効果的である。<br>
<br>
例題:
数列a<sub>n</sub>が、5,11,21,35,53,... の時
(1) 一般項a<sub>n</sub>を求めよ。
(2) 初項から第n項までの和を求めよ。
(1)の解答:
数列a<sub>n</sub>の階差数列をb<sub>n</sub>とする時
<math>a_n : 5, 11, 21, 35, 53, \, \cdots</math>
<math>b_n : 6, 10, 14, 18, \, \cdots</math>
数列b<sub>n</sub>は、初項6、公差4の等差数列であるから、<math>b_n = 6 + 4(n - 1) = 4n + 2</math>
<math>n \ge 2</math> の時
<math>
\begin{align}
a_n &= a_1 + \sum_{k=1}^{n-1} b_k  \\
    &= 5 + \sum_{k=1}^{n-1} (4k+2) \\
    &= 5 + 4 \sum_{k=1}^{n-1} k + \sum_{k=1}^{n-1} 2 \\
    &= 5 + 4 \cdot \frac{1}{2} (n - 1) n + 2 (n - 1) \\
    &= 2n^2 + 3 \quad \cdots \mbox{(1)}
\end{align}
</math>
<math>n = 1</math> の時
<math>2 n^2 + 3 = 2 \cdot 1 + 3 = 5</math>
初項は <math>a_1 = 5</math> であるから、上式(1)は <math>n = 1</math> の時も成り立つ。
したがって、<math>a_n = 2 n^2 + 3</math> となる。
<br>
(2)の解答
求める和をS<sub>n</sub>とする時
<math>
\begin{align}
S_n &= \sum_{k = 1}^{n} a_k        \\
    &= \sum_{k = 1}^{n} (2 k^2 + 3) \\
    &= 2 \sum_{k = 1}^{n} k^2 + \sum_{k = 1}^{n} 3 \\
    &= 2 \cdot \frac{1}{6} n (n + 1)(2n + 1) + 3n  \\
    &= \frac{1}{3} n \{(n + 1)(2n + 1) + 9 \}      \\
    &= \frac{1}{3} n (2 n^2 + 3n + 10)
\end{align}
</math>
<br>
==== 漸化式と階差数列 ====
定義:
<math>a_n + 1 = a_n + f(n)</math>
f(n) は階差数列の一般項
<br>
<math>a_n + 1 =  a_n + f(n)</math> は、階差数列を利用して解くことができる。<br>
<br>
<math>b_n = a_n + 1 - a_n</math> とおく。<br>
<math>b_n = f(n)</math> とする時、数列b<sub>n</sub>はa<sub>n</sub>の階差数列となる。<br>
<br>
<math>n \ge 2</math> の時、<math>a_n = a_1 + \sum_{k = 1}^{n - 1} b_k</math> を利用して一般項を求めることができる。<br>
<br>
例題:
<math>a_1 = 1, \, \, a_n + 1 = a_n + 2^n - 2n \quad (n = 1, 2, 3, \cdots)</math> で定義される数列の一般項a<sub>n</sub>を求めよ。
解答:
条件より、<math>a_n + 1 - a_n = 2^n - 2n</math>
よって、数列anの階差数列の第n項が <math>2^n - 2n</math> であるから、
<math>n \ge 2</math> の時
<math>
\begin{align}
a_n &= a_1 + \sum_{k = 1}^{n - 1} (2^k - 2k) \\
    &= 1 + \sum_{k = 1}^{n - 1} 2^k - 2 \sum_{k = 1}^{n - 1} k            \\
    &= 1 + \frac{2 (2^{n - 1} - 1)}{2 - 1} - 2 \cdot \frac{1}{2} n (n - 1) \\
    &= 1 + (2^n - 2) - n^2 + n \\
    &= 2^n - n^2 + n - 1 \quad \cdots (1)
\end{align}
</math>
初項は <math>a_1 = 1</math> なので、上式(1)は <math>n = 1</math> の時にも成り立つ。
したがって、<math>a_n = 2^n - n^2 + n - 1</math>
<br>
このように,漸化式の問題も <math>a_n + 1 - a_n = f(n)</math> とすることにより、通常の階差数列と同様に解くことができる。<br>
<br><br>
== 数列の和の計算式 ==
<math>\sum_{k = 1}^{n} a_k = na, \qquad \sum_{k = 1}^{n - 1} a_k = (n - 1)a</math>
<math>\sum_{k = 1}^{n} k = \frac{1}{2} n(n + 1)</math>
<math>\sum_{k = 1}^{n} k^2 = \frac{1}{6} n(n + 1)(2n + 1)</math>
<math>\sum_{k = 1}^{n} k^3 = \Bigg\{ \frac{1}{2} n(n + 1) \Bigg\}^2</math>
<math>\sum_{k = 1}^{n} ar^{k - 1} = \cfrac{a (1 -r^n)}{1 - r} = \cfrac{a (r^n - 1)}{r - 1}</math>
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2024年11月18日 (月) 15:12時点における最新版

