「Qtの基礎 - 終了処理」の版間の差分
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return a.exec(); | return a.exec(); | ||
} | |||
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== QWidgetsアプリケーション == | |||
GUIアプリケーションの終了処理は、ユーザがアプリケーションのメインウィンドウを閉じる、または、[終了]ボタンを押下することにより開始される。<br> | |||
この時点で、アプリケーションの終了プロセスが実行される。<br> | |||
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終了プロセスの最初のステップとして、<code>QApplication::aboutToQuit()</code>シグナルが発行される。<br> | |||
このシグナルは、GUIアプリケーションが終了する直前に発生するため、重要なクリーンアップを行うのに適したタイミングである。<br> | |||
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重要なクリーンアップの例として、以下に示すようなものがある。<br> | |||
* ユーザデータの保存 | |||
*: 未保存の作業内容やアプリケーションの状態を保存する。 | |||
*: これには、ドキュメントの内容、ウインドウの位置やサイズ、ユーザ設定等が含まれている。 | |||
* 開いているファイルやデータベース接続の終了 | |||
*: ファイルハンドルやデータベース接続を適切に閉じることにより、データの整合性を保ち、リソースリークを防ぐ。 | |||
* ネットワーク接続の終了 | |||
*: アクティブなネットワーク接続を適切に終了して、リモートサーバにグレースフルな切断を通知する。 | |||
* テンポラリファイルの削除 | |||
*: GUIアプリケーションが作成した一時ファイルを削除して、不要なディスク使用を避ける。 | |||
* バックグラウンドタスクの終了 | |||
*: 実行中のバックグラウンドスレッドやタイマを適切に停止する。 | |||
<br> | |||
これらのクリーンアップを実行するために、<code>QObject::connect()</code>メソッドを使用して<code>aboutToQuit()</code>シグナルにスロットを接続する。<br> | |||
クリーンアップの完了後は、<code>QApplication::exec()</code>メソッドから制御が戻り、メインイベントループが終了する。<br> | |||
この時に、Qtは自動的に全ての子ウィジェットを削除する。<br> | |||
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最後に、グローバルなstaticオブジェクトのデストラクタが呼び出されて、メイン関数からreturn文が実行されてプログラムが完全に終了する。<br> | |||
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以下の例では、QWidgetsアプリケーションの終了処理を示している。<br> | |||
基本的な終了処理とエラーハンドリングを実装しているが、実務ではより具体的なクリーンアップ処理を追加する必要がある。<br> | |||
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<syntaxhighlight lang="c++"> | |||
// MainWindow.hファイル | |||
#include <QApplication> | |||
#include <QMainWindow> | |||
#include <QMenu> | |||
#include <QMenuBar> | |||
#include <QAction> | |||
#include <QCloseEvent> | |||
#include <QMessageBox> | |||
#include <QDebug> | |||
class MainWindow : public QMainWindow | |||
{ | |||
Q_OBJECT | |||
public: | |||
MainWindow(QWidget *parent = nullptr) : QMainWindow(parent) | |||
{ | |||
setWindowTitle("Qt Application"); | |||
QMenu *fileMenu = menuBar()->addMenu("&File"); | |||
QAction *exitAction = fileMenu->addAction("E&xit"); | |||
connect(exitAction, &QAction::triggered, this, &MainWindow::onExit); | |||
// アプリケーション終了時のクリーンアップ処理を接続 | |||
connect(qApp, &QApplication::aboutToQuit, this, &MainWindow::performCleanup); | |||
} | |||
protected: | |||
// closeEventメソッドをオーバーライドして、アプリケーション終了時の動作をカスタマイズする | |||
void closeEvent(QCloseEvent *event) override | |||
{ | |||
if (saveChanges()) { | |||
event->accept(); | |||
} | |||
else { | |||
event->ignore(); | |||
} | |||
} | |||
private slots: | |||
void onExit() | |||
{ | |||
close(); | |||
} | |||
// アプリケーション終了時のクリーンアップ処理を行う | |||
void performCleanup() | |||
{ | |||
qDebug() << "Performing cleanup..."; | |||
// リソースの解放やその他のクリーンアップ処理を実装 | |||
} | |||
private: | |||
// 未保存の変更がある場合にユーザに確認を求める | |||
bool saveChanges() | |||
{ | |||
// ここで未保存の変更をチェックし、必要に応じて保存ダイアログを表示 | |||
QMessageBox::StandardButton reply; | |||
reply = QMessageBox::question(this, "Unsaved Changes", | |||
"Do you want to save changes before exiting?", | |||
QMessageBox::Yes|QMessageBox::No|QMessageBox::Cancel); | |||
if (reply == QMessageBox::Yes) { | |||
// 変更を保存する処理をここに実装 | |||
qDebug() << "Saving changes..."; | |||
return true; | |||
} | |||
else if (reply == QMessageBox::No) { | |||
return true; | |||
} | |||
else { | |||
return false; | |||
} | |||
} | |||
}; | |||
</syntaxhighlight> | |||
<br> | |||
<syntaxhighlight lang="c++"> | |||
// main.cppファイル | |||
#include <QFile> | |||
#include <QTextStream> | |||
#include "MainWindow.h" | |||
// カスタムのメッセージハンドラを定義して、アプリケーションのログをファイルに出力する | |||
void myMessageHandler(QtMsgType type, const QMessageLogContext &context, const QString &msg) | |||
{ | |||
QFile file("app_log.txt"); | |||
if (!file.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Append)) { | |||
return; | |||
} | |||
QTextStream stream(&file); | |||
stream << QDateTime::currentDateTime().toString("yyyy-MM-dd hh:mm:ss.zzz "); | |||
switch (type) { | |||
case QtDebugMsg: | |||
stream << "Debug: "; | |||
break; | |||
case QtInfoMsg: | |||
stream << "Info: "; | |||
break; | |||
case QtWarningMsg: | |||
stream << "Warning: "; | |||
break; | |||
case QtCriticalMsg: | |||
stream << "Critical: "; | |||
break; | |||
case QtFatalMsg: | |||
stream << "Fatal: "; | |||
break; | |||
} | |||
stream << msg << " (" << context.file << ":" << context.line << ")" << Qt::endl; | |||
file.close(); | |||
} | |||
int main(int argc, char *argv[]) | |||
{ | |||
qInstallMessageHandler(myMessageHandler); | |||
// 例外処理を実装して、予期しないエラーをキャッチしてログに記録する | |||
try { | |||
QApplication app(argc, argv); | |||
MainWindow mainWindow; | |||
mainWindow.show(); | |||
QObject::connect(&app, &QApplication::aboutToQuit, []() { | |||
qDebug() << "Application is about to quit"; | |||
// 追加のクリーンアップ処理 | |||
}); | |||
return app.exec(); | |||
} | |||
catch (const std::exception& e) { | |||
QMessageBox::critical(nullptr, "Error", QString("An unexpected error occurred: %1").arg(e.what())); | |||
qCritical() << "Unhandled exception:" << e.what(); | |||
return -1; | |||
} | |||
catch (...) { | |||
QMessageBox::critical(nullptr, "Error", "An unknown error occurred"); | |||
qCritical() << "Unknown exception occurred"; | |||
return -1; | |||
} | |||
} | } | ||
</syntaxhighlight> | </syntaxhighlight> |
2024年9月4日 (水) 00:48時点における最新版
概要
Qtアプリケーションの終了は、いくつかの段階を経て行われる。
まず、アプリケーションの終了が開始される時、QCoreApplication::aboutToQuit()
シグナルが発行される。
このシグナルは、アプリケーションが終了する直前に発生するため、重要なクリーンアップ作業を行うのに適している。
次に、QApplication::exec()
メソッドから制御が戻る。
これにより、メインイベントループが終了して、アプリケーションの実行が停止する。
GUIでは、この時点で、Qtは自動的に全ての子ウィジェットを削除する。
これには、トップレベルウィンドウやダイアログも含まれる。
その後、グローバルなstaticオブジェクトのデストラクタが呼び出される。
これらのオブジェクトは、逆構築順序で破棄される。つまり、最後に作成されたオブジェクトが最初に破棄される。
最後に、メイン関数からreturn文が実行されて、プログラムが完全に終了する。
Qtアプリケーションの終了をカスタマイズする方法もある。
例えば、QApplication::setQuitOnLastWindowClosed(false)
を呼び出すことにより、