概要

等差数列は、隣り合う項の差が常に一定の数列である。
日常生活では、例えば、1時間ごとの気温の変化や定期的な積立預金の残高等がこれに似た形になることがある。

等比数列は、隣り合う項の比が常に一定の数列である。
現実の例としては、細胞分裂による細胞数の増加や複利計算による預金の増え方等が挙げられる。
「前の項に対して同じ割合で増減する」という特徴がある。

階差数列は、元の数列から隣り合う項の差を取って新しい数列を作り、それを繰り返す数列である。
例えば、2次関数のグラフ上の点の値から作った数列の階差数列は、最終的に0になるという性質がある。

これらの数列は、特に、予測・分析やデジタル信号処理等で活用されることが多い。


等差数列

基本

等差数列とは、隣り合う項の差が常に一定である数列のことである。

例:
3, 7, 11, 15, 19, 23, ...


隣接する2項の差を公差と呼ぶ。(dで表すことが多い)

第n項は、初項a1と公差dを用いて次式で表される。

# n項目の計算例:

上記の例では
初項 : 3
公差 : 4
であるため、

 となる。


等差数列の和

項数nの等差数列の和 (Sn) は、次式で求められる。



または



は、 の anに対して、
を代入することにより、


ゆえに、 となる。

導出: 等差数列の和
 において、aの部分とdの部分に分ける。


ここで、​ であるので、
 となる。

つまり,等差数列の和は、自然数の和を1次変換したものである。


例題:
初項が4、公差が3、項数が6であるような等差数列の和Sを求めよ。

解答:
 において、 とする時、

 となる。


特徴

等差数列の中項は両端の項の平均値になる。

実生活での例

  • 定額の積立貯金
  • 等間隔に並んだ数値
  • 等間隔の時間経過



等比数列

基本

等比数列とは、隣り合う項の比が常に一定である数列のことである。
隣接する2項の比を公比と呼び、rで表すことが多い。

第n項は、初項a1と公比rを用いて、次式で表される。


例:
2, 6, 18, 54, 162, ...

  • 初項
  • 公比 (どの隣り合う項も比が3で一定)


性質

等比数列の任意の連続する3項a, b, cについて、 が成り立つ。
これを、等比中項という。

等比数列の和

項数nの等比数列の和 Sn は、次式で求められる。



実生活での例

  • 複利計算での預金の増加
  • 細胞分裂による増殖
  • 放射性物質の崩壊


等比数列は、指数関数的な成長や減衰を示す現象を扱う場合や金融や自然科学の分野でも頻繁に使用される。
また、デジタル信号処理において、Z変換を使用して伝達関数を求める場合にも使用される。


階差数列

基本

元の数列の隣り合う項の差を順番に並べたものを第1階差数列と呼ぶ。
と表す。

第1階差数列から、さらに階差を取ったものを第2階差数列と呼ぶ。
これを繰り返すことで第3、第4...階差数列が得られる。

例:

原数列:  2, 5, 10, 17, 26, 37
第1階差:  3,  5,  7,  9,  11
第2階差:     2,  2,  2,  2


性質

等差数列の第1階差数列は、定数列になる。
等比数列の第1階差数列は、元の数列の定数倍になる。
n次式で表される数列の第n階差数列は、定数列になる。

活用方法

  • 数列のパターンを見つける場合
  • 与えられた数列が何次式で表されるかを判断できる。
  • 数列の一般項を求める場合のヒントになる。


応用例

数列2, 5, 10, 17, 26, 37の一般項を求める場合、第2階差が定数列であるため、2次式で表されることがわかる。
これは、 の形で表される。

計算により、



したがって、 と求められる。

階差数列の考え方を用いれば、複雑に見える数列でもその規則性を見つけやすくなる。
特に、多項式で表される数列の分析に効果的である。

例題:
数列anが、5,11,21,35,53,... の時
(1) 一般項anを求めよ。
(2) 初項から第n項までの和を求めよ。

(1)の解答:
数列anの階差数列をbnとする時



数列bnは、初項6、公差4の等差数列であるから、

 の時


 の時

初項は  であるから、上式(1)は  の時も成り立つ。

したがって、 となる。


(2)の解答
求める和をSnとする時


漸化式と階差数列

定義:

f(n) は階差数列の一般項


は、階差数列を利用して解くことができる。

とおく。
とする時、数列bnはanの階差数列となる。

の時、 を利用して一般項を求めることができる。

例題:
 で定義される数列の一般項anを求めよ。

解答:
条件より、
よって、数列anの階差数列の第n項が  であるから、
 の時


初項は  なので、上式(1)は  の時にも成り立つ。
したがって、


このように,漸化式の問題も とすることにより、通常の階差数列と同様に解くことができる。


数列の和の計算式