最後のウインドウが閉じられてもアプリケーションが終了しないようにすることができる。
また、QObject::deleteLater()
メソッドを使用して、イベントループの次の反復時にオブジェクトを安全に削除することもできる。
メモリリークを防ぐために、動的に割り当てられたリソースを適切に解放することが重要である。
Qtのオブジェクト所有システムを活用すると、多くの場合、明示的なメモリ管理が不要になる。
エラーハンドリングも終了処理の重要である。
例外が捕捉されずにメイン関数を抜ける場合、プログラムがクラッシュする可能性がある。
そのため、適切な例外処理を実装することが推奨される。
コンソールアプリケーション
QCoreApplication::quit()
メソッドおよびQCoreApplication::exit()
において、
両方ともアプリケーションを終了するために使用するが、動作と使用場面が異なる。
使用の指針を以下に示す。
- 一般的な状況では、
QCoreApplication::quit()
メソッドの使用を推奨する。
これは、イベントループを適切に終了して、保留中のイベントを処理する機会を与える。 QCoreApplication::exit()
メソッドは、
即座にアプリケーションを終了する必要がある場合 (例: クリティカルなエラーが発生した場合) や特定の終了コードを返す必要がある場合に使用する。- GUIアプリケーションでは、
QCoreApplication::quit()
メソッドの使用を推奨する。
これにより、ウインドウを適切に閉じて、リソースをクリーンアップする機会が与えられる。 - コンソールアプリケーションでは、
QCoreApplication::quit()
メソッドでもよいが、
特定の終了コードが必要な場合は、QCoreApplication::exit()
メソッドを使用することがある。
QCoreApplication::quit()
QCoreApplication::quit()
メソッドは、シグナルとして実装されている。
非同期で動作して、イベントループを安全に終了させることができる。
(イベントループの次の反復時に処理される)
戻り値はない。
一般的に、スロットとして接続、または、QTimer::singleShot()
と組み合わせて使用する。
以下の例では、QCoreApplication::quit()メソッドはシグナルとして動作するため、関数呼び出しは即座に戻り、次の行が実行される。
アプリケーションは次のイベントループの反復時に終了する。
// 使用例
#include <QCoreApplication>
#include <QTimer>
#include <iostream>
void useQuit()
{
std::cout << "Calling quit()..." << std::endl;
QCoreApplication::quit();
std::cout << "This line will be executed." << std::endl;
}
int main(int argc, char *argv[])
{
QCoreApplication a(argc, argv);
// QCoreApplication::quit()の例
QTimer::singleShot(1000, useQuit);
return a.exec();
}
QCoreApplication::exit()
QCoreApplication::exit(int returnCode = 0)
は、通常のメソッドとして実装されている。
同期的に動作して、イベントループを即座に終了させることができる。
(呼び出された時点で即座に処理される)
整数の戻り値を受け取り、それをアプリケーションの終了コードとして使用する。
特定の終了コードでアプリケーションを終了させる場合に使用する。
以下の例では、QCoreApplication::exit(0)メソッドが呼び出された直後にアプリケーションが終了するため、2番目のcout文は実行されない。
#include <QCoreApplication>
#include <iostream>
void useExit()
{
std::cout << "Calling exit()..." << std::endl;
QCoreApplication::exit(0);
std::cout << "This line will NOT be executed." << std::endl;
}
int main(int argc, char *argv[])
{
QCoreApplication a(argc, argv);
// QCoreApplication::exit()の例
QTimer::singleShot(1000, useExit);
return a.exec();
}
QWidgetsアプリケーション
GUIアプリケーションの終了処理は、ユーザがアプリケーションのメインウィンドウを閉じる、または、[終了]ボタンを押下することにより開始される。
この時点で、アプリケーションの終了プロセスが実行される。
終了プロセスの最初のステップとして、QApplication::aboutToQuit()
シグナルが発行される。
このシグナルは、GUIアプリケーションが終了する直前に発生するため、重要なクリーンアップを行うのに適したタイミングである。
重要なクリーンアップの例として、以下に示すようなものがある。
- ユーザデータの保存
- 未保存の作業内容やアプリケーションの状態を保存する。
- これには、ドキュメントの内容、ウインドウの位置やサイズ、ユーザ設定等が含まれている。
- 開いているファイルやデータベース接続の終了
- ファイルハンドルやデータベース接続を適切に閉じることにより、データの整合性を保ち、リソースリークを防ぐ。
- ネットワーク接続の終了
- アクティブなネットワーク接続を適切に終了して、リモートサーバにグレースフルな切断を通知する。
- テンポラリファイルの削除
- GUIアプリケーションが作成した一時ファイルを削除して、不要なディスク使用を避ける。
- バックグラウンドタスクの終了
- 実行中のバックグラウンドスレッドやタイマを適切に停止する。
これらのクリーンアップを実行するために、QObject::connect()
メソッドを使用してaboutToQuit()
シグナルにスロットを接続する。
クリーンアップの完了後は、QApplication::exec()
メソッドから制御が戻り、メインイベントループが終了する。
この時に、Qtは自動的に全ての子ウィジェットを削除する。
最後に、グローバルなstaticオブジェクトのデストラクタが呼び出されて、メイン関数からreturn文が実行されてプログラムが完全に終了する。
以下の例では、QWidgetsアプリケーションの終了処理を示している。
基本的な終了処理とエラーハンドリングを実装しているが、実務ではより具体的なクリーンアップ処理を追加する必要がある。
// MainWindow.hファイル
#include <QApplication>
#include <QMainWindow>
#include <QMenu>
#include <QMenuBar>
#include <QAction>
#include <QCloseEvent>
#include <QMessageBox>
#include <QDebug>
class MainWindow : public QMainWindow
{
Q_OBJECT
public:
MainWindow(QWidget *parent = nullptr) : QMainWindow(parent)
{
setWindowTitle("Qt Application");
QMenu *fileMenu = menuBar()->addMenu("&File");
QAction *exitAction = fileMenu->addAction("E&xit");
connect(exitAction, &QAction::triggered, this, &MainWindow::onExit);
// アプリケーション終了時のクリーンアップ処理を接続
connect(qApp, &QApplication::aboutToQuit, this, &MainWindow::performCleanup);
}
protected:
// closeEventメソッドをオーバーライドして、アプリケーション終了時の動作をカスタマイズする
void closeEvent(QCloseEvent *event) override
{
if (saveChanges()) {
event->accept();
}
else {
event->ignore();
}
}
private slots:
void onExit()
{
close();
}
// アプリケーション終了時のクリーンアップ処理を行う
void performCleanup()
{
qDebug() << "Performing cleanup...";
// リソースの解放やその他のクリーンアップ処理を実装
}
private:
// 未保存の変更がある場合にユーザに確認を求める
bool saveChanges()
{
// ここで未保存の変更をチェックし、必要に応じて保存ダイアログを表示
QMessageBox::StandardButton reply;
reply = QMessageBox::question(this, "Unsaved Changes",
"Do you want to save changes before exiting?",
QMessageBox::Yes|QMessageBox::No|QMessageBox::Cancel);
if (reply == QMessageBox::Yes) {
// 変更を保存する処理をここに実装
qDebug() << "Saving changes...";
return true;
}
else if (reply == QMessageBox::No) {
return true;
}
else {
return false;
}
}
};
// main.cppファイル
#include <QFile>
#include <QTextStream>
#include "MainWindow.h"
// カスタムのメッセージハンドラを定義して、アプリケーションのログをファイルに出力する
void myMessageHandler(QtMsgType type, const QMessageLogContext &context, const QString &msg)
{
QFile file("app_log.txt");
if (!file.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Append)) {
return;
}
QTextStream stream(&file);
stream << QDateTime::currentDateTime().toString("yyyy-MM-dd hh:mm:ss.zzz ");
switch (type) {
case QtDebugMsg:
stream << "Debug: ";
break;
case QtInfoMsg:
stream << "Info: ";
break;
case QtWarningMsg:
stream << "Warning: ";
break;
case QtCriticalMsg:
stream << "Critical: ";
break;
case QtFatalMsg:
stream << "Fatal: ";
break;
}
stream << msg << " (" << context.file << ":" << context.line << ")" << Qt::endl;
file.close();
}
int main(int argc, char *argv[])
{
qInstallMessageHandler(myMessageHandler);
// 例外処理を実装して、予期しないエラーをキャッチしてログに記録する
try {
QApplication app(argc, argv);
MainWindow mainWindow;
mainWindow.show();
QObject::connect(&app, &QApplication::aboutToQuit, []() {
qDebug() << "Application is about to quit";
// 追加のクリーンアップ処理
});
return app.exec();
}
catch (const std::exception& e) {
QMessageBox::critical(nullptr, "Error", QString("An unexpected error occurred: %1").arg(e.what()));
qCritical() << "Unhandled exception:" << e.what();
return -1;
}
catch (...) {
QMessageBox::critical(nullptr, "Error", "An unknown error occurred");
qCritical() << "Unknown exception occurred";
return -1;
}
